52. 加純さん、息子にモデルをお願いする。(第三回イラスト交換会のお話 ④)
長岡更紗様の企画「第三回イラスト交換会」に出品した作品の制作裏話。その4回目。
長らくお待たせいたしました。いよいよ作品を完成させます。
担当した作品は、
家畜の意思 「愛玩用と呼ばないで」 / 腹田 貝 様
https://ncode.syosetu.com/n5450dn/
その他、頂き物のご紹介やFA、天界音楽様の企画作品に描き下ろしボツ下絵復刻作品もあります!
なにが驚くか――って?
彩色中、手に取ったコピックの蓋を開けたら、インク切れだったってこと!
以前にも、それで娘にラインを送って、大至急買ってきてもらったという話をしましたっけ。
では、そのコピックのインクの補充。
どうやるのでしょうか?
先日、また一色、インク切れを起こしました。しかもすぐにそのことに気付かなかったので、ニブ(筆先)まで乾燥して使えなくなっていました。ぐすん。
上の写真。コピックを分解したところです。
上から、コピック本体。真ん中が使用不能になってしまったブラシ先(筆先:スーパーブラシ)。下が交換用の新しい筆先。そして右が補充用のコピックインクB01。
本体の左側、筆ブラシ先を抜いたあとからインクを注入します。(←今回はブラシ側を取り替える必要があったのでそちら側からでしたが、公式サイトではブロードニブを引き抜いて注入する方法を勧めています)その後、筆先を差し込み作業は終了。
これの繰り返しで、コピックはほぼ半永久的に使用可能です。
SDGsですね。
でも、いつもはもっと簡単に補充します。
え? どうやるかって。
筆先の反対側、ブロードニブにインクボトルのノズル(←細くなった挿入口)をピッタリと付けて、ニブに吸わせるカタチでインクを流し込むのです。
横着という勿れ。
ほら。大抵インク切れを発見するときって、制作中でしょ。塗っている最中ですよ。グラデの最中ですよ。
早く色を重ねて、ぼかさなければいけない時ですよ。
アルコールインクって、すぐに乾いてしまうのですもの。乾いちゃったら色ムラになります。必死です。時間が無いのです。
手っ取り早く補充して、作業を再開したいのですね。
もちろん、公式サイトではこんな雑なやり方は紹介していません。(←当たり前です!)
それに慎重にやらないと、注入中にインクが溢れ零れて悲惨なことになるので(非常時以外は)おすすめはしません。
し・ま・せ・ん・とも!
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加純さんが体調不良でのらりくらりしている間に、素敵なイラストをいただきました。
「混沌の淵に潜む竜は永久を嗤う」に2作品も!
汐の音様の描きます企画で、主人公リューゼ・リ・アビナを描いていただきました。
いえ、もう。不機嫌な公子様が、相当お手を煩わしてしまったみたいで。作中でもわがままですが、他人様のところに行ってまで傍若無人するんじゃありません!! と叱っておきますので、どうかお許しを。
モノクロなのに色を感じさせる、この空気感!!
とっても雰囲気のあるイラストで、わたしはにまにまほくほくしております。でへ。
汐の音様、ありがとうございました。
さらに美風慶伍様に、バナーを作っていただきました。
こちらはツイッターで募集しておられたので、速攻推挙! 見事、ゲットできました。
幻想的な美女がおります。もしかしたら、こんな美女も、いつか出てくるかもしれません。(←ネタバレ禁止!)
9話まで進んだというのに、未だ女性キャラが皆無という色気のないお話です。(泣)
美風様、ありがとうございました。
早く女性キャラを出すようにいたします。(←違う……?)
こちらは描かせていただいたもの。
腹田 貝様の作品とのコラボ、第二弾。「風の妖精達〜心のアンプリファイアを探せ〜」より、秋風の妖精・金風君。
人物はコピック、一部色鉛筆。仕上げはデジタルというハイブリッド作品となっております。
「食いしん坊で、クレバーな」という注文でしたので、そこにちょっと茶目っ気をプラスしてみました。チャームポイントは、ぷっくりしたお手々。それを描きたいので、このポージングにしたくらい。
そうしたら効果ありすぎで、ぷくぷくお手々しか目に入らないと云う感想が多数でした。あはは。腹田様、ごめんね~。
秋風の妖精なので、周りに黄金色に色付いた葉とどんぐりをあしらってみました。これは、素材を活用。自分で描けないモノは、どんどん素材を利用させていただいております。
大切なキャラ、描かせていただきありがとうございました。
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ここからは、前回の続き。『イラスト交換』企画、いよいよ特畜隊メンバーの制作に入ります。
事前に各キャラのイラストを制作し、イメージ固めをしてきた加純さん。ズラッと並べた横顔に、それぞれの特徴、性格や個性が滲んでくれることを祈りながら描いていきます。
ほら、なにせ。3ヶ月前までは、ろくに動物を描けない人でしたからね。わたし……。
あっはっは。
アナログで下描き。
A4紙を横にして、6等分の短冊のような枠を作ります。そのなかにメンバーの横顔のアップを描きました。
予想はしていたのですが――。
オリジナルの動物のサイズもまちまちですが、それ以上にお顔のサイズもまちまちで。メンバーの並び順はすんなり決まったのですが、お顔のサイズのバランスを取るのが難しかった!
特に中の陸稲(アフリカカバ)セロリ(ウサギ)タテガミ(ライオン)サエズリ(柴犬)の4名のバランス。
陸稲はカバなので、当然大きな顔の持ち主。となりのセロリはウサギだし、わたしの中では美少女キャラなのでどうしても小顔にしたい。タテガミは雄ライオンですから大きい方がカッコいいし、サエズリはペット的存在なのでこちらも小顔の方が可愛らしさが出ます。 (←ここは原作云々というより、絵描きのわがまま)
それに構図の問題で、前に餡とサゴシが立つ関係上、陸稲とタテガミの位置は顔半分くらい隠れちゃうのですよ。それでもなお存在感を放ってくれないと困りますし、配色の問題もあって……。
考え出すと、悩みがどんどん深くなっていく。
普通こういう葛藤はラフ画の時に済ませておくものかもしれません。でも加純さんの場合、ラフ画は勢いと直感で描いているので考えつかない。ゆえに、ここで悩むことになるのですよね。やれやれ。
――で、なんとかしなきゃならなくなる。
結局、最初に思いついた配置に収めました。
自分の直感を信じる! これがベストバランスだと思う! わたしの直感に間違いはないと思い込むんだ!! (←もはや暗示の領域)
ところで、下の特畜隊メンバー下書き。下書きにしてはきれいだと思いません?
特畜隊メンバー下書き
そうなんです、何を隠そうペン入れまでしてあります。しかも珍しくGペンで。いつもは丸ペン使用なのですが、強弱のハッキリした線を引きたくてわざわざGペンを引っ張り出してきました。
これをお絵描きソフトに読み込んで、クリスタ(←お絵かきソフトの方です)で背景を透過するつもりだったのです。
透過というのは、取り込んだアナログ原稿の白紙の背景部分を透明化して線画だけを残すという魔法みたいな技術のこと。
つまり背景透過をすると、絵の背景となるいらない部分をきれいに削除出来ちゃう。背景の白地部分を削除することで、線画以外の場所が透明に加工できるのですよ。
そのため、ほかの画像の上に背景透過した画像を重ねると、透明になった部分に下の画像を映すことが出来るようになるんです。
そうすれば、絵の背景を自由に変えることがで出来るでしょ。
う~ん、上の説明でわかるかしら? デジタル絵を描いていらっしゃる方はわかると思いますが、そうでない方のために、もう少しかみ砕いていうと――。
簡単に言えば、画像の背景が透明な窓ガラスのようになったとイメージしてください。または、紙に描いたアナログ画をセル画みたくに加工できるとでも。
この効果を使って、空いた背景(白地部分)に隊員個々のメンバーカラーを彩色する予定だったのですが、方法がわからない。いつものように〇ーグル先生に教えていただいたのですが上手くいかないんです。
もちろん、それはわたしの理解不足のせいですよ。でもね、
初心者、焦る! しかし焦れば焦るほど、正解がわからん!!
結局板タブを使って、レイヤーにもう一度線画を描き起こしました。
特畜隊メンバーデジタル下書き
Gペンの効果はどこへ行ってしまったのだろう。デジタルなお道具を使っても、やっていることはアナログと変わらないわ――と嘆きつつ。
ペン入れの練習にはなったから。
まあ、いいかぁ~。(←諦めのポジティブ思考)
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ペン入れ後です。スクリーントーンまで貼って、アナログ原稿のようになっています。
背景部分の枠外には暗灰色(←黒じゃないところがミソよ!)、下地にテクスチャを貼って(正確にはテクスチャマッピングと云うのだそうな)質感のニュアンスを追加。
特畜隊メンバー彩色前
ここに色を入れていきます。ただし細かく彩色はしません。メンバーカラーをバケツ塗り――と云う、ペイントソフトのバケツツールを使った塗り方で、一色で各枠内を塗り潰していきます。
メンバーカラーは原作どおりですが、キャンディ少佐だけは固有のカラーが無かったのでイメージカラーで。
諸々の事情を考慮しての配置ですが、暖色系と寒色系の色が交互に並ぶことになりました。
特畜隊メンバー彩色調整前
原作では、このメンバーカラーが着用ジャケットの色になっています(キャンディ少佐は除く)。
ご覧のとおりカラーは原色系なのですが、これをそのまま配置してしまうと、控えめに言ってもかなり個性的かつ強烈な色が並びます。
とってもカラフルになるのはいいのですが、過ぎると前に配置した餡ちゃんたちが目立たなくなってしまう。
それじゃ、困ります。
あらかじめそこは予測出来ていたので、デジタルペン入れの際はキャラ毎にレイヤーをファイルに分け、さらに線画と背景色のレイヤーも別けておきました。(←一枚絵の構図を細かく部分ごとに別けて描いた――と考えてください)
ここからがデジタル作画の真骨頂。出来上がった6名のキャラを一同に画面に並べて、背景色を調整していきます。
そうなんです、これをやりたかったから、特畜隊メンバーはデジタルで仕上げたかったのです。
特畜隊メンバー彩色調整後
今回は色を塗り替えるのではなく、レイヤーの不透明度を抑えることで調整をしていきました。
こうして並んだ6名のバランスを整えて、さらに餡とサゴシを加えて再調整。
レイヤーの構成 部分ごとに作ったレイヤーを重ねます。
位置が被ってしまう陸稲(黄色)セロリ(青色)タテガミ(赤色)サエズリ(白色)の4名の顔位置を微妙に動かしたり。(←完成後にスクショしたので、載せたのは前も後も顔位置は調整済のものです)
さらにバリケードテープのレイヤーを重ね、再々調整。
この辺は、何度もやり直しを繰り返しました。デジタル作業は離れていないので、試行錯誤の繰り返しです。
改めて餡とサゴシを浮き立たせるために、ふたりだけ白色で枠取りを施して――。
はい。こんな感じに出来上がりました。
この画を観て、ふと思ったのです。
最終案のラフ画を腹田様にお目にかけたとき、「連載漫画初回カラー表紙風」という感想をいただきました。
漫画の原作者になりたいという夢をお持ちだったというお話は伺っていましたし、しかも「(表紙風は)夢だった」ともおっしゃっていらしたので、
ならばと、思いっきり「それ風」に寄せてみることに。
タイトルも入れちゃえ! で、
クリスタ(←お絵描きソフトの方!)の文字入れ機能を使って作成してみました。
漫画のタイトルっぽく文字にも遊びを入れて、「家畜」の「畜」の文字は「玄」の止めの部分をタグっぽくしたり、「意思」の「心」の一部をハート――それも普通のハートマークだと恋愛モノみたいなので変形してみたりと工夫してみたのですが。
でもタイトル文字を作るのは初めてだったので、やり方は頼りになるグーグ◯先生にお世話になりました。一夜漬けにも及ばない即席漬けなの。
これが一番苦戦したかも。
さらに腹田様のリクエストで作者名は連名にさせていただいちゃいました。これで「新連載」の文字を入れたら本当にSF誌で開始されそうでしょ。
mission complete!
いかがでしょうか?
第三回イラスト交換企画は、ひとつの作品に時間を描け、じっくりと取り組むことが出来ました。期間ギリギリまで粘りましたから、主催様や腹田様には迷惑な話だったかもしれません。
ほら、でも、締め切りは守ったし!
寛大な方々のおかげで、大きな挑戦が出来ました。
さらに、わたしの絵が腹田様の創作のアシストになれたことも、とってもうれしい出来事でした。絵描き冥利に尽きるといいますか。おまけに作品にゲスト出演までしちゃいました。
腹田様、誠にありがとうございました。
とても楽しい作品に出会え、それに関わることが出来て幸せです。
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その後、もう一枚。
ボツにした下絵を復刻してみました。
もしかしたら、こちらが『なろ美』に展示されていたかもしれない一枚。
「calling」
サゴシが餡に手を差し伸べているのかもしれないし、餡がサゴシに手を伸ばしているのかもしれない。わたしには、ふたりはそんな関係にも思えていたのです。
これはわたしの感想だから、皆様はご自分で確かめてね。
彩色は、コピック。
背景はインクアート。コピックインクを軽く丸めたティッシュペーパーに染み込ませて、ペタペタとスタンプ。その上から水で溶いた白色の絵の具を、こちらはスポンジでスタンプしています。
はい、キッチンで使う食器洗い用のスポンジよ。
幻想的な背景も、身近な道具で出来てしまうのでした。
手前のサゴシの手、前出の金風君の手と比べると、ずいぶんゴツいでしょう。
一目で男の人の手だとわかるようにしたかったことや、マグナムを撃つような人物です(※前回参照)からモデルやピアニストみたくスラッとした手ではないと思いまして。
「目は口ほどにものを言う」といいますが、手もその人物の成り立ちを雄弁に語っていると思うのです。
ご飯を食べるのも、着替えるにも、仕事や生活に関わる要事を足すには手を動かしますからね。密接に関わっているでしょ。
時には触感でモノの良し悪しを判断したりもしますし、手のしくさで性格が読めたりもするよね。
なろうユーザーさまの場合、ペンを握ったりキーボードを叩いたりして世界を創造したりも。
だから加純さんは、手を描くときは緊張します。表情以上に気を使うときもあります。
サゴシの手も角度を散々迷って、それでも納得できなくて。最後の手段と、息子を捕まえてモデルをさせました。(←当然アレンジ有)
「紅葉狩り」のマオの手も協力して貰ったので最近は「またか~」と面白がっておりますが、母が集中してペンを走らせているときに、後ろからこっそり近づいて覗き込むのだけは止めて欲しいと思うのです。
集中力が途切れるでしょう! 立て直すの大変なんだから。
ちなみに、キャンディ少佐の後ろ姿のイラスト(※46話参照)。ハイヒールを履いた足首の腱のあたりとか。あれもちょっと不安だったので、モデルになって貰いました。
真夜中にハイヒールを履いて貰って、スマホ撮影。
あ、これは娘にお願いしました。
だって靴のサイズの関係で、息子じゃハイヒールを履けないんですもの!
その前に、脚の筋肉の付き方が違うし!!
カミングアウトした母は、楽しくお絵かきライフを送っているのでした。(←迷惑だろうけれど付き合ってね)
天界音楽様の企画「12ヶ月の小品集 2021」12月のお題は「サンタコス」でした。
「サンタコスでクリスマス」
前回から時間を置かず更新の予定(既に本文三分の二は書けていたのに!)だったのですが、一身上の都合で遅くなってしまいました。すみません。どうにも動けなくて。
その代わり、ボツ絵を描き起こしました。あの時は描けませんでしたが、時間が経つと描ける絵もあるものですね。
それから、わたしが描いた特畜隊のイラストが、挿し絵に採用されました。腹田様がこだわり抜いて、ここぞ! という場所に載せてくださいましたよ。
金風君も他の風の妖精たちと一緒に、物語を彩っております。
腹田様、ありがとうございます!
天さまの企画、今年もやっています。
毎月25日、ツイッター上で発表! 今月のお題は「初」。
絵師の皆様、ごいっしょいたしませんか? 参加をお待ちしてます。
それでは、また次回!