46. 加純さん、首に悩む。(第三回 イラスト交換企画のお話①)
今年もこの季節がやって来ました!
秋になると楽しみにしている企画が始まります。
それが、長岡更紗様主催『イラスト交換企画』。
過去2回は、全部門エントリー。自慢できるほどの遅筆だっていうのに、無茶を承知で参加して、苦心惨憺して作品を仕上げてきたのはこのエッセイでも書いた(21,22話。32,34,35話)とおり。
でも加純さん、懲りません。当然のように今年も参加を楽しみにしていたのですが、少し事情が変わりました。
――っていうか、切羽詰まった?
もちろん参加しないという選択肢は無いのですが、昨年のように全部門チャレンジします! という暴挙は出来なくなりました。いえ、ホンネを申せば、この無茶が楽しかったのですから、応募期間の8月末ギリギリまで迷っていましたよ。なんとか調整をして、全部門登録できないものか、って。
でもね。体調が安定しない。腱鞘炎が再発しそう。そういう情けない事情もあるのですが、もうひとつ参加している企画『渚と空のミュージアム』10月展のために、9月中旬までに2作品を描き上げなければならなかったのでした。
爆弾を抱えて、3カ月間で合計5枚も大作を描きあげる自信なんて、さすがにございません! (←ここにリアルの事情を入れていないのが怖いところ……)
だって、10月展は加純さんの作品をクローズアップしてくださるということなので、ここは絶対「頑張っちゃおう!」と考えてしまうではありませんか。
事前にわかっていたのなら前から準備しておけばいいのに……って、お思いでしょ?
ええ、しておくつもりだったのですよ。でも、今年の夏は予想以上に辛くって。これっていう図案が浮かばなかったの。暑さが本格的になった頃には、体力どころか、思考も根性も溶けて蒸発していました。
一応『テスとクリスタ』を描くことと、秋をテーマにマオを描くことだけは決まっていたのですが、そこから先がさっぱり……。そうこうしているうちに、あっという間に8月になっちゃって、『イラスト交換企画』の応募のお知らせが来ちゃった。(泣)
こんな調子ですもの。予定がスムーズに進む訳ないと、全部門チャレンジは諦めました。無理を通して、主催者様側にご迷惑を掛けるのは避けたいですから。涙を呑んで、初心者ウェルカム部門のみのエントリーにしました。
一部門だったら、万が一のことがあっても、なんとか乗り切れそうだと踏んだんですね。それでどうして初心者部門なのか? って。それは、初心者部門が一番参加者が多かったの。確か一番最後の申込者(←本当にギリギリ!)だったので、コソッと紛れ込ませてもらおうと思いまして。ね、情けないでしょ。
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この企画、くじでペアになった絵師様の作品を描くのですが、当然わたしの作品もどなたかに描いてもらうことになるのです。だから「交換」なのですが、わたしが描く作品の作者様と拙作のイラストを描いていただく絵師様が違うっていうのも、ユニークなところですよね。
9月に入ってすぐ今年のペアリングが発表されました。加純さんはヘンなところで妙に勘が働くひとで、8月末にツイッターでこの方のイラストをお見かけし「もしや……」と思ったのです。奇遇にも、お相手様もそう感じたそうですが。
しかもお相手になった星影さき様、わたしが第1回目にキャラをお借りしているのですよね。もう、これはご縁。なんてありがたい幸運な巡り合わせでしょうか!
というわけで、テンプレートからどうぞ。
★絵師情報★
絵師:星影さき
描きやすい性別 :たぶんどちらでも描けます
描きやすい年齢 :30歳くらいまで
描きにくい人物:ゴリマッチョ、中年や高齢者
描けない人物:なし。クオリティは下がるかもですが、どんな人物でも楽しく頑張って描かせていただきます。
何かあれば:なるべくキャラクターの雰囲気を寄せられたらいいなと思っているので、キャラデザインがない場合はラフの確認をしていただけると助かります。
★キャラクター依頼内容★
【出演作品】 『テスとクリスタ ~あたしの秘密とアナタの事情』
【作品URL】 https://ncode.syosetu.com/n5837di/
【ジャンル】 SF
【名前】 鷹栖マオ
【性別】 男性
【種族、人種】 人類、表面上は日系の特徴が強く出ている(……といってもたぶんどこかで混血していそう)
【年齢】 16歳 (あと3日で17歳になる予定:本人談)
【身長】 175センチくらい? (成長期につき変動の予定あり)
【体重】 62キロくらい? (成長期につき変動の予定あり)
【髪型・髪色】 黒髪ストレートのロングヘア。腰の辺りまで。
【目つき・目の色】 琥珀色。主人公に言わせると、香りの高い紅茶みたいな色。
【肌の色】 色白
【体型】 スレンダーな筋肉質。
【服装】 私服はヨーロピアンカジュアル系を着せていますが、お任せします。
【表情】 クールで、感情がおもてに現われないタイプ。花をも欺く美貌の持ち主で、テス(主人公)が女の子と間違えました。
【性格】 紳士的な礼儀正しさと気遣いも出来るけど、案外悪戯好き。普段は物静かですが、本当に怒ると怖いタイプです。
【その他】物語後半戦の鍵を握る人物。主人公のバイト先に現われた謎の老人の関係者らしいが、素性はまだ謎。……というより、素性がバレて欲しくないような素振りも。
月の高校に在学中らしい。博学多才で、どこか老成しているような一面も。
Mission complete!
どちらかといえば爽やか系かわいい系を得意としている星影様ですが、今回は思い切って正反対のキャラ像、妖艶ミステリアス系のマオをお願いしてみました。
最初は、テスをお願いしようかと思っていたのです。きっと可愛いテスを描いてくださるに違いありませんもの。以前クリスタを描いていただいたので、そうすればヒロインふたりが揃いますものね。
けれど。星影様が描くテスは納得できちゃうんです。絶対、可愛いって。もちろんテスも見たいのですが、それと同時に「絵師星影さき様が描くマオが見てみたいと思ってしまったのです。
ペアリング前にツイッターでイラストを拝見したって言いましたでしょ。あの絵を拝見するに、「これはイケるな」と確信していたんですね。セクシー系はこれまで描かなかっただけで、現在の実力だったら描けるでしょう、と。
結果はご覧のとおり!!
幻想的な雰囲気のなか、口元に指を寄せるポーズが印象的です。このポーズ、マオが謎めいた存在であることをよく現わしていますよね。目元口元にほのかに漂う色気も嫌みじゃなくて、どこか爽やかさも感じさせます。風邪になびく髪とひろがるマントが、少しひんやりとした夜風を感じさせるからなのでしょうか。
青白い月と、手にしたカンテラからの淡い光に照らされていますが、このライティングの微妙な光量の加減が絶妙。色の使い方も、さき様らしくやわらかな色合いながら、どこか華やかでかつしっとりとした雰囲気をもり立てているでしょ。
手前に経つ人物と足元から左奥へと続く小道が、画面に奥行きを持たせているので、その先にひろがる夜空がウンと広大に見えます。
お気付きでしょうか。道標に書かれた文字が作品タイトルになっています。こんな遊び心も良き良き、です。
しかもマオの登場は101話中、後半の16話だけ。(途中でチラッと影が見えたりしていますけど、ね)この長い物語を最後まで読破して、決して簡単なキャラではない彼を、こんなに素敵な美少年に描いてくださった星影様には感謝しかありません。
無理をお願いして申し訳ありませんでした。本当に、本当にありがとうございました。
大切にいたしますね。
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さて。
星影様に無理難題を押し付けている頃、当の加純さんはなにをしていたかというと、当然わたしが描くべき作品を読み始めつつ、別の企画の『#12ヶ月の小品集2021』や『#12ヶ月の渚と空のミュージアム』10月展の作品を制作していました。
星影様に難題を押し付けた以上、わたしも張り切らなくてはなりません。
制作順序としては『#小品集』や『ミュージアム』の2点の方が先なのですが、10月展の公開が延びているので、今回はこのまま『イラスト交換企画』のお話しを進めていきますね。
「思い出の本とラベンダーの香り」 #12ヶ月の小品集2021 9月のお題「本」
さて。
交換企画でわたしが描く作品は、腹田 貝様の『家畜の意思 「愛玩用と呼ばないで」』です。
ジャンルはSF。読み始めて、直ぐに作品の世界観に魅了されてしまいました。登場人物たちが、とてもユニーク。そしてしっかりとした世界観に支えられた、スリリングなストーリー展開。
脳内では勝手にキャラの映像化が始まり、どんどん膨らんでいきました。ただこうなると、加純さんには困ったクセがありまして、頼まれもしないのに、勝手にあれこれ描きたくなってしまうのです。速攻「こんな感じでどうでしょう?」とラフ画を送りつけたのですが、もらった腹田様はさぞかし困惑したことでしょうねぇ。
だって、それ。依頼されたキャラではなく、主要メンバーとはいえ、順位としてはワキの方のキャラだったのですもの。
そのままトントン拍子に描いていければよかったのですが、締め切りの関係で、先に『ミュージアム』展のイラストを2点仕上げなければなりません。だから9月初旬に簡単なラフだけお渡しして、一端離脱。それでも約束どおり10月には舞い戻り、キャラのヴィジュアルを描き始めたのです。
今回のキャラ設定に辺り、闘志を燃やしたのは獣人化。
動物の頭部に人間のような体型。描いたことが無い、このアンバランスな(腹田様、ごめんなさい)個性を、どう描きこなすかということでした。
加純さん、動物を描くのは苦手です。あまり描いたことはありません。でも『#小品集』でゴリラを描いた経験があるので、描けないことはないと思うのです。資料を集め、それなりにスケッチをしているうちに、頭部はなんとなくカタチになってきました。
キャラクターですから表情をつけたい。表情筋に少しデフォルメを加え性格や感情をプラスしつつ、獣らしい野性味も感じさせなければならないでしょう。プロポーションも、キャラの個性を現わすのには大事な要素です。
頼まれていないけど、衣裳もデザインしてしまいました。これも個性をハッキリ出せる部分なので、おろそかにしてはいけません。という理由をつけて、モード系のファッション雑誌買っちゃった。クリスタにも使い回せるし。ヘヘッ。(←単なる趣味です……)
でもね一番問題だったのは、首! 動物と人間の首の太さ問題だったのです。
動物の首って、太くてしっかりしているのですよ。対して人間の首は細い。四足歩行中もブレることが無いがっしりとした逞しい首を、ヒトの重い頭部を支えるのには細すぎる首(←だから肩凝り首凝りが起こるのよ!)に近づけ、それなりに見せるのが予想以上に難しかったの!
それに毛並み。体毛をどこまで描き込めばいいのでしょう? ここでつまずいちゃった。
なぜ首の太さが大問題になるのか? それは洋服を着せなければならないから――なのですね。特に女性陣、スタイルのよいキャンディ少佐はスーツ着用の設定なのですが、首が太いと首元のデザインが締まらないのです。なんとなくユルく見えてしまう。彼女の性格からすると、それは避けたい。ジャガーの特徴である斑点も、どこまで描き込んでいいものか?
描いたり消したりを繰り返した末、セロリは襟の高いデザインのインナーを、キャンディ少佐は原作どおり首元にたっぷりのフリルをあしらって、それとなく隠すことにしました。もちろん購入したモード系ファッション雑誌が役に立ったのは、いうまでもありません。男性陣のユニフォームの参考にもさせていただきました。エタらぬ先の趣味です。(←ホントかな?)
キャンディ少佐。
典巻警部。 (←加純さんの推し!)
特畜隊 セロリ。
特畜隊 ムギ。
特畜隊 タテガミ。
今回は、ここまで。制作はまだ続いています。
おまけ。首の違い比較イラストの文字無しver. 挿れておきます。
説明のための図だから、簡単に描く予定だったのに。いつの間にかガッチリ描いていたわ。(泣)
【お知らせ】
本文中にもありました『渚と空のミュージアム』10月展ですが、11月展に変更になりました。近日公開予定です。
それによりエッセイでの作品の発表が、制作順序と変わっています。公開後にそちらの2作品(『hug』と『紅葉狩り』)の制作ウラ話も書かせていただきますので、お待ちいただけたら嬉しいです。
それでは、また。