44. 加純さん、積年の想いに一応の決着をつける。
描きたいんだけど、描けない。でも、描きたい。理想と現実(実力)の差って、厳しいッ!!
外気温が30度を超えると、加純さんの脳は必要最低限しか働かなくなるのです。さらに元気もやる気も汗と共に蒸発してしまうようで、気持ちだけは焦っても身体が付いていかない。モタモタしている間に、いつの間にか8月も終わろうかと。
年齢のせいだといってしまえば片付きますが、そこに甘んじていていいものでしょうか。もうちょっと努力しようよ。
このままじゃ、なにもしないまま夏が終わる。暑さだけはまだ続くだろうけど、暦はもう秋に移ってしまいます。エッセイの更新もストップしたままだし、イラストを描かねばと思うものの全くペンも筆も乗らないと云う事実。
なんだか脳内、ヨーグルト状態。ブルガリアなのか地中海、はたまたインドか中央アジア辺りなのか分からないけど、働かないのだけは確か。
誤解のないように。加純さんヨーグルトは大好きです。でも白くてドロドロ、脳みそヨーグルト化はいただけません。せめてはちみつでも掛けてみようか。
う~ん
無理矢理やる気を奮起させれば、どこか身体に故障が生じるとは。これ如何に……(泣)
習作「波打ち際」 デジタル作画
絵描きの皆様。
――例えば、ですよ。頭の中に突然イラストのアイディアが降りてきた、または沸いてきた……とします。それがまた、自分でも「よし、これだッ!」と思える素晴らしい(あくまでも当社比)構想だったとしましょう。
当然、それ、描いてみたいと思いますよね。
だって構想がまとまらない時って、どれだけ頑張ってもちっともカタチにならないではありませんか? え、それ、わたしだけ?
座ってペンを持てばすぐに描ける、そんな素晴らしい才能には、とことん恵まれていない加純さん。つまずいてしまったら、スケッチブックの紙面の上で、延々とムダな線を描いては消しの無限ループへ突入するのです。暗くて狭いらせん階段を上っては降りることを永遠に繰り返し。
もしくは七転八倒。暗中模索。思考が迷子。
大抵ここにセットメニューとして「体調不良」が付いてくるので、闇はますます深くなるの。
それは気分も滅入りますわ!
なのにですよ。棚からぼた餅が落ちてくるように、ポンと頭の中にアイディアが浮かんで来たとしたら。
こんなラッキーなことってありませんよね。
その上、どういう訳かそのひらめいた案(構図とかキャラとか)って、めちゃめちゃ「いいもの」に見えるのです。(注:当社比ですから!)
だから描きたい。ど~しても描いてみたい。いや、描かねばならない! とまで思えてくる。
なんなの、この使命感?
さて。
浮かんできた図案をササッと紙の上に描き上げることが出来たならば、問題はないの。でもね、理想と現実の差は激しいというか、脳内映像(理想)の出来が良ければ良い(注:当社比)ほど、それをそのとおりに紙面上に復元させるのが難しいのですわ。
それはそうよね。脳内映像は理想だから、どんな風にも描けちゃうの。でもそれを忠実に復元させる技術が加純さんにあるかどうか――が問題である、のよ。
ない。ハッキリ言って、ない。
ないけど、描きたい。
だから一応トライはするの。玉砕するんだけどね。そうして中途半端に描きかけのまま、ファイルに仕舞い込まれた残骸がどれだけあることか。自分でも、一度断捨離しようとは思っているのだけど。
それらをなぜ捨てないか? 思いつきの無謀を捨て去って新たな図案を練るとか、改良を加え問題点を改善し、出来る範囲で表現するとか。
それはやっています――って! じゃなきゃ、新作イラストは一枚も仕上がらないもの。
捨てない理由。未練といえばそのとおりなのですが、せっかく「棚から落ちてきたぼた餅」ですもの、美味しくいただきたいと思いませんか?
一端、冷凍保存するとしても。
****
頂き物の紹介です。
たくさんのファンアートを頂きました。
星元 雪解様よりの頂き物、『テスとクリスタ』のテスです。
星元様らしい、ポップで明るく軽やかなテスです。眺めていると楽しくなってしまう。かわいい~!!
星元様、ありがとうございました。
もう一枚、テスで。
お弁当を一緒にいかが?の作者でもある、押根こむる様より頂きました。
お嬢様風の落ち着いた雰囲気の中に、あやうさと脆さを秘めたようなテス。守ってあげたくなるクリスタの心情が分かる気がしますね。
こむる様、ありがとうございました。
こちらはテス応援団の団長、さば・sbnb様から。
デジタル作画に進出して、めきめきとウデを上げられているご様子。
静かな水辺に腰を下ろしているところでしょうか。夏らしい衣裳が涼しげでしょ。
で、ホントはこれで終わるはずだったのですが。
わがままを言って、もう一枚描いてもらいました。へへっ、言ってみるものですね。だって、こちらのラフ画も可愛かったんですもの!
ちなみに背景無しバージョンもいただきました。
さば様、いつもありがとうございます。
クリスタ姐さんも頂いております。
前回クリスタを描いていただいた一条かむ様に、もう一枚描いていただきました。
姐さんのご贔屓衆の皆さま、用意はよろしいですか?
いきますよ。
行きます!
じゃ~ん! ヨガをするクリスタです。
どうです、感涙モノでしょ!!
そういえば、物語の冒頭でも、朝のルーティンとしてやっていました。きっとこんな感じだったのでしょうね。
かむ様、ありがとうございました。
そしてね。これは大傑作だと思うのです。
茂木 多弥様作品。たやっちのタッチで描かれた、テスとクリスタ。ふたりの性格や関係性が良く現わされているでしょう。
いいでしょ。クリスタの「なにやってんだい」ってセリフが聞こえてきそう。テスの情けな~い表情も良い。
茂木様、ありがとうございました。
いつか「テスとクリスタ」の第二話を再開しても、当分挿し絵には困らないとほくそ笑む加純さんであった。へへへ。
もう一枚、『テペラウの月 月のしずく』のカナヤを描いていて頂いております。
描いてくださったのは、exa様。
乾いた風に吹かれながら、物思うカナヤです。普段明るく笑顔でいる分、こんな表情をされるとせつなさを強く感じますね。透明感が素敵です。
10話の「三弦琵琶の音色も沙に還らん」の挿し絵に貼らせていただきました。
exa様、ありがとうございました。
****
「棚から落ちてきたぼた餅(冷凍保存済み)」のお話に戻しますね。
7月に、いつもお世話になっている長岡更紗様のお誕生日お祝い企画がありまして、そこに張り切って参加したのです。(←この頃はまだ元気があったのよ)
お誕生日プレゼントです。とうぜん企画主様に喜んでいただけるような作品を贈りたいですよね。この企画、大変親切なことに、あらかじめ趣味趣向の提示がございました。幸いその中に「これなら描ける!」というカテゴリがありましたので、それをチョイスしたのですが。
構図が上手くまとまらない。
しばらく『混沌の淵に潜む竜は永久を嗤う』のキャラを描いていなかったので、仕方ないといえば仕方ないのですが、宣言しちゃった手前、今更後には引けないと云う余計な意地が。
角度を変えて描いてみてもリューゼがリューゼにならなくて、心密かに「アップの構図だけは止めておこう」と決心した時、ふと思い出したのですよ。
お蔵入りしたままになっていた構図を。
(あれ、使えるんじゃないかしら?)
同時に、あの時は描ききれなかったけど今ならなんとか描けるかもしれない……という根拠の無い確信も浮かんできたのですね。
まあ、ダメだったら考え直せばいいのですし、まだ時間はありましたから、トライするだけでもやってみよう!
と、安直に(or 開き直って)描き始めてみたのでした。
「マーミ ペン入れ途中」 コピックライナー
なんということでしょう。
快調にペンが乗って、以前描いたものより服装や小道具、壁等の装飾も凝ったものになり(注:当社比)ました。さらに竜も2頭(白い小竜)追加されたではありませんか。気楽に始めたのが良かったのか、下書きまで順調に終了したのです。
(マーミのポーズと衣裳は、ミュシャの「ヒヤシンス姫」を参考にアレンジしてあります)
こんな感じになりました。
「マーミ&リューゼ ペン入れ後」
なんとなく察しが付くと思いますが、彩色が難しそう~~~~!!
前回の『テスのマッドティーパーティー』で苦労したので、その二の舞は避けようなどという思いはどこへやら。どーしてこうなる!?――とか自分で自分に呆れながら、やるときはやるのよ。
『乾杯!』 「長岡ブッさせ企画」への献上品
頑張った! マジで頑張ったから!
右の黒い甲冑を着ている(着ているのですよ)のがリューゼで、左側のドレスを着ているのはマーミリージュ。中央の黄金の竜はラルゴです。
二匹の白い竜と、リューゼが手にする「災厄の剣」がこれからの物語のカギを握る(……予定)のですが――。
「撤退」 シャーペン画
こちらはおまけ。リクエストにあった「騎士ペア」のお題でリューゼとセオリエを描きました。タイトルは「撤退」。さりげな~くぼやかしていますが、周囲には動かなくなった騎士達の身体が転がっています。
最初に描こうかと浮かべたのはこっちの構図なのですが、いくらなんでも(たとえシュミに合いそうだとしても!)お誕生日プレゼントには不向きでしょ。
あ! なぜにふたりがこんな状況になってしまったのかはヒミツです。
ともあれ、企画主様に喜んでいただけて良かった! ホッ!!
****
長期スパンで参加させていただいているツイッターの企画。
空乃 千尋様七瀬渚様共同企画創作展覧会『渚と空のミュージアム ~わたしたちのSTORY~』8月展の出品作品も、実は長年温めて(描けずに悩んで)いた構図でした。
中央のふたりのポージングまではなんとなく描けたのですが、その後が……。こちらも作品を観ていただけたなら、察していただけると思うので、まずはご覧ください。
『幻想・夜陰夜会』
先に言っておきます。
「テスクリ」の本編に、こんなシーンはありません。
大事なことですから、もう一回。
こんなシーンはありません!!
だから、『幻想』なの。
それは少しだけ昔のこと。娘と某アイドルグループのライブDVD鑑賞(←強制参加よ)をしているときに、ふと「マオならヴァンパイア役も演れそう」と思いつきまして。
べつに、スピンオフを考えていたわけではないのです。(←先に牽制)アイドル達の衣裳とか、ライブで演奏されたいくつかの楽曲のイメージ、構成や演出とか観ていたら。
会場だと気持ちの方が先に盛り上がってしまいますが、ビデオだとライブの興奮もさることながら、一歩引いて広範囲から見渡せます。リアル体験には勝らないでしょうが、制作者側の意図を探りながら観るのも面白いのですよ。
で、つい……いつの間にか。画面に向かって熱い声援を送る娘の横で、母は印象に残った映像の断片をヒントにして、勝手に自キャラを使ってオリジナルストーリーPVを脳内で創作していたりして。
すまぬ、娘よ。
そしてさらなる紆余曲折の末、ある時あるタイミングでこんな構図が降ってきたのですね。
でも降ってきた当時の画力では、とてもじゃありませんが描ききれなかった。どうすれば描けるのかさえも、見当が付かなかったの。何度トライしても、どうしても納得のいくカタチにならないんですもの。
いつの間にかお蔵入りになっていたのですが。
「乾杯!」を描いたあとに、今なら描けるかもしれないという、再びの根拠と自信の無い確信が生まれてきまして。なんなんだ、この迷惑な妄想は――とか考えつつ、どうしてもカタチにしてみたいという誘惑に負けて、勢いで描いてみたのです。
例によって、描けないの前提。
描けたらラッキー! くらいのラクな気持ちで。
発案当時、この絵が描けない最大の理由は、ひび割れた鏡に映ったような画面にする演出をどうすればいいのか、でした。もちろん時計や薔薇などの小道具を上手く配置できない、描き込めない等々の作画における初歩的な実力不足もありました。
出来ないことを考えるな。
だから、最初に言ったではありませんか。脳内映像は理想だからどんな風にも描けちゃうの、って。
ともかくイラストさえ描ければ、後はなんとかなるかもしれません。ひびの走ったラインを描き込み、そのとおりにはさみで分断して、別紙にいかにも「そんな感じ」を演出して、のりで貼り付けて再構成すればいいのでは?――と考えていたのです。(←見事なアナログ)
しかしはさみを入れちゃうと、完全にやり直しが利きませんからね~。たとえイラストがそこそこ納得できるレベルで描けたとしても、切断の段階でミスしたら大変なことです。下書きからやり直しですよ。
慣れている(←……汗)とはいえ、精神的ダメージは大きい。
それでなくても、脳みそヨーグルト化の進行は止まらないのに。(←セットメニューもありがたくない増量サービス中!?)
これまではここで「出来ない」の不毛なループにハマっていたのですが、描き上がったイラストにはさみを入れなくても分断する方法を思いついたんです。
テジタルで処理すればいいじゃん!
そうです。イラストはコピックでアナログ作画。そのあとPCに取り込み、デジタル処理で演出を加えようというハイブリッド方法。
前々回の「マッドパーティー」で覚えた貼り付けや、前回「ゴリラゴリラゴリラ」で覚えたコピペを応用すれば、はさみを入れることなく、何度でも分断と移動を試すことが出来ると言うことに気が付いたのですね。(←ようやく……とか言わないで)
遅まきながらでも、使える手段は使うに超したことはない、でしょ。
(ああ、目の前に一条の光の道が)
こんな方法思いつくなんて、デジタル作画に手を出して良かった! 嬉々として作業に取りかかったことは言うまでもありません。
決して平坦な道ではありませんでしたが、なんとか成し遂げました。それっぽく、仕上げることが出来ました。
ゴシックホラー風の雰囲気も出たでしょう。
自分で自分を褒めてあげましたとも!
で、その時は大成功だと浮かれていたのです。
だって積年の構想を、ようやくカタチに出来たのですもの。
けどね『乾杯!』も『幻想・夜陰夜会』も仕上げて一晩経つと、制作中は見つけることが出来なかったミスやアラが次々と見えてくるんですよ。
なぜなのでしょう。
――リテイクってこと? (泣)
本文中でも紹介いたしました、空乃 千尋様七瀬渚様共同企画 創作展覧会『渚と空のミュージアム ~わたしたちのSTORY~』8月展はこちら。参加クリエイター10名による動画の展覧会です。
絵×小説×音楽! 創作展覧会 『渚と空のミュージアム ~わたしたちのSTORY~』