43. 加純さん、コピペを覚える。
コピペ コピー&ペーストの略。PC上のデータを別の場所に複製する操作手法。
加純さんはアナログ絵描きですが、デジタル作画にもチャレンジ中です。
37話で「始めました」というお話をしましたが、その後も地味に制作しています。
とはいえアナログ絵を描く機会の方が圧倒的に多いので、月に1枚のペースでしょうか。そんな調子ですから、なかなか慣れないのですよ。
ペンタブレット。
ペンタブとデジタル作画の行程は37話でお話ししたとおりですので端折りますが、慣れ親しんだアナログ作画と、板タブでのデジタル作画の違いの違和感に馴染めなくて。(←だからといって液タブに切り替えようって気も無いのですが)
描画面で描き込みの工程を進めながら、PCの画面で確認をする。タイピングと同じことだと考えていたのですが、実際に絵を描いてみると、この数十センチの距離と空間の開きが心情的な支障になりました。
もちろん作画方法や手順、細かな技術的な違いも戸惑いましたが、直接描き込んでいたものが間接的になっただけで、これだけ感覚に違いが出るものかと驚き!
でもね。これだけは慣れるしかないの。お道具ですから。
いまでは当然のように使っているアナログのお道具、ペンやインクだって、ミリペンだって、最初は苦戦していたんですもの。何度も使ううちに、なんとなく手に馴染んでコツを覚えて使える様になってきたのです(現在進行形)。
コピックだって、そうだよね。このエッセイの連載を始めた時は、購入する前でしたもの。慣れる以前の問題でした。あーだこーだ言いつつ、見よう見まねで描き始めたのですから、板タブだって亀の歩みでも慣れて行くんだい!
――と、いう訳で。
天界音楽様の企画する「#12ヶ月の小品集」には、デジタル作品を出品していく事にしてみました。ただし体調や作品によってはアナログの方がいいということもありますから、そこはケースバイケースということにして。(←退路の確保は忘れない!)
それでも目標に掲げておけば、毎度板タブを引っ張り出して来なければならないでしょ。こちらの企画は毎月のお題に対して一作品を上げていくのですから、慣れるには丁度良いといっては失礼ですが、大きな精神的負担がかからない間隔で、コンスタントに制作ができます。なんと言っても個性的なメンバーが意匠を凝らした作品をガンガン上げてくるのですから、張り合いがあろうというもの。さらにその素敵な作品鑑賞というご褒美付き。
これは気合いを入れて頑張るしかないでしょ!!
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ここで頂き物のご紹介。
志茂塚 ゆり様より、クリスタのイラストをいただきました。
サラッと描かれた、優しい表情のクリスタ。タッチの柔らかさが、彼女のおおらかさや度量の広さを表現しているようで、素敵な一枚です。
志茂塚様、ありがとうございました。
5月お誕生日の方々へプレゼントに贈ったイラスト、2点。
exa様へ。バースディケーキのプレゼント。
お誕生日の「かまって企画」にお送りしたものです。丁度『テスのマッドティーパーティー』を仕上げている頃だった(ような記憶があるのだが??)ので、すっかり遅刻してしまい大急ぎで描きました。定番のショートケーキ、どうぞ召し上がれ。
んン。今思うと、ホールケーキの方がよかったかしら。
田中桔梗様へ。「恋するプリンセス」のエリー様。バースディカード風のレイアウトにしてあります。
エリー様は第2回の「なろう美術館」企画の際にガッチリ部門で描かせていただいたのですが、あの時は決意を秘めた硬い表情でした。加純さんがどうしてもあのお顔を描きたかったものですから。
それで、ずっと気にかかっていたのです。やっぱり笑顔の方がよかったかな~、と。なので今回はオフタイムの、リラックスした表情を。事件がすべて終わったあと、最愛の人との幸せな時間を過ごしている時の笑顔……という設定で描いてみました。
うん。やっぱりエリー様は笑顔の方がかわいいよな~、と思いつつ。
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話を戻します。
まずは5月のお題「悪」。
こういう抽象的なお題って、方向によっていろいろな描き方が出来るから、なかなか難しい。今回はウチの子のなかでも、プロトタイプな悪女役の彼女に頑張っていただきました。
「悪女 ヴェスタ」
ヴェスタの表情だけアナログでざっと下書きしたものをスキャンしてPCに取り込み、ペン入れからデジタルで作画しています。
下書きから全てデジタルで処理できればいいのでしょうが、まだタブレットでラフを取るとデッサンが狂いまくるのよ。
加純さん、根っからのアナログ人間かもしれない。
そういえば41話の彩色の項で、カラーイラストに黒は使わないという話をしましたが、使うときは思いっきり使います。赤と黒のコントラストで、ヴェスタの妖艶さといかがわしさを表現できていれば。
というのは表向きの解説。ホントはこのイラストはモノクロで仕上げる予定(彩色に自信がない)で描き始めたのですが、途中で花を色付けした方が艶やかさが出るな……と思い方向転換。
ええ、そうです。フレキシブルな発想の飛躍。いつもの、出たとこ勝負。
でもいい方向へ曲がったでしょ。
曲がりついでに花から赤い液体、蜜とも、樹液とも、血をも連想させるような液体をしたたらせ危険な空気を盛ってみました。
このイラストは「素材」を利用する練習も兼ねていたので、彼女の背景のカケアミという効果やアクセサリーは手書きではありません。アナログならまだしも、今のわたしの技術では、デジタル作画でこの描き込みはムリです。
デジタルでは他の人が制作した素材(材料)を利用できるので、それらを活用するのも作画方法のひとつ。使えるものは有効に使わせていただき、時間短縮や苦手克服することが出来るのもメリットですよね。(←慣れないので手描き以上の時間がかかったことはスルーして!)
素材を上手に使いこなすというのも難しいものだな、と実感いたしました。
6月のお題は「ゴリラゴリラゴリラ」。
象やキリンなら描いたことがありますが、ゴリラは……。だからこのお題を見たとき、真剣に悩みました。
描ける自信がないよぉ。
(アイディアが浮かばなかったら、リアル模写!?)
そんな具合でしたから、月半ばを過ぎるまでからっきし構図のプランは浮かばなかったのですが、ゴリラゴリラと唱えていたら、脳内にとある曲が流れ始めました。
その曲調にあわせて、なんとな~くゴリラが動き出して。ああ、これイケるかも! とおおまかな構図が浮かんだのです。
それから3日間くらい、ゴリラの生態を調べたり、写真を見ながら模写したり、ゴリラをテーマにしたいろいろなイラストを観たりして描き方の研究。
ゴリラと中央の人物のキャラデザインまでアナログで完了させ、板タブを引っ張り出してきてPCでの作画に移ります。
もう一度資料と照らし合わせながらゴリラのポーズを描いて、次に別のレイヤーに、その絵を下敷きに同じようなポージングのゴリラみたいな体躯の男性を描いていきました。
実はね~。今回途中で、息子に作画画面をのぞかれてしまいまして。
丁度男性を彩色している途中だったと思います。夢中になって作業していたから、背後の気配に気付くのが遅れました。息子も、足音を立てずにそ~っとやって来るんですもの。
そして背後から――。
「あ、ゴリラだ」
あ~、びっくり! でも、別の意味でもドキッとしました。
予備知識もなく、画面に映し出された絵を見ただけで息子はそう言ったのですから、この人物キャラがゴリラっぽい体貌に見えるのは間違いなさそうです。ならばと、ついでにもう一枚の絵も見せたら「うん、ゴリラでしょ」とうなずきました。
(やったぁ~!)
なぜゴリラの絵を描いているのかと不思議そうな息子の横で、母は俄然勇気が湧いてきましたわ!
今月のデジ練習テーマは、コピペ。複製したデータを別の場所に貼り付けることです。
この操作、アナログではちょっと真似が出来ません(似たようなことはやっていますが)から、便利だなぁ~と憧れていたのですね。やり方を調べて、そのとおりにやってみるのですが……あれ、出来ないよ?
レイヤーを指定して、ゴリラを「選択範囲ツール」で囲んで、「コピー+貼り付け」を指定して左から右へとドラッグしたのにゴリラが増えない。コピーできないじゃん!?
そりゃあ、出来ません。まだ指示が足りないのね。わたしは同じレイヤー上にコピー被写体を貼り付けるだけだから、簡単に複写できると思い込んでいたのですが、実はもうひと手間やらなければならないことがあったの。
機械って、正確に指示を出してあげなければ従ってくれないんだってば。
大慌てであちこち説明を読み返して、ようやく「レイヤー移動ツール」を使わなければならないということを発見。どういうことかといえば、選択範囲(今回の場合はゴリラ、ね)を囲んでもそれはコピーしたいものを選択しただけであって、移動させるのはまた別の指令なの。で、「レイヤー移動ツール」で、これを移動させた場所に貼り付けてちょうだいと、PCに言い聞かせる。
さらに「Altキー」を押しながらドラッグ(誘導)しなければいけないということをすっかり見落としていて、また迷子。「範囲選択ランチャー」の「選択を解除(操作完了)」をしたあと、無事コピーゴリラの姿が現われたときには安堵よりドッと疲れが……。
その後は順調にコピーを重ね、左上のゴリラと右下のゴリラにアクションを描き加えて、ようやく完成!
「ゴリラゴリラゴリラ」
ところで、この絵の中心のおじさん。描いているうちに「わたしのお気に入り」になりました。おかげさまで反響もよろしく、彼へのいろいろなコメントを頂いたので、急遽名前と出演作を決定いたしました。
ローランド・ブラフ氏と申します。職業はロクム・シティ市警察の捜査官。第一話では名前だけ登場していたキャラですが、これでビジュアルが決定。
『テスとクリスタ』の次回作では本格的に登場する――かも!?
これだけ苦労したのですから、コピペの仕方を覚えたと思うでしょ? ところがね。最近は覚えることより忘れることの方が速度が速いので、3日後には忘れている可能性の方が大きいのよね。現に…………
この企画は毎月25日にツイッター上で作品公開されます。個性的で楽しくて、ユニークな作品目白押し。お祭りみたいに楽しい企画です。
よろしければ、観に来てくださいね。そして参加してみましょ!
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ちなみに。ゴリラを描きながら、アナログで別のイラストも制作していました。そのうちの1枚。模写を始めた頃は、ゴリラがゴリラにならなくて悩んでいたんだもん。悲しくて、いろいろなキャラを落書きしていたの。
途中で体力が尽きちゃったので中途半端な出来になっていますけど。
「mao 14 (習作)」 コピック使用
――こっちはゴリラには見えないよね!?
ご来訪、ありがとうございます。
デジタル初心者、頑張っています!
板タブに慣れなのも哀しいですが、お絵描きソフトの使い方も依然として迷子状態。便利すぎて、どうしていいのかわからないのよ~~~。
なにかしようとする度に、ネットの情報やテキストを調べてみるのですが、ひとつ分かるとふたつぐらいわからないことが増えたりするのは、なぜ??
『テスとクリスタ』に新しいキャラが登場! このお話、意外とおじさん率が高くて、次回のお話もおじさんオンパレードになったらどうしましょう。いや、その前に早く書けよ、ですね。
マオ、手癖で描いたら、表情が険しくなってしまいました。きっと会話の相手はテスじゃないよね。こんな怖い顔したら、テスに泣かれちゃうから。
しばらく着物も描いていないなぁ~と思い、つい着物を着せてしましました。マオが日系の設定なのは、加純さんが着物を着せたいからだろう……と云う説(友人談)も、あながち外れていないかもしれない。
前回描いたイラスト『テスのマッドティーパーティー』が収録された、創作展覧会『渚と空のミュージアム ~わたしたちのSTORY~』が 公開されました。
絵×小説×音楽! 創作展覧会 『渚と空のミュージアム ~わたしたちのSTORY~』
6月展 https://www.youtube.com/watch?v=OlkNgN8rbY8
お越しくださいますようお願いいたします。
それでは、また。