表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
加純さんのお絵描き録  作者: 澳 加純 
1. ツイッターにイラスト上げてみようかと思います!?
42/94

42. 加純さん、修復作業に勤しむ。

創作展覧会『渚と空のミュージアム』6月展に出品した『テスのマッドティーパーティー』、いよいよ完成です。しかし最後にどうしてもやり残したことを修正したくなって……。

今回も描き下ろしイラスト付き!




 ときに前々回の「拡大鏡を購入する。」の回で、作画の途中で絵から離れ全体のバランスを観ると云う話をしたのを覚えておいででしょうか?

 この一時中断という行為も、作品を冷静に眺めるためには、意外とありがたいことなのかもしれません。


 調子に乗って手が止まらないときって、脳内は興奮状態ですから、あれこれアイディアがいっぱい溢れて色々やってみたくなりますよね。その時はそれが素晴らしいプランだと信じて疑わず実行するのですが、後で見直してみると、なぜこれがよかったのか分からない、またはもっとこうした方がよい……とか別の考えが浮かんできたり見直し点を発見したりすることがありませんか。


 このときもそうでした。マオの足下のばら二輪を濃赤色で仕上げたのですが、絵と距離を置いて観察してみると、やけに重く野暮ったく見えたのです。左側に濃色の分量が多くなり過ぎたみたいです。



   挿絵(By みてみん)

   「修正前の状態(デジタルで強制的に復元してみた)」



 それと上段のクリスタの皿、同色系でまとめたのはいいけれど、なんだか面白味が足りない。

 リテイク(描き直し)は時間的に無理ですが、リカバリー(補修)なら可能でしょう。というわけで、早速描き足しに入ります。

 時間が無いから、決断が早いこと! (←それと、めまいがひどい時期だったので深く考えていない……)



 アナログ絵描きたるもの、補修の技術は必須です。もちろん個人の意見ですが、持っていて損はありません。絶対やり直しが利かない……では制作時に精神的負担が大きくのしかかって来ますが、最悪はさみを入れることになっても()()()()ならば補修可能、だと思っていた方が気がラクでしょ。

 まあ、修復不可能ってこともあるけど。(←その時は潔くリテイクさッ!!)


 

 まずは、左下の修正。ばら二輪分、原画(A4サイズ)では高さ5センチ弱、幅11センチ強の面積を修正しなければなりません。そのままばらをトレースして彩色し直すのもいいのですが、それでは同じことの繰り返しになりそうです。もうちょっと、お洒落で気の利いた隠し方……もといデザインってないものでしょうか?


 そもそもケーキスタンドって、アフタヌーンティーのおもてなし(サービス)ですよね。アフタヌーンティーですから、当然お茶が出て来なければいけません。

 お茶といえば、ティーカップ……ティーカップの中にお茶の代わりにばらの花を入れるってのはどうでしょう? ここに白磁のティーカップが入れば、濃色が多い左側の印象が軽くなります。

 ついでにもう一輪のばらも、赤ではなく濃いピンクで。その横の蕾が赤色ですから、赤いばらばかりが並ばずに済むよね。奥のラベンダー色のばらが重たい印象ですから、こちらはもっと華やかな感じにしてもいいかも!


 それからクリスタの後ろに、いちごを描き足すことにしましょう。他のお皿は赤い色が溢れているのに、ここだけ無いから物足りなく感じるのかもしれません。フルーツも、タルトの飾りのベリーだけでは足りない。赤くて存在感のあるフルーツ……ということでいちごに。(←え、りんご? りんごもいいけど大きさに問題が)

 ならば三段目のメリルの横にも、シュークリームとの境目をハッキリさせるためにベリー類を足して、アクセントにお皿の上にもベリーを置いてみたら、もっとバランスよく華やかな感じを増せるかもしれないと考えました。



   挿絵(By みてみん)

    「描き足し修正箇所」  



 ――ということで、リカバリーする場所と描き込むものを決定。

 すでにコピックで着色までしてあるので、その上から描き足すことは出来ません。コピックはアルコールインクです。新たに上から着色すると、すでに塗ってあるインクが溶けだし、混色して色が濁ってしまうのね。

 ですから別紙に描いたものを切り抜いて、隠したい部分に()()()上から貼り付ける方法で。


 完成している部分を汚さないようにトレーシングペーパーを乗せ、覆います。その上にさらにトレペを乗せ、隠したい部分(この場合はばらの花二輪分)の輪郭を写し取ったら、その輪郭線が隠れるようにティーカップとばらを描いて、それを別紙にトレース。新たに描き起こした絵を切り抜いて、隠したい部分にのり付けしてしまいます。



   挿絵(By みてみん)

      (あくまでも一例です)




 至極手間がかかる作業のようにも見えますが、デジタル作画でも描き直すときはトレペがレイヤーに変わるだけで同じような作業をしている訳ですし、慣れればたいして難しいことでもありません。……て言うか、慣れるほどリカバリーしてんなよ、ってお話ですね。(←この手が使えないときは、それこそリテイクという大仕事になるんだもん!)



   挿絵(By みてみん)

      リカバリー後




 さあ、ようやくケーキスタンドが出来上がりました。あとは背景です。

 色のグラデーションで無難に仕上げる予定でしたが、マオの足下(左下)にひとつティーカップを描いたことで妙案が浮かびました。



 ケーキスタンドの背景にも、ティーカップを何客かランダムに描き込むのです。背景を消したリカバリー後の図を見ていただければ納得いくかと思われますが、底辺の描き込みに対し、クリスタの後方など上部分があまりにもスカスカ。


 この絵は企画の6月展に出品予定の作品です。これ以上ガッツリ描き込みをしたら暑苦しくて季節感がそぐわなくなりそうだし、同じ理由で重たい色も使いたくない。かといって、当初の案どおり色のグラデとおまけの花びらが飛んでいるだけでは、なんだか寂しいし構図としても上下のバランスが取れないでしょう。

 そんな時目に留まったのが、左下のティーカップを描いたときに引っ張り出した資料写真。いろいろなデザインのティーカップとソーサーが並んでいたのです。


 ティーパーティーなのですから、ティーカップがひとつだけってことはないでしょう。ひとりお茶会もいいけれど、お客様を呼んでの「ティーパーティー」だよね。


 でもただティーカップを描いても面白くないので、某有名遊園地にあるティーカップのアトラクションのように中にキャラを乗せてしまおう、と。



   挿絵(By みてみん)

   「ティーカップの下書き」  よく見るとばらの花やいちごにベリーもあり。



 え~、だって、赤の女王役マオがいるのなら、やっぱり白の女王役ベレゾフスキーもいた方が楽しいじゃん! ベーさんがいるのなら、オーウェンやヨーネル、不遇なリックやマリアとか、エミユに提督がいてもいいよね。賑やかな方がいいわ、マッドティーパーティーだもの――と悪ノリが始まります。


 土壇場での大幅変更ですが、断然こっちの方が「いい!」と思えました。同時に『テスのマッドティーパーティー』というタイトルが決定!



 描き込みはしたくない――はどこへ行っちゃったんだよぉ。(←遠い目……)



 締め切りまで、あと1日。締め日もギリギリまで作業出来れば、もう少し時間に余裕があります。間に合うか、間に合わないか? と思ったときには、もう手が動いていましたとさ。(←目が回っているので冷静な判断が出来ていない!)


 手順は先程とほぼ同じで、原稿にトレペを敷いた上からティーカップのラフを描きます。今度はトレペを原稿の下へ移して、下書きの(ティーカップ)をトレース。それぞれキャラを描き込み、ペン入れします。あとは彩色だけですね。

 簡単です。(←だから……)



 一番奥の背景もグラデーションからを市松模様(英語ではチェッカー盤柄)に変更。ただしキャラ達の邪魔にならないように、ヴィフアール紙の地色オフホワイトと淡いミント系の色で塗って。





 こうして出来上がった、『テスのマッドティーパーティー』。

 ふと気付けば、1枚の画面に14人がいるという新記録を達成! しかも締め切りの前日に、なんとか仕上げ終わりました!!



   挿絵(By みてみん)



 やったね。





   ****





 構図の作り方ということでしたが、加純さんの場合、描いている途中で出てきたアイディアは、その都度取り入れてどんどん変更を重ねていってしまうので、第一稿と完成作品が全くベツモノである……ということはよくあることです。

 臨機応変といえば聞こえはよいですが、計画性が無いともいえますな。アイディアの出し方が連想ゲームですもの。


 イラストって、1枚で伝えなければならないじゃないですか。マンガならひとつの画面をコマで割って、セリフや動きを着けて説明することが可能ですが、イラストは1枚で完結しなければならないのです。


 加純さんの描くイラストは大概はファンアートであったり、自作の挿し絵やキャラのPR絵だったりします。いずれにしてもたったワンシーンで、その物語の世界観や、キャラの魅力を感じていただかねばなりません。そう思うと、自分の実力を顧みず、あれこれとやりたくなってしまうのですわ。(←これが地獄を見るパターン、ね)


 わたしはマンガも描きます。おそらくその影響なのでしょうが、イラストも立ち絵やキャラの肖像というより、(物語の)流れの中のワンシーン――みたいな絵が描きたいのです。

 今にも動き出しそうな……とか、今にも語り出しそうな……とか。単にポージングをバッチリ決めた立ち絵が描けない(←超下手クソ!)だけ、なんですが。

 あれ。そう思うと階層構造とか視線誘導にこだわるのも、その辺の影響なのかな。

 それが上手く表現できているかどうかは、また別の問題としても――ですよ。


 いつも考えることは、観た方が「あ!」と思ってくださるような絵を、楽しいと思ってくださるような絵にしたい、ということでしょうか。



 構図を考えましょうといわれても、なにもないところからは出てきません。だから連想ゲームのヒントになるように、本や雑誌、TVや映画でも「いいな」と思ったものは頭のどこかにインデックスをつけて記憶しておきます。

 それがいつ必要になるかは分かりませんが、困ったときに、唐突に、タイミングよく浮かんでくるのですよ。わたしの場合。


 要はその蓄積した「いいな」が、どこでどう繋がって、どういう経由で転がり出てくるのかということかもしれません。

 それこそ頭の中でぐるぐる回ってミックスされて、



(ガラガラポン??)



 え。まさか3回かけて説明した結論が、コレなの…………。



   挿絵(By みてみん)






 ****





 ――実は、どうしても心残りがあって。

 もうふたり、キャラを追加してしましました。これでこの絵の総人数は16名。さらに記録を更新しました――って、もうこんな手間のかかる絵は描きたくないけど。

 さて、どこに誰と誰が加わったのか探してみてください。



   挿絵(By みてみん)



 考えてみれば、別描きしたものを切り抜いてのり付けしなくたって、デジタル加工すればもっと簡単にリカバリーできるのですよね。

(正確には、アナログで描いた絵をデジタル処理で貼り付けてあります)

 途中経過だって復元出来ちゃうし、デジタルって便利~!!





 加純さん、ちょっとだけテジタル仕様に慣れてきた……かも!?

 




 おまけ!

 クリスタとメリルを描いたから、このふたりも描いてみました。



   挿絵(By みてみん)

(縮小率が不揃いでスミマセン。これ以上縮小しちゃうと色濃度が変化して、絵の雰囲気が変わってしまうので許してくださいませ)



『テスのマッドティーパーティー』は最後の最後までドタバタしてしまい、編集を担当された空乃様には、大変なご迷惑とお手数をおかけしてしまい申し訳ありませんでした。

次回は気をつけます。こんな面倒なことはしないようにします。はい! (反省)


その加えたキャラですが、ティーポットのところに、カフェ・ファーブルトンのフロアマネージャーのロイド・ドゥカブニーとニナ・レーゼンバーグが増えました。

重要キャラですものね。


今回のイラストはこんなにガッチリ解説するつもりが無かったので、途中経過の写メを撮らなかったのです。でも説明していく上で、やっぱり図があった方が分かりやすいので、急遽デジタルで再現してみたのですがどうだったでしょうか?

まだまだデジタル仕様になれないので作業は大変でしたが、面白かったです。でも、なぜかデジ絵は思うように描けないのですよね。

わたしのお絵かきソフトは、当分修復担当なのかもしれません。


それでは、また。




絵×小説×音楽! 創作展覧会 『渚と空のミュージアム ~わたしたちのSTORY~』

 


ぜひ、お越しくださいますようお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] すごいわかりやすかったです! まさかの修正。アナログなのに修正……!すごい。全然、違和感がなかったです。 塗ったらおしまい、もう無理だ……と思っていたので、とても参考になりました(*´∇`…
[一言] デジタルは修復が簡単なのがほんとに一番の魅力ですよね。 私は色センスが無いので、塗った後に直せるデジタルは出来ればものにしたい……のですが、線画時点で泣きを見てるので、昔のように無限の体力と…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ