35. 加純さん、イラストを交換する。(2020 ガッチリ部門編)
長岡更紗様主催『イラスト交換企画』も、残すところあと一部門。いよいよ最後のガッチリ部門へとやって来ました。前回「ぜぇぇぇぇたい手間が掛るので」と言っていたイラストとは!?
ガッチリ部門作品制作ウラ話、田中桔梗様の『恋するプリンセス~恋をしてはいけないあなたに恋をしました~』のエリー王女、登場です。
新規導入したトレース台のお話と共に、どうぞ!
加純さん、ついにトレース台を新調しました。
トレース台とは、絵の原稿を複写するために利用する便利な道具のこと。照明をつけたトレース台に原稿を置き、その上から複写用の紙を重ねると原稿の絵が浮かび上がります。(←もちろん重ねる用紙の厚さにもよる)
そうして浮かび上がった原稿の線をを見ながらなぞっていけば、複写が完成。トレース台を使用することで、原稿に傷をつけず、新しい用紙に描き写すことができます。
アナログ絵描きの便利アイテム。わたしはこの台にでどれだけ助けられていることか。
トレース台の無かった頃は、日中太陽光線が強い時間帯を狙って、窓硝子に原稿と複写用の用紙をテープで重ねて貼り付け透過させるという、原始的な手段を講じておりました。
これ、腕と目が疲れるのよ。夜間は無理だし、家族がいる時間帯はちょっと出来ないの。
でもこれ、絵師あるある。
話を戻しましょう。
今の主流はLEDライト使用で、調光可能な製品。しかも超薄型。USB電源で内臓バッテリーに完全充電すれば、コードレスで6〜7時間使用可。
ところが加純さんが使用しているものはずいぶん前に購入した製品なので、LEDライトでもなければ調光も出来ない(ON/OFFのみ)。コンセントにプラグ差し込まないとライトが付かないアダプタ式で、当然コードレスになんてならない。
しかもライト部分がA5サイズ相当なので、ハガキ大サイズ以上の大きさになると、紙面全体にライトが当たらないのですわ。
カラーなどF4サイズで制作するとなると、複写用の用紙の方が、トレース台より大きくなってしまう。
ので、トレースしたい部分をその都度ライトの当たる部分へと、少しずつ移動させねばなりません。これが問題なんです。
用紙を動かしながらトレースするのは慣れで苦にはならないのですが、問題はメンディングテープなどで用紙を借留めていても移動回数が多いとズレることもあるし、原稿にテープの跡が残る。
もっと困るのは、用紙よりトレース台の方が小型で厚み(約1センチ)があるから、段差で原稿に傷がついてしまうこと。たかが1センチかとお思いでしょうが、これが結構おおごとなんですよ。
作業中右手首が紙面を押して、段差部分に折り目のような傷が付いてしまうのですもの。
哀しいでしょ。
(トレース台、透過の様子)
でもトレース台も(ピンキリですが)結構お高価い!
今あるものが使えなくなったら……とずーっと購入を迷っていたのですが、一念発起して新機種導入に踏み切りました!
そのきっかけの一因になったのが、今回のガッチリ部門のイラスト作成に苦労したこと。
さいわい夫の許可も得ましたから、フリマアプリでお安価く……。ヘヘッ!
続きは後半で!
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交換企画で、クリスタを描いていただきました!!
これがね、とっても美人に描いていただいたの。
★キャラクター依頼内容★
【部門】 ガッチリ部門
【絵師】 堺むてっぽう様
【作者】 加純
【出演作品】 『テスとクリスタ』
【作品URL】 https://ncode.syosetu.com/n5837di/
【ジャンル】 SF
【名前】 クリスタ・ロードウェイ
【性別】 女性
【種族、人種】 人類、黒人系
【年齢】 18歳
【身長】 191センチ
【体重】 64キロ
【髪型・髪色】 クセの強いベリーショートヘア、ブルネット(黒に近い茶色)
【目つき・目の色】 大きくて目尻の切れ上がった、印象的な深緑色の瞳。
【肌の色】 褐色。
【体型】 均整が取れたモデル体型。最近はまっているのがボクササイズなので意外と筋肉質(ただし職業モデルなので、ドレスが似合わなくなるほど鍛えるようなことはプロ意識でしない)。
【服装】 人気デザイナーのミューズ(創作の女神)なので、お洒落な格好が多い。お任せします。
【表情】 喜怒哀楽は、はっきりと表情に表れるタイプ。
【性格】 男前女子。姉御肌で、面倒見がよい。主人公テスのお目付役でもある。
【その他】主人公テスの幼馴染みで大親友。一緒に惑星レチェルのカヌレ総合大学でリベラルアーツを専攻中。ルームシェアメイトでもある。
ひとりでは危なっかしいテスの手を引っ張って面倒を見てきた。親友が能力者だとわかってからも変わらぬスタンスで接してくれるひとり。クリスタ自身は非能力者。
子供の頃からモデルの仕事も熟していたスーパーな女性で、若いながら人気デザイナーのコレクションのイメージモデルに起用されたことから人気に火がつき、現在仕事と学業を両立しつつテスの世話も焼くという超多忙な日々を送っている。
どうです? とっても魅力的なクリスタでしょう。
今年の企画イラストの依頼は、第一話「あたしの秘密とアナタの事情」完結記念で「テスクリ」のキャラたちをお願いすることに決めておりました。ただどの部門に誰を当てるかまでは組み合わせが決まるまで控えていた(得手不得手がありますものね)のですが、お名前を拝見して堺様にはクリスタを担当していただくことにしたのです。
大人びた表情と、瞼のグリーンと目尻に切れ上がるように入った赤のアイシャドウがとってもセクシーなクリスタ。輝くお肌は、トップモデルの自信の現れでしょうか。口角がちょっとだけ上がった艶やかな唇も、彼女の華やかな顔立ちにより「粋」な感じを増してくれているようですね。
ほら、男前女子ですもの。粋と侠気をウリにした、辰巳芸者みたいにカッコいい表情だと思いませんか?
ん、例えがヘン!?
個性的でメタリックなアクセサリーも、彼女の際だった美貌によく似合っていますよね。背景の極彩色にも負けない押しの強さ!
って言うか、この極彩色を使っても負けない堺様の画風が羨ましいッ!! 力強いラインはわたしには真似できない。
上品さとワイルドさがほどよく混じった、そのままナダルの商品PRポスターに使えそうな(ショーウィンドウにこんなパネルが飾ってあったら絶対目に留まるよっ!!)インパクトの強い画です。
やっぱりクリスタ姐さんは、こうでなくっちゃ!
堺様、メチャクチャ素敵なクリスタをありがとうございました。このイラストを思い浮かべつつ、第二話でも彼女を大暴れ(!?)させてあげようと思います。
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イラスト交換企画も、最終段階に入ってきました。
前回のユリウス、構図決定までは悩みましたが作画に入ったら取り憑かれたようにスピードが上がりまして、下書きから彩色完了までわずか3日で仕上げています。
脅威の速さ!! どうした加純さん!?
勢いで11月6日にはテンプレートまで書き上げていますから、予想以上のスピード仕上げでした。いや。あの絵は時間掛けても描けるものでは無く、ホントに取り憑かれた勢いで描けたような作品だったのかもしれません。
あの後、2日ほど脱力していましたもの。
それでも予定より1週間も早くガッチリ部門に取りかかれることになったのです。
やったね!
★キャラクター依頼内容★
【部門】ガッチリ部門
【絵師】加純
【作者】田中桔梗様
【出演作品】恋するプリンセス ~恋をしてはいけないあなたに恋をしました~
【作品URL】https://ncode.syosetu.com/n5896cy/
【ジャンル】異世界〔恋愛〕
【名前】エリー
【性別】女
【種族、人種】人間
【年齢】18歳~20歳
【身長】159cm
【体重】?
【髪型・髪色】#e0c6e1
【目つき・目の色】丸くパッチリ二重。黒目は大きめ。#c07b97
【肌の色】色白
【体型】胸はE(笑)
【服装】ドレス
【表情】清楚系
【性格】自分の非を認め、改めることが出来る。まっすぐで前向き。成長しようと努力する。
【その他】お任せします!
剣と魔法の世界の、王道恋愛ファンタジー。
エリー王女が好きになった相手は、側近のレイという男性。片思いに身を焼く王女でしたが、思いが通じふたりは愛し合うようになります。
身分差のある恋。でもふたりの前に立ち塞がる障害はそれだけではなくて。
国家間のパワーゲーム、悪魔の暗躍。感情の交錯。
やがて大きな秘密がふたりを引き離すことになってしまいます。しかしふたりは、周囲の協力も得て、困難を乗り越えようと努力を重ねますが……。
はっきり言って、大好物です!
もうね、組み合わせが発表されたときに、きっとエリー様の依頼が来るだろうなぁ……って思ったの。
それに『恋プリ』と少女漫画風テイストの絵を描くわたしの組み合わせって、ベストマッチではないかと思われた方も多かったのではないでしょうか? (ありがたいことに、結構そういうお声をいただきました)
クジ引きの神様が、ぜぇぇたいなにか仕組んだのでは? と疑いたくなりましたもの。
主催の長岡様からも期待の声を掛けられまして、もうこれは王道少女漫画風に、ひねり無しでいくしかないなぁと開き直りました。(←なにをやらかすつもりだった!?)
ただ、今回は3部門三作品を描かせていただくので、作風がどれも一緒ではつまらない。タイプの違う物語たちなのですから、少しずつテイストを変えて表現してみたいという欲はありましたけどね。
エリー王女を描かせていただく上で配慮したのは『プリンセス』であること。普通の女の子ではなく、生まれながらにして高貴な身分の、やんごとなきお姫様であることでした。
エレガントで清楚であること。醸し出される気品や優雅さ、華やかさを絶対に描かねばなりません。それと同時に彼女の持つ素直さと優しさ、ひたむきさやしなやかな強さもなんとか表現したかったのです。
以前にもエリー様を描かせていただいたことがあります。(28話 参照)
ただね。あの時は未読のまま、作者の田中様が自ら描かれた挿絵やファンアートを参考に描かせていただいたのですが、今回はちゃんと完読してエリー様のことをじっと見つめてから描こうと決めていました。
キャラデザインはすでに出来ていたので、問題は構図です。物語を読み進めながら、どんなエリー王女を描きたいのか探します。
ご存じだとは思いますが「恋プリ」と略されるこの物語はファンが多く、ファンアートもたくさん寄せられている作品なので迂闊なものは描けませんよね。
ほら、なにせ期待が……。
作品ごとにテイストを変えたいという、加純さんの野望も……。
「エリー王女 牛柄ドレス」
ツイッターで田中様がホルスタイン柄のロングドレスを着せていらしたので、デザインを変えて思い切ってミニドレスにしてみましたぁ~~!
いえ、テイストを変えるって、こういうことじゃないんですけどぉ。
前回お話ししたとおり10月末には別企画に参加しつつ、しっかり部門とガッチリ部門の構図を模索していました。丁度この頃、「恋プリ」の拝読も半ばあたりに差し掛かっていたでしょうか。とあるシーンが心に残ったのです。
エリー王女が自分の未熟さに気付いて、一大決心をするところです。彼女が、人として、大きな一歩を踏み出そうと強い決意を語るシーンでした。
(あ、ここだ!!)
描いてみたいエリー王女のお顔が決まりました。
エリー王女4 ラフ画1
ユリウスにつまずいて(天界様、ごめんなさい)いた加純さんでしたが、エリー王女のラフ画はあっさり描けました。この決意の表情を花と、ちょっとだけミュシャを模した装飾で飾ることに決定したのです。
彼女の優雅さや美しさを引き立てるのに、アールヌーヴォー風、それもミュシャ風の柔らかな装飾って似合うと思いませんか。
覚えておいででしょうか? 昨年のこの企画、加純さんは雨音AKIRA様の『薔薇騎士物語』をビアズリー風(あくまでも「風」ですよ!)で描いたのを。
ならば次はミュシャよね!
――と単純に即決するものですから、後で泣くことになるのですけどね……。(←懲りない)
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11月6日、ユリウスのイラスト完成。
いよいよエリー王女の番です。ラフ画を取り出し、細かい修正を加えていきます。
ラフ画1では王女の後ろに円環モチーフを描く予定でした。ミュシャの女性画の背景によく描かれている、あのサークルみたいなもの、ね。「Q型方式」と云って、ミュシャが考案した有名な構図です。
ですがアナログであれを描くのはかなり困難なので、もう少し簡素なデザインにすることにしました。(←一応トライしたけど心が折れた!)
花でサークルを作ってみるのはどうでしょう? エリー王女を取り巻くように咲く花々。
幸い花を描くのは好きなのです。多少手間は掛りますが、バックに花を背負うのは少女漫画の王道ですものね。でも背負うんじゃなくて、囲まれる方が良いなぁ。
では、どんな花がよいでしょう?
わたしのエリー王女のイメージはマーガレットでした。
しかしそれだと可愛らしさの方が先行してしまいそうです。新しい世界に飛び込み、初めての感情に震える彼女も愛らしいので、もちろんそれでも構わないとは思うのです。
でもね。わたしは王女としての自覚を覚え、自らの足で困難な道も歩む決意を固めた女性としてのエリー王女を描きたかったので、凜としたイメージのある百合の花にしました。
ですのでにっこりと笑った顔ではなく、将来を見つめる意志の強さを少し覗かせ、なおかつその眼差しを向けられた者が心ときめかせずにはいられないような可憐さも(表現できていれば幸いですが……)。
「エリー王女 ラフ画2」
頭の上に乗せる宝冠は国を背負う重責、赤いハートは恋に高鳴る情熱の象徴です。幾重にも連なる宝飾品や大きな袖とリボンのドレス、広がる髪で王女らしい煌びやかさを演出。
エリー王女のイラストのコンセプトは「王道少女漫画風」なので、華やかな雰囲気を大切にしなければなりません。
立ち上がるような百合の花をアンバランスに配して、さらにアールヌーヴォー風の枠も付け足してみました。
華やかさ、マシマシです。
でも背景の配色は、反対にシックな組み合わせにしてみたいなぁと考えていました。「王道」ならパステル系の色を持ってくるべきなのでしょうが、「恋プリ」はもっと複雑な物語なので、あえてそこは外してみたかったのです。
エリー王女は恋に溺れて涙するだけの、儚い女性ではないのですから。
「エリー王女 線画(ペン入れ後)」
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さて、ここで冒頭にて話題にしていたトレース台の話に戻ります。
サークルにするはずだった百合の花なのですが、あの花は垂直に伸びて咲く性質の花だったんですよね。どうにかサークルにならないものかと苦心したのですがイマイチ曲線になってくれなくて、え~いならばっ! とあんな形に。ええ、加純さんの技量不足が原因です。
それでも百合の花はなんとか形になったんです。問題だったのは、その後ろに描いたデザイン枠。
いかにもアールヌーヴォー風に観える、まではよかったのですが、これがとんでもない難関になろうとは!
最初は雲形定規で手書きしたのですが、左右対称にならないんです。そこでサル知恵を働かせました。
別紙にデザイン枠を半分だけ書き、それを左右どちらかの置きたい場所にトレースします。次にその型紙を裏返し、残り半分に同じようにトレースする。デジタル画の「コピー」と「反転」の作業を、アナログでやってみたのです。
理論的には、合っていますよね? 反転させた型紙の(トレース台で透過させた)線を写すのですから、線対称の模様パターンが複写されるはずだったのです。
けれど、残念ながらズレてしまいました。何度かリトライしたのですが、あれがわたしの精一杯。
と云うかリトライは何度でも出来るけど、描いたり消したりと消しゴムをかけ過ぎて、紙の表面が毛羽立ち色が乗りにくくなってしまうのはいただけません。
失敗の原因は、トレース台の上を移動する際に、2枚の用紙をテープで留めているにもかかわらず複写される位置が微妙にズレていく――こと。
さらに手描きでペン入れをしたら、またズレが大きくなってしまったような?
ええ。そんなことしなくてもデジタル技術が使いこなせれば、もっと簡単に描けるでしょう。でも加純さん、アナログ絵描きなの! デジタル技術が使えないの!
せめてトレース台がA4サイズのものならば、ちまちま動かさずに済んで、こんなズレに悩むことはないのでしょうか!?
あまりにも上手くいかないものですから、もう涙が出てきそうでしたよ!
セズシルバス様を描いていたときも、ユリウスを描いていたときも、トレース台がもっと大型……せめてA4サイズだったら(理想はB4だけど)いいのにってずっと思っていたんです。
その前に企画イラストを描いていたときも、テスとクリスタの最終回に載せたカラーイラストをトレースしたときにも、そんなことを考えていました。
それにLEDライト仕様調光調節可能なら、目の疲れも少しは軽減できる、かも?
で、決心したんです。
新しいトレース台を買おう!! って。
娘にも相談してみたんです。
夫と子供達にはカミングアウトしているので、大丈夫。(←さすがにお義母サマには言い難いけど)
「それって、そんなに高価いの?」
「そう。あ、でもね。今フリマアプリで安く出品されているの。だから買いたいなぁ〜……っと(夫の方をチラッ)」
「(あまり興味が無い)そうなの」
「だって……(冒頭の商品説明が続くので割愛)……で、中古じゃなくて新品なの。欲しいなぁ(チラッ)」
「いくらで売りに出てんの?」
「アマ〇ンでお安価くなって3500円くらいの製品が2800円!」
(参考までに。旧型のものは7~8年前に6000円以上で購入しました。もちろんヘソクリで)
「買えばいいじゃん……」
最後の一言は視線に『圧』を感じた(らしい)夫ですの。へんねぇ、そんな『無言の圧力』を掛けたつもりはないのですけど。
ふたり共、わたしが希望しているのは、もっと高額な商品だと思っていたらしい。拍子抜けしたらしく、あっさりOKが出ました。
フリマとはいえ同じ製品でも、出品者や需要の変動によって、お値段が上下するのは市場と同じ。購入後に再びチェックしたら、同じトレース台が倍近いお値段になって出品されていたのを観ました。
アナログ描きが増えているのかな?
新しいトレース台、エリー様には間に合いませんでしたが、「ユリウス4」の作成時に使用しました。
えへッ、やっぱりお道具と畳は新しいお製品がようございますわ!
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話が前後しますが、ペン入れが終わると彩色作業に入ります。
1日目はエリー王女、2日目は百合の花、3日目が背景と、バランスを見ながら徐々に色を入れていきました。
細かな作業が多かったので、少しずつ、無理をしないように進めていく……予定だったのですが、すでにこの段階で無理をしちゃった。
百合の花の彩色、なかなかに手間が掛るので、左側と右側で日程を分けるつもりでいたのです。が、塗り始めたら止まらなくなっちゃってイッキ塗り。
花の数も葉の形も全部違うので、集中力が勝負!
グラデーション作りのために、軽く握った左手の指の間に使用するコピックを1本づつ挟んで準備。取っかえ引っかえしながら、短時間で濃いめの色から薄い色へとインクを重ね塗りしてグラデを広げていくという必殺技をひたすら続けるのです。しかも自分で描いたとはいえ、細かいわ。
「エリー王女 彩色途中経過」
お気づきかと思いますが、このイラスト、白色が占める面積が意外と多い。絵師の皆様には常識ですが白色って彩色が難しいのです。
透明水彩絵の具やインク(マーカーも含む)で彩色する場合、本来、白色は塗りません。塗らずに紙の元々の色を残すことによって、「白」を現わすのです。つまり白を表現する場合は、影の色を着けることによって白を浮かび上がらせる。観る人に、白色を感じさせなくちゃならないのですね。
だからなのか、コピックには白色はありません。黒色は2種類もあるのに。
百合の花、エリー王女のドレス、装飾品の真珠のネックレス――ペン入れしてから「あ!」と思いましたよ。全部、「白」じゃん!!
花とドレスとネックレス。同じ「白」だからといって、全部単調に同じ色で彩色したら絵がのっぺらぼうになってしまう。
ので、微妙に影の色を変えています。同じ「白」でも、よく観察すれば同じじゃ無い。どの白もまぶしいけれど、同じ輝きではないでしょ。白にもいろいろあるんです。
コピックはグレイ色が豊富なので、色見本と首っ引きで、微妙な影の違いを塗り分けていきます。花びらの影、シルクのドレスの影、控えめながらまろやかに光る真珠の輝き。グレイ色だけでなく、青や緑、ピンクに黄色、紫……と、淡い色を足して深みのある白を探していくのです。
シルクのドレスの張りや、真珠の輝き、出ているでしょうか? 特に百合の花は、生命力を感じられるよう気を配ったつもりです。(←至らないと感じられましたら、感想欄にご一報を。修行しなおさねば!)
背景の色も、その白の色を殺さないように。地味すぎず、かといって悪目立ちしないように。そして品良く。
ミスマッチを狙って、スモーキー系の色を選択してみました。なかなかこの色の組み合わせはチョイスしないでしょ!?
それに合わせて、ハートの赤も鮮やかでありながら柔らかな感じに。
全体のバランスを崩さないように、エリー王女の美しさを引き立てるようにと、無いセンスを絞り出しました。
最後にミュシャ風に人物と植物を太い線で囲って……。
これ。コピックの筆で、主線の脇を直になぞりました。手が滑ったら振り出しへ戻る。最後の最後にヒリヒリの一発勝負です。
エリー王女の魅力が少しでも表現出来ていればいいな。
Mission complete!
作品の楽しさに夢中になり、思うままに筆を動かして描いた作品です。快く受け取ってくださった桔梗様に感謝いたします。ありがとうございました。
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頂き物と贈り物の紹介をさせてください。
まずは頂き物。
ちはやれいめい様より、『テスとクリスタ』のテスをいただきました。
テス暴走モード、です。中華菜店『紅棗楼』で、能力が抑えられなくなってしまったテス。その姿を見てしまった……は。
現在、14章-⑨に挿し絵として挿入させていただいております。
ちはや師匠の作品、『眠れる森のおねぇ』 https://ncode.syosetu.com/n3009gq/
なななん様への贈り物、です。
ツイッターで「レミーナのメイド姿はどんなものが可愛いでしょうか」とおっしゃっていたので、イタズラ心で描いて送ってみたのです。それを大層気に入っていただけまして。
そのイタズラ描きを冬服versionにして、リメイクしてみました。
レミーナちゃんの活躍は『謎解きなんて出来ないし、王太子殿下と結婚なんてもっと出来ません!』でどうぞ! https://ncode.syosetu.com/n2102fx/
夏からずっと走り続けてきた反動でしょうか。企画が終わり12月に入った途端、スランプになりました。
これにて今年の『イラスト交換企画』の制作ウラ話は終了。
でも、すでに来年の話も出ています。開催はまだ未定とのことですが、イラストを描いておいでの方、またこれから描いてみたいとお思いの方、参加してみませんか?
そして、なろう絵師の渾身の作品が並ぶ「なろう美術館」。作品展はこちら。
なろう美術館へようこそ!~第一回イラスト交換企画を開催しました~
https://ncode.syosetu.com/n4699fs/
なろう美術館へようこそ!~第二回イラスト交換企画を開催しました~
https://ncode.syosetu.com/n9950gl/
さて、次回は。
……未定です。スランプと腱鞘炎がどうにかなってくれないことには。ねえ!?