31. 加純さん、リメイクをする。
今回もイラスト多め! でお送りいたします。
ふと気が付くと、もう秋も半ば。
体調が安定しないのと、連載をなんとか終了させるのと、企画のイラスト描きに追われている内に、あっという間に10月も終わりです。
そして、また更新が2ヶ月開いちゃった……。
空けないようにしますって、言ったのにね。
でもボーッとしていた訳ではありませんよ。
すっごく、頑張っていました。
マッドサイエンティストの肖像 ツイッターの企画から
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まず『テスとクリスタ~あたしの秘密とアナタの事情』の連載を終了させました。
と云っても物語自体は続いているのですけどね。
それでも、なんとか。
「tess 33」 イメージイラスト。(18章③挿し絵にも使用)
最初の予定通り紆余曲折の末にアレがあそこへと渡り、エンディングへと。(←すみません。ネタバレになるので中途半端な説明ですが……)
自分でもエンドマークを付けられるのかと不安の中書き始めたお話だったので、感慨はひとしおです。
通常のわたしのペースでしたら、きっとまだ後半戦に入ったあたりでノロノロ運転をしていたはずなのに。物語の舞台は初秋からもうすぐ晩秋に入る頃なのですが、その秋に連載終了させることが出来るなんて嬉しいではありませんか。
これなら第二話も書けるかもしれません。ちょっとだけ自信が。
なにせ、ひとに自慢できるほどの「遅筆」ですから!
それもこれも、春先に桜の花とのレースに勝利したことがひとつの転機だったのでしょう。
え、どんなレースだったかって?
それは、ですね。2月の終わりに14章の最後の回を上げたとき、「次回の15章を桜の花が咲くまでに終わらせる!」という、実に大胆な目標だったのです。
もう一回言っておきます。加純さんは、ひとに自慢できるほどの「遅筆」なんです!!
しかし桜の花がいつ咲くのか分かりません。よしんば開花が例年通り3月の終わりだとしても、15章が4回で終わる予定だとしても、自転車操業で執筆していましたから(←今もね)文章書いてイラスト描いてと云う作業を週イチで熟さなければ追いつかないではありませんか。
それに開花予想が外れる可能性もあり、次期が早まったら週イチどころでは到底間に合いませんよね。
「ダリオル通り1」 18章②挿し絵
そも。「遅筆」自慢の加純さんが、なぜこんな無謀な賭けに出たのかといえば、『テスとクリスタ』の後半戦に桜と関係のある人物が出てくるのでそれに合わせる……と云いますか、今年こそはその子に本物の桜を見せてあげたかった、と云う作者ゴコロが働きまして。
そこで散歩コースにあるご近所の桜の樹を競争相手と定め、勝負をすることにしました。
(仕掛けるからには勝ちたい!)
加純さん、意外と負けず嫌いだったようです。
デッドヒートの末、ホントにライバルの桜の木が花を咲かせる前に、15章を書き上げて更新したのですもの。ちゃんとイラスト付きで。
頂き物のイラストにも助けていただきました。けど、自分でも一生懸命描いたのですよ。
――って、これ、イラストのエッセイだよね?
小説、関係なくね? とお思いの皆様。それが「大アリ」なんです。
その後も順調に回を重ね連載は無事終了したのですが、もたもた書く人間が大急ぎで文章をひねり出し、その後あたふたとイラストを描いて更新するのですからどこかに無理が生じます。
余裕が無いから、多少イラストの出来が気に入らなくても描き直しているヒマがなくて、とりあえずそのまま貼って更新した回があるんですよねぇ。困ったことに。
もちろんこれから少しずつ改稿やリメイクしていくのですが、「とりあえず」の修正を参考にした加純さん流の画面構成のこだわりのお話。
イラストを描く際に、どんなところに気を遣って、どこにこだわるのかというお話です。
ああ、前置きが長くなってしまった……。
問題のイラストは、16章⑤。主人公テスが幻影で視た花のトリック(花が伝えたかったこと)に気が付いた重要なシーンをイメージして描いたものです。
まずは修正前。
そして修正後。
修正後のイラストには「夢で視た花」というタイトルもついておりますが、構図自体はそれほど変化はありません。
微妙なタッチの違いは加純さんがアナログ作家で、新しい原稿用紙にペン入れからトーン張りまでオールで描き直したからです。
上半分の配置はほぼいっしょ。不安げに振り替えるテスと百合の花を持つ謎の手。大きく変化したのは、下半分と左上から流れる黒髪のラインです。
修正前の不満点。
描いた当初から左下の人物が描き込まれたコマが気に入らなくて。下書きの段階から何度か描き直したのですが、「正体不明の佳人が楽器を奏でている」という画が上手くまとまらず、どうにも納得出来ませんでした。
そして右下のベタコマ。意味がありません。
下書きでは不自然ではなかったのに、ペンを入れたら桜も梅の花みたくなってしまったし……。
梅の花、嫌いじゃありませんよ。好きですよ。でもね、ここはどうしても桜の花でなくてはストーリーの都合上困るのです。
時間に追われて描いているうちに、「どうにかしたいけど、どこをどうすれば良いのかわからない」状態に陥りました。脳内が飽和状態になっちゃったの。
なにを、どう修正すればいいのか。自分がなにを描きたいのか分からなくなってしまったんです。
もうこうなると一旦頭を冷やすしか無い。悔しいけど、このイラストはこのまま掲示するしかない。でなければ更新が遅れるだけですもの。(←お蔵入りにするという選択肢がなぜ浮かばなかったのか? 一話につき1枚描き下ろしのイラストを付けるというのも、わたしが決めた更新時のお約束。競争のルールだった)
この頃のわたしは、どうしてもストーリーを先に進めたかったのです。
でもね、ずー――ーっともやもやが晴れない。
さらに更新したあと、黒髪を描くべきであった! と云うことに気が付きました。黒髪も重要な鍵なので。
そう思いついた途端、なんとなく光明が見えた気がしたんです。
やはりこれは……。
いつか絶対リメイクしてやる! と決心しました。
実行まで、3ヶ月掛りましたけど。
修正版では、上段の百合を持つ手から下段の楽器を奏でる人物まで、大胆に黒髪を流すという構図に。
画面中央に流動的なベタが入ったことによって、上から下への目線の誘導が出来ました。黒色が入ったことにより淡色で支配されていた画面も締まったし、華やかさも出ました。
同時に意味のなかった右下のコマが、流れる髪の美しさを強調するコマになっています。(わたしの技術不足はスルーして!!)
それに合わせて奏者も右向きからの左向きへ。斜め上からの俯瞰の目線にしてみました。桜の枝で顔を隠すためです。
なせ顔を隠すのか? テスが超常能力で幻影を視た時点では、手の主と奏者が誰なのか全く分かっていませんでした。混乱していた彼女が16章の⑤でようやくその謎の手掛かりを得る訳です。
そのイメージイラストなのですから、ここではまだどちらの顔出しもしない方が良いと考えたからでした。
もっとベターな描き方があると思いますが、今のわたしの実力ではこれで精一杯。
このイラストはここで一旦満足することにしました。だって、まだ描きたいイラストがいっぱいあるんですもの。ここでいつまでも止まってなどいられません。
修正版や追加のイラストは、また追ってお知らせいたしますね。
「トラットリアでの夕食」 18章⑤の挿し絵
さて。こちらは18章トランキライザー・ブルー④の挿入イラスト。
このイラストも重要なシーンで、テスがマオにカフェ・ファーブルトンへ再来店する約束を取り付ける場面です。
幾多のピンチをくぐり抜けホッとした息抜きの場面でもあり、ようやく会話を楽しむ余裕が生まれたテスの気持ちも高揚しているのです。顔を赤らめ両手の指を華やかに広げお喋りに夢中のテス、それを観るマオの黒髪やコートの裾も大きく揺らしてあります。
バックもフワフワと沸き立つようなテスの気持ち、賑やかな街灯りを連想させるようなスクリーントーンを選びました。
アニメと違ってイラストというのは1枚絵です。動かない絵を、観てくださる方にどうやって動きを感じさせるか、いろいろ試行錯誤するのですわ。
ひとつの画面にふたり以上のキャラを描き込むとき、わたしが気をつけること。それはキャラの距離感です。画面に描き込まれるキャラたちがどういう関係なのか、どういうつながりにあるのか。
親子、恋人、友人、ライバル、敵……、立ち位置によって相手との接し方も当然違ってくるじゃないですか。
「テスクリ」を読んでくださっている方はご存じだと思いますが、このふたり、恋人の関係ではありません。なんとなくいい雰囲気ではありますが。
その辺の距離感(近すぎず遠すぎず)と先はどうなるのだろうかという期待感をどう醸し出すか、が問題なのよ!
でもこのイラストを描いたのは18章を書き出す前。大まかに考えていた物語の流れを、どんな風に描き進めていくのかを練っているときに描いたものです。時間の流れ的には、「ダリオル通り」や「tess33」よりこちらのイラストの方が先に描かれているんですね。
わたしはイメージを明確にしておくと書きたい場面がはっきりするので、プロットを書きながらその端にイラストを落書きしたり、書きたいシーンを先にイラストにしてしまうこともあります。
その方が視覚効果で印象に残るので、忘れないんですね。
このシーンは第二話に繋がるので、うっかり書き忘れちゃったなんてことがないようにセリフと下書きをノートに書き込み、さらに先に完成画にまで起こして「早くここまで書こう!」と自分を叱咤激励していました。
このイラストがなかったら、18章③で止まっていたかもしれない。アクションシーンを書くのが苦手だから……。
「懐中時計」 18章⑤の挿し絵
連載終了記念で、トレースから彩色まで2日で描き上げたイラスト。最終回にも挿入されています。
以前、茂木 多弥様にペン入れしていただいた下絵を、わたしも起こしてみました。最終回だったので、気張ってカラー! 秋なので衣裳を長袖のブラウスにチェンジもしました。
B4サイズのヴィフアール紙細目にコピックで彩色。
ヴィフアール紙細目は色鉛筆やカラーインク、マーカーもきれいに発色するし、表面も丈夫なので消しゴムかけてもボロボロにはなりません(もちろん程度にもよる!)のでお勧めです。日本製で、スケッチブックといえば……の有名メーカーの製品。外国製の高級紙に比べ、コスパが良いのも魅力。
たかが紙されど紙で、どの用紙を使うのかも作品の内。アナログの場合、ここの比重は結構大きいです。発色や絵の具のにじみ具合がかなり違うので、凝り出すと止まりません。
それが面倒臭いと考える方もおいでかと思いますが、時に思いも寄らなかった効果を得たりすることもあります。神様がくださった偶然の産物は感動しますよ。
みてみんに画像登録するために縮小したのですが、そのせいなのか原画より色が濃い目に出ています。テスの瞳はもっと淡いブルーで塗ったのにぃ~。クリスタの肌のグラデも境目がぁ……。
何度もやっているのですが、用紙のサイズが大きくなると出来上がりを想定しながら塗らなければならないのが難しいのよ。もっと練習しよう。
その上、ブラウスのデザインが決まらなくて下絵を描きながら別の企画に参加していました。こういうことをやっているから、なかなか終わらないのよね。反省!
でも、面白いか企画があるからつい目移りしちゃう。
この時どんな企画に参加しているのかといえば――。
ツイッターのハッシュタグにあった「うちの子に正直着てほしい衣裳を言ってみてください」という企画。気分転換を兼ねてコソッと参加してみました。
どういう訳か、リクエストが来るんですよね。
落書きクオリティですが描いてみました!
まずは貴様二太郞様から。
これはこの企画のタイトルを観たとき、絶対来るだろうと予想していたのですが、ホントに来ました!
「マオに十二単」
月に帰っちゃいましたものね。(下手くそな文字はスルーして!)
もう一件は、東風様のリクエスト。
「クリスタに近未来的なスマートな宇宙服」
近未来的というか、昔のハリウッドSF映画のコスっぽくなってしましましたが。
どちらも方眼紙にライナーペンで描いています。ベタは筆ペン。
ざっくり描くときはコッチです。
それから。ツイッターで天界音楽様が主催している「線画にする企画」。
他の絵師様が起こした線画に、ペンを入れさせていただくのです。最初はペンのタッチの違いを楽しんでいたのですが、だんだんもっと自由に大胆にアレンジを楽しむようになってきました。
例えば、
貴様二太郞様の下絵にペン入れさせていただきました。
ナムサン・ブシドーです。
手元に下絵が残っていないのですが、ナムサンはイジっていません。下絵にほぼ忠実にペンを入れています。貴様さまに「タッチは加純風だ」と言われましたが。(←丸ペンで入れたからでしょうか?)
イジったのはバックの背景。製図用定規で円を、雲形定規で効果線を引きました。
カッコ良く、ヒーロー登場!! っぽくしてみました。
手に入れたばかりの定規を使用してみたくて。でも慣れていないのと、ライナーペンの状態が悪かったので線がギタギタです。すみません。
ツイッターに流したところ、いろいろ物議を醸した1枚ですが、わたしはこの絵を描きたかったんだもーん!
貴様さま、楽しく描かせていただきました。ありがとうございます。
下書きを写したわけではないのですが。(上記の企画とは別です)
こちらもオリジナル絵からポージングをコピーしてアレンジした1枚。
さば・ノーブ様の『機動女神エターナル・レッド ケモ耳ニャン子は俺の女神様?』よりアリシア。
https://ncode.syosetu.com/n1883gf/
損な子アリシアちゃんですが、戦う女神らしくカッコ良くしてみました。
さば様、ありがとうございました。
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頂き物のイラストをご紹介します。
九藤 朋様から。(https://mypage.syosetu.com/476884/)
このイラストには『逃避行』という素敵なタイトルがついています。
『テスとクリスタ』のテスとマオ。18章①、クラビエデス通りの裏路地を走り抜けようとするふたり。ふたりの背景がね、わたしが描いた「裏路地」(前回に掲載)のイラストを引用してくださっています。えへ。
この柔らかなタッチと色合い、どうしたら出せるのでしょう?
九藤様、ありがとうございました。
天界音楽様から。(https://mypage.syosetu.com/768671/)
白いドレス姿のクリスタです。貴婦人らしくて優美ですね。
いつもどちらかと言えばボディコンシャスなデザインのドレスを着せてしまいますが、こんなクラシックなドレスもお似合い。さすがトップモデルだ!
天界音楽様、ありがとうございました。
さば・ノーブ様から。(https://mypage.syosetu.com/795365/)
これも物議を醸した1枚。このイラストから「テスクリ」のSSが生まれました。
大事なことですから、もう一度言っておきます。
マオは壁ドンしていないから!!
さば様、ありがとうございました。
え、あのイラスト? アレはSSだけのマル秘だよぉん。
さて、次回はお待ちかね。
イラスト交換企画、お気軽部門の作品制作ウラ話。
ごんたろう様(https://mypage.syosetu.com/112394/)の『2代目勇者の災難』(https://ncode.syosetu.com/n7952p/)より、魔界の宰相ウィーズ・セズシルバス様のご登場です。
今度こそ、2ヶ月も空けないからね!
ここ2ヶ月ほど『テスとクリスタ』の更新に掛かり切りになっていたので、すっかりエッセイの方はご無沙汰になっておりましたが、おかけでイラストの方は溜まりました。
まだまだ在庫はありますので、少しずつ放出していきますね。
イラスト交換企画、今年も気合いを入れて臨んでおります。
どうぞ次回もお楽しみに!
それでは、また。