26. 加純さん、骨を語る。
医学とか、考古学のお話ではありません。
あくまでも、「お絵かき」のお話。
イラストを描き始めた頃は、かわいい女の子を描きたかったかと記憶しています。
遙か昔のことなので……。(←遠い目)
絵本で見た昔話のお姫様や、大好きだったマンガに出てくるような、かわいい女の子です。(←たぶん)
鈴藤美咲様『コラボノストア』より、カナコちゃん
それがそこそこ描けるようになると、友人からマンガを描かないかと進められまして。
若気の至りと申しますか、たいして深く考えもせず、好きな作家さんの見よう見まねで描き始めたのですが、すぐに壁にぶち当たりましたね。
ストーリーやコマ割りを考えるのも大変ですが、それ以上に困難だなぁと思ったのは、人物の描き分けでした。
鈴藤美咲様『コラボノストア』より、カナコねずみとテス
女の子なら、描けるのです。その延長で、若い女性もなんとか。
でもね~、その先が上手くいかないのですよ。
少年はなんとなく誤魔化せるのですわ。
少女の身体付きを少し骨張らせれば、それとなく見せることが出来ます。肩の張りや、首の太さ、立ち方や身体のラインから丸みを減らしてその分頑丈さを加えればいいのかな? と思っていました。(←当時は)
少年がそれっぽく描けるようになると、今度は若い男性。この頃になると、一応人体図なども参考にするようになりまして、男性と女性の身体のつくりの違いというものを意識するようになりました。
骨格が好きになったのも、この頃でしょうか?
……って、いきなり骨格が好きってなんだぁって思いましたでしょ?
ミケランジェロの彫刻より、ガンダーラ美術の傑作ラホール美術館蔵の釈迦苦行像の方が好き!――なのは許してください。と云うことなのですが。
ますます謎ですね。
このお話は、後半で。
話を戻しましょう。
マンガには多数のキャラクターが混在しますから、性格や性別の違いも描き分けねばなりませんが、年齢の違いも描き分けねばなりません。
さて、絵師の皆様。
ここで、また、大きな壁が出現してきませんか?
年齢の違いを描き分ける――と云う壁です。
少年、青年、中年、老年、どうやって描き分けていますか?
人間、年齢を重ねれば、皮膚が弛みシワが出てきます。じゃあシワを描き足せば、年齢を重ねた風貌になるのか。
これが、ならないんだなぁ。
もちろんシワが描き込んであれば、シワのある年齢層の人間だと、ご覧になる方も考慮してくださいますでしょう。
でもね、目元口元にシワを加えただけだと、なんだか陳腐なのですよ。コントのメイクみたいで。
無理矢理の老け作り。違和感、ありあり。
極端にデフォルメした絵ならかわいいおじいさんおばあさんになるのですが、リアル感を出したいとなるとしっくりしなくなってくるのです。
美人を老けさせるのは神経を使うのですよ。
では、なにがおかしいのでしょう。
シワって、肌のたるみですよね。肌に張りがなくなって、重力に負けて下方に移動していく。
ほら、化粧品のCMでもよく言っているでしょう。肌の張りピン! とか。
鏡の前に立って、ご自分のお顔をよく見てください。
(明るいところで、ドレッサーとか姿見とか大きめの鏡がオススメです)
こめかみの辺りに指を置き、そのまま上に持ち上げてみましょう。顎の辺りがすっきりとしませんか。小顔になって、若返った気がしませんか。
これです。
この万有引力の法則に抵抗しきれなくなった皮膚の下降を描かないと、単なるシワ線の追加になっちゃうんです。
それと、小顔になると若々しく見える。つまり若い頃より顔が大きくなっているってことですよね。
なぜ? 頭蓋骨って(年齢や環境によって)膨らむんですって!
さらにおでこ(前頭骨)が前に突き出て下がってくるとか。これがシワや眼の窪みやクマの原因らしい。顔の左右に差が出てきてアシンメトリーになるのも、老け顔の一因だそうです。
あとね、年齢と共に、顔の下半分がどっしりと重く見えてくる。エラが張る、といいますね。これも骨格の歪みや噛み癖が原因らしいです。
生活習慣による変化、それだけ年月を重ねたってことでしょうか。
つまり。これらを描き込むことが出来れば「老け顔」が完成すると云うことになりませんか?
理論的には、間違ってはいないと思います。
けど実践は難しい!!
だってキャラクターとなると、「老け」だけでなく、そこに「性別」や「個性」も入れていかなければなりませんからね。
鈴藤美咲様『コラボノストア』より、バース&アルマ
それに1枚絵に仕立てるとなると、そこに胴体も付いてくる。
骨の歪み、肉の付き方、キャラクターの性格やら人生やら役割によって、千差万別ですよ。顔の造形より、もっと選択肢が増えてくるでしょ。
ヘアスタイル。これで高感度が左右されることも多いってこと、知っています?
さらにファッション。なにを着せるかによってもイメージ変わってきますから、ここ大事ですよ!
キャラの全身図を描くのって、意外と骨が折れます。(ポキッ!)
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2月9日に長岡更紗様主催『肉の日マッスルフェスティバル企画』が開催されました。
告知は昨年末に拝見しておりましたが、今回の企画は見送るつもりでいました。だって、筋肉イラストなんですもの。
昨今は『筋肉』がもてはやされているようですが、先にも言ったとおり、加純さん『筋肉』より『骨格』の方が興味あるのですよね。
学校の理科準備室に飾ってあった筋肉構造模型と全身骨格構造模型だったら、欲しいのは絶対後者!
だから、ダビデより苦行像になるのですが。(←まだ言ってます)
昔から、ムキムキ派にはそんなに興味ないのです。
いや、むしろ、なんだか怖い。
絵を描く資料として解剖学的な興味はあるのですが、それ以上は気持ちが盛り上がらないので、これは他の参加者の皆様に失礼だと。
でもね。いつまでも出来ないやらないってのも、つまらないじゃないですか。もしかしたら、食わず嫌いかもしれませんしね。
せっかくの機会ですからトライしてみたいなぁ、という気持ちも半分あったのです。
1月に入り、加純さんは『ヒノサククニⅡ』のFA制作に追われていました。
しかも1月は何をとち狂ったのか、その他にもFAやら挿し絵などを描きまくっていました。(前話参照)
結果2~3日に1枚を仕上げるという、加純さん史上最速のスピードで描き続けていたのです。
(大丈夫か、わたし……?)
マジ、心配になりました。
月半ばに差し掛かる頃、なじみのユーザー様のかっぽうに『肉フェス』の文字をたくさん見かけるようになってきました。
素敵なバナーも、です。
それを見て、「楽しそうだな~」と思っちゃったんです。
でもね。お祭りに参加する方々は、筋肉が大好きな人ばかり。筋肉を語らせたら、熱く持論を展開させる方々ばかりなのです。
その中に飛び込むなんて、勇気がいるではありませんか! しかも、こちらは筋肉絵初心者。
Wordで「筋肉」って打ち込んだら、「菌に句」って表示されるヒトですよ。いかに筋肉に関心薄いか、見て取れますでしょう。
ム~リ~。
さんざん悩んでいたのですが、FA制作の合間に書いていた『混沌の淵に潜む竜は永久を嗤う』のSSが仕上がり、その挿し絵を描いていたときコロッと気持ちが変わりました。
このイラスト、ね。
これを描いているとき、なんとなく「描けるかも?」って思っちゃったんですよ。(←もちろん思い込み!)
ならばちょこっと描いてみようかな……、と。
ダメなら、参加断念する立派な(!?)理由になるのだから。
いつまでもグジグジ考えているのも、嫌ですしね。やるだけやってみましょう。
落書き帳にシャーペンで。
(いや~、ムリ、ムリ、ムリ…………)
筋肉の図解イラストを参考にしながら、さらにペンを動かして。
(ム~リ~……)
あれ。なんとなく描けたけど、これでいいのかな?
……これって、細マッチョに分類されるよね。
じゃ、ムキムキ派のマッチョって描けるのかな?(←完全に調子に乗っている)
で、もう1枚、試し描き。
……これで、大丈夫なのだろうか??
まあ、初心者だし。若葉マークの代わりに、バックにひよこでも描いておこう。
あとはSSを書いて、テンプレート埋めれば……そんな軽い気持ちで参加してしまいました。
ですからあのテンプレの回答、決してふざけていたわけではないのですよ。
案の定フタを開けてみれば、参加者の皆様は、筋肉愛をメーター振り切るくらいのボルテージで語っていらっしゃる! いたたまれない気分に押しつぶされそうになったのは、言うまでもありません。
お祭りだから、こんなのがひとりくらい混ざっていてもいいかなぁ……なんて軽い気分で手を出した加純さんが軽率でした。
(反省!!)
だから!
もしかしたら、筋肉絵はこれが最初で最後になるかもしれない。
超、レア!
そんな気持ちでいたのですが、意外にも好評でした。これまで発表していなかったから、物珍しかったのかもしれませんね。
一応、新境地と言うことで。
チャレンジ精神だけは認めてもらえただろう(←たぶん……)
ですがオーウェン&ヨーネルコンビは、『テスとクリスタ』の本編挿し絵用にもう1枚描いています。
なんだかこのふたりを描いていると楽しくて。
リクエストがあったので、このキャラも描いてみました。
クリスタの場合、職業がモデルなので、筋肉をがっちり付けてしまうとお洋服が似合わなくなってしまいます。
プロ意識の高い彼女のことですから、その辺は気を使ってほどほどにしているでしょう。それにこれ以上筋肉が付いたら、長いランウェイではなく、四角いリングに上がっていそうな気がしません? (←詳しくは本編にて)
衣装の点描はわたしがトントンしましたが、バックはスクリーントーンです。
* * * *
ああ、それで筋肉が好きになったかって!?
描くのは楽しくなりました。
でも――、
まだ骨派です!
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最後に、『螺旋のきざはし』を執筆中、hake様よりの頂き物。
https://ncode.syosetu.com/n1233ep/
ツイッターの「フォロワーさんのオリキャラを描かせてください!』という企画に応募して描いていただきました。
春風の様な透明感が、とっても魅力的なイラストです。
どうしたらこの透明感が出せるのでしょう?
本当にありがとうございました。
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そう言えば。
春の憂鬱と共に始まったこの連載も、そろそろ3年目に突入するのです。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
さて次回は……。
春先の偏頭痛のおかげで、思うように絵も描けません。
今のところ、ノープラン!