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加純さんのお絵描き録  作者: 澳 加純 
1. ツイッターにイラスト上げてみようかと思います!?
20/94

20.  加純さん、「季節外れ」に苦労する。

「みんなの画集」参加作品の登場です。

 まずは贈呈したファンアートの紹介を。


 なななん様『白陽国物語~蕾と華と偽華の恋~』から。

 https://ncode.syosetu.com/n8370ed/

   挿絵(By みてみん)

      「偽華(緑栄)と春華」


 中華風恋愛ファンタジー物語も大詰めに差し掛かってきました。皇帝の側近にして「偽華」の恋は、大きな陰謀と気持ちのすれ違いで進展ままならなかったのですが、このままではいられないと周囲を巻き込んで動き始めます。

 想いあっているのに、事情がそれを許さない。それでも熱い思いが抑えきれなくなった瞬間……。

 もうもう、このシーンは読んでいてポンと情景が浮かんできました。「しのぶれど」の恋人たちをどうしても描きたくなってペンを取った一枚です。緑栄推しとしては、描かない訳にはいかない!


 さて。このシーンの重要な鍵ともなっている格子。右から左へと単調に同じものを描き続けているうちに、訳わからなくなっちゃって、ベタを塗るところを確認しながらの作業でした。


 モノクロ画は難しいです。白と黒の世界に、どれだけ色や空気の匂いを感じさせることが出来るのか? 毎回、試行錯誤の連続です。みやびな白陽国の雰囲気が、少しでも描けていれば幸いなのですが。

 なななん様。今回も、ありがとうございました。



 もう一枚。モノクロ画です。

 こちらはトトさまの「サザンの嵐・シリーズ」より。ノアールです。

 https://ncode.syosetu.com/n2599ca/

   挿絵(By みてみん)

 勢いで描いたものですが、加純さんはシャー芯の黒鉛の色が好きでして、あえてこの色で描かせていただきました。だって、ノアールのやさしい雰囲気には、インクのブラックよりこの色の方が似合うと思うのですもの。

 トト様、ありがとうございました。





   挿絵(By みてみん)

     「ある少年の横顔 1」  (ツイッターにUPした落書き)



 * * * *





 ファンアートといえば、こんな事を始めています。覚えておいでですか? 前回のラストに滑り込みで挿入したイラストを。




 事の起こりはツイッターで拝見した、とあるつぶやき。

 つぶやかれたのは東風さま。「なろう」でもツイッター上でも親しくお付き合いをさせていただいている、お心の広いユーザー様でございます。


 その東風さまが、ある日ツイッターでこんなことを申されていたのです。


「今朝唐突に降りて来たんだけどさ。

 面接官と面接に来た人の恋愛物。面接に来た男の子は、髪の毛で目が隠れていて、トレーナーにジーンスなんだけどよれよれで、話し方もぶっきらぼうで、面接落とされちゃうのね。

 面接官が「今日は収穫無かった」って帰る道すがら、その男の子を見つけちゃう。

 (中略)

 面接官、実は「不憫萌え」でさ。そんな恰好じゃ能力高くても面接受からないぞって説教始めて……短期集中面接講座をしちゃうの。

 マイ・フェア・レディみたいに、これなら面接で絶対に取りたいと思われるような人材に、育成するのね。

 その間になんやかんやありまして、急速に近づくふたりの距離……。(略)」


 こんなきっかけで始まる物語。

 男の子は20歳、面接官は30歳くらい。年の差カップル。この時にはまだ面接官の性別が決定していなくて、まず面接官の性別を決めるアンケートが流れて来ました。


 面接官が男性ならBL、お姉さまならNL。


 多数の意見により、ここはNLが勝利を収め、お姉さま面接官とワンコ青年の恋物語となったのでした。あ、わたしもNLに一票投票しましたよ♡(←凶悪?)


 さらにその翌日、物語の構成のプランのうつぶやきが流れてきて、同時に物語のタイトルを募集していたのですよ。東風さま、かなりこの物語の執筆に乗り気のようです。

 日ごろ大変お世話になっております。ここは加純さん、微力なりともお助けせねばなりません!


 そこで頭にポコンと浮かんだタイトルを返信リプライしたら、(仮)と云う条件で採用されちゃいました。

 それが『(仮)あのコに首輪をつけてみたい♡』なのです。


 ツイッター上での会話は一端そこで途切れたのですが、煽った以上、少々責任を感じました。でもそんなときわたしに何が出来るかと云えば、絵を描くことくらい。

 ですから「応援しています!」の気持ちを込めて、東風さまが語られていた大まかな設定情報をもとにキャラを勝手に創作し、イラストにして、数時間後にツイッターに流しておきました。それが、前回掲載したイラストです。(注:良い子はまねをしてはいけません)


 カメより鈍い歩みの加純さんが、どうしたことでしょう? ええ。応援の気持ちに、微量の悪戯心が働いたのは認めます。


 でも、浮かんじゃったんですもの。


 あの構図が! キャラクターたちが! 


 これはもう描かずにはいられない、じゃありませんか!?


 案の定……と申しますか。あれをご覧になった東風さまから「ま? マジっすか!?」のお返事(リプライ)がありました。まぁ、物語書く前にイラストが出来上がっているのですから、そうも言いたくなりますか。(注:絶対に良い子はまねをしてはいけません!)



 その後キャラの名前が決定。


   挿絵(By みてみん)



 だいたい5話くらいの短編でムーンライトノベルズに掲載予定になるということでしたから、キャラの造形も少し大人っぽく(当社比)してあります。

 美都さんは年上のお仕事が出来る女性、康介君はワンコのイメージ()()で創作したキャラなのですが、後で聞いたところ、東風さまの康介君のワンコイメージはアメリカンコッカースパニエルだったとのこと。

 秘かにゴールデンレトリバーでなくてよかったと、加純さんはホッとしましたとさ。


 この押しかけコラボ、その後も順調に進んでおりまして、ツイッター上では時折り「#面接官とワンコ青年」で進行過程のつぶやきが流れます。こんなイラストも流れます。


   挿絵(By みてみん)

      「突然の……」   ペン使用


 リアルタイムで進む制作過程を楽しむのも一興かも。

 かく言うわたしも、美都さんと康介君の恋の成り行きは、大まかなあらすじと役得で先読みさせてもらった一部しか知らないのです。


   挿絵(By みてみん)


 ハピエンのはずですが、どうなるのでしょう?

 UPをとっても楽しみにしている作品なのです。


   挿絵(By みてみん)








 * * * *






 ちはや師匠の企画、『みんなの画集』。

 絵師9人の夢と希望と作品が集まって、堂々完成いたしました。

 手元に届いた時のワクワク感、表紙を開く時のドキドキ感、得も言われぬ瞬間でした。ご覧になった方はご存じのことですが、個性豊かな絵師たちの魅力溢れる作品が並びます。


 その真ん中あたりに、加純さんの作品がお邪魔させていただいております。


 提出したイラストは画集オンリーの予定だったのですが、ありがたくも「観たい!」と云うお声がありましたのでこちらでも公表することにしました。


 実は前回のラストを飾ったシュークリームのイラスト、あれも画集の寄せ書き用に描き下ろしたものです。

 なぜにシュークリームか。

 それは描きたかったから、食べたかったから――としか……。


 こほっ(咳払い)。

 尊いシュークリームへの愛は横に置いておきましょう。



 加純さんが画集に寄せたイラストは、2枚。

 完全描き下ろし作品と、途中で筆が止まっていた作品に加筆したもの(ほぼ描き下ろし作品)です。


 今回の企画に参加するにあたって、せめて1枚は新作を発表したいという気持ちを強く抱いていました。

 もちろん2枚描き下ろすことが出来ればそれに越したことは無いのですが、なにせ加純さんは進行が鈍いので、まずは1枚目を仕上げることが肝心肝要なのです。そして、万がいちの備えも計算に入れておかねば安心していられません。

 最初から最悪のパターンを想定するのかとお叱りを受けそうですが、備えがあるという安心感は心強いものです。それに、これはあくまでも「最悪のパターン」の予備。


 ぜぇ~~~~たいに(1枚だけでも)描き上げてみせるんだから!! とこの時、気合いだけは満々でした。


 過去作から選ぶ手段もありますが、それは最終手段に。

 1枚はすでに途中まで描き進めてあった『テスとクリスタ』のイラストを出すことにしました。


 ホラ、代表作ですし。


 可愛い女の子たちなので、見栄えもするし。華やかだし。


 いいことづくめ、でしょ。(←と、無理矢理納得させる)


 という訳で、まずは賑々しく3人娘たち。テス、クリスタ、メリルです。


   挿絵(By みてみん)


      『Heartmarkでkeepout』   コピック マスキングテープ使用


 華やかな彼女たちを、個性豊かに描くのはとても楽しいのです。





 さあ、もう一枚。なにを描きましょうか?

 頭の中ではあれも描きたいこれも描きたいと候補はたくさんあるのですが、実際に描きはじめるとどれも構図が上手くまとまらない。あれこれ数枚描いてみたのですが、どれも気に入らないと言いますか、途中でペンが止まっちゃうのです。


 なぜか?

 理由は簡単。気負い過ぎなのです。


 なんたって、憧れの画集です。印刷物ですよ。

 お金を払って購入してくださるのです、納得のいかないものを提出するわけにはいかないわ。……なんて考えてしまったものだから、身動きが取れなくなってしまいました。

 それでも締切にはまだ間があるから……と悩んでいるうちに、ふと気が付くとカレンダーは8月に変わっているではありませんか!!

 さすがに焦ります。


 そして、ここから七転八倒が始まりまるのでした。





 悩んでいるときって、なにをやっても上手くいかないものなのです。

 これが、まあ、面白いほど描けなくなくなりまして。

 仕方がないので、先にイラストを描く紙を探し始めました。(←末期状態だ!)


 ケント紙、ヴィフアール水彩紙、ワトソン紙、マーメイド紙……いろいろ物色しているうちに面白いものを見つけました。長期お絵描き休眠期間中に、「いつかいっぱいイラスト描いてやろう!」と夢見て購入しておいたキャンソンボードです。


 キャンソンボードと云っても、なんのこっちゃ? ですよね。これは中目のキャンソン紙を1ミリ厚の台紙ボードに張り付けたもの。キャンソン紙と云うのは多孔性の紙肌(表面がポコポコしている)で、水彩絵の具やカラーインクの発色に優れた特質をもちます。


 何年も仕舞いっ放しになっていたこのボード、いつまでも本棚の肥やしにしておくことはありません。腐ることは無いですけど、いつまでも在庫のままではかわいそう。

 しかも特質がカラーインクに適しているのならば、コピックだって大丈夫でしょう。


 ――と。B4サイズでグレー地のこのボードに描くことを決めたら、なんとな~く、もわもわっと構想が浮かんできたのです。


 その時、2019年8月5日。締め切りまで、あと10日。


 頭の片隅で、ちはや師匠に土下座して締め切りを伸ばしていただく事案も考えつつ、決戦に臨もうとする加純さんでした。(←なんのこっちゃ?)



 翌6日に下書き、7日には彩色を始めました。とにかく時間がありません。翌週にはお盆休みもあります。すでに予定が入っていて制作に時間が取れないのはわかっていましたから、どうしても今週中に完成させなければならないのです。


 家族がいない時間に(在宅していると、どうしても集中出来ないので)、クーラーで涼を確保しつつ、お絵描きのお道具一式(コピックなど)をテーブルの上にずらりと並べると、熱中症対策の大切な水分コーヒーとジャスミン茶もその脇に確保。「いざ! 戦闘開始」とBGMに乗って、ちまちませっせ……とペンを動かすのでした。


 ザッと下書き(時間が無い!)をしたら、ミリペンのクールグレイ色とウォームグレイ色を使って清書します。今回は人物が青味の強いクールグレイ色で、桜を温かみのあるウォームグレイ色で描きました。いつもは人物をウォームグレイで描くことが多いのですが、ちょっと雰囲気を変えようと思いまして。


 人物と衣装にある程度色を入れたら、バランスを見ながら桜の着色を始めます。背景ではありますが、今回は人物より桜の方が比重が大きいので、同じ桜の花でも、場所によって微妙にクラデーションを変えるという、時間が無いということをまるで無視したかのような無茶をしております。

 並べてみるとこんな感じです。


   挿絵(By みてみん)


 しかーし! この猛暑の中、どーして桜なのでしょう。季節外れも甚だしいと文句を言いながら、とにかく色を入れていきます。季節も外れていますが、それ以上に「やっちまった」感を重くしたのは、この花の咲き方の特徴でした。

 桜って群れて咲いているのですよね。そう、一輪描いて終わりじゃないのです。桜はひとつの花芽から複数の蕾が付き、花柄と呼ばれる軸が伸びてのちに花開くのですよね。それが枝枝に無数についているのですから……。

 いくつ描けばいいのよーーーー! な状態になるのです。


 時間の無い時に限って、なぜかこうなる。しかし今更「花」の変更は出来ない。だって、そのイメージで構図を組み立てちゃったんですもの。

 泣き言を言っている時間ももったいないので、コーヒーとジャスミン茶とBGM(ハードロック)を戦友に、桜と格闘を続けるしかない加純さんなのでありました。


 人物と桜の花はコピックで着色していますが、闇はパステルを削ってパウダー状にしたものを、指で塗りつけるということをしています。キャンソン紙の表面が凸凹しているという特徴を生かしたいし、春の闇の柔らかさと桜の華やかさが融け合ったような空気感を匂わせてくれることを祈って。


 火事場のなんとか、でしょうか。人間その気になれば、無茶も無理もなんとかするものです。

 上のスリーショット、一日でこなしました!! 「自分で自分を褒めてあげたい」な気分でした。



 翌日色の調整を行って――はい、完成!!


   挿絵(By みてみん)



 タイトルは『un secret~桜闇~』。


 「アン スゥクレ」と読みます。フランス語で「秘密」、「(謎を解く)鍵」などを意味します。

 描いている途中で、タイトルが浮かんできました。どうしてフランス語だったのかな~と不思議だったのですが、そういえばキャンソン紙ってフランス製だったのですよね。(笑)

 関係があるのかどうかはわかりませんが、ここは「ア シークレット」ではなく「アン スゥクレ」でお願いします。


 台紙自体にグレー色が入っている為なのか、着物の柄の(これもやっちまった感に苛まされたわ)のおかげなのか、どことなくレトロ感まで漂う作品になりました。

 原画だと彼の髪の色はもう少し淡い色目なのですが、UPしたらロイヤルブルー色が強めに出てしまったのが残念。

 まあ、終わりよければすべてよし! ということで。



 実際には、この画を描き終えてからテスを仕上げ、その後にシュークリームを描いています。ですから、半端なく焦っていた気持ちも想像できますでしょう。

 なにはともあれ、締め切り直前にすべてを提出し、脱力したのだけは覚えています。

 梅雨時期に十二単姿を描いた時も「おばかだ」と思いましたが、酷暑の最中の桜もハードなものがありました。

 やっぱり季節感は尊重しなければいけないのでしょうね。


 移りゆく四季の中で暮らす日本人ですから。



 挿絵(By みてみん)

     「ある少年の横顔 2」   (ツイッターにUPした落書き)



次回も企画参加作品。……の予定。

まずイラストを描き終わらなければ更新できない、の。

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― 新着の感想 ―
[一言]  画集おめでとうございます。  つぎは、オムニバスでなく、ソロでの作成に欲が出て来そうですね♡
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