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十七夜

 

「今日はどこ行くの?」


「今日はギルドに行く予定。もしかして、ついてくるのか?」


「そうだよ?お兄〜ちゃん」


「まあ、別にいいけど、おとなしくしているんだぞ。でなければ留守番だ」


「もう、お兄ちゃんは心配性だな〜。そんなにわたしのことが気になる?ねえねえ!気になる?」


「はいはい。じゃあさっさと行こうかな」


「あ!ちょっと待ってってば〜」
































「二人目の妹さんですか。ふむふむ、これはこれは」


「あの、セレスさん?」


 俺とサリィはギルドで依頼を受けるべく、セレスさんの元を訪れていた。

 最早セレスさんの常連となっている俺は、顔を見せるや否やセレスさんに繋いでくれる。

 こちらとしては手間が省けて非常に大助かりである。

 まあ、星将会のメンバーということも少なからず関係しているのだろうが。

 しかし・・・やっぱりセレスさんってロリコンなのかな?

 以前クーネを連れてきた時も、やけにニヤニヤしながら舐め回すように全身隈なく観察していたし。

 今回も同様、サリィがその餌食となっている。

 さらに今回からお触りタイムまで追加されている。

 サリィは別になんとも思っていないのか、されるがままになっているけど。


「それで、依頼の件なんですけど・・・」


「ああ、それならシステリアさんにもってこいのいい依頼がありますよ。通常、この手の依頼は星将会メンバーでないと受けさせることができないのですが、会員となったシステリアさんなら問題ないですね」


「この手の依頼、とは?」


「護衛依頼のことですよ」


「護衛、ですか?」


 え、星将会メンバーのみが受注可能な依頼がまさかの護衛?

 そんなの、うちのメンバーなら誰でも引き受けられると思うんだけど?

 そんじょそこらのギルドと違って、辺境の強力な魔物とドンパチして儲けている連中だよ?

 いくら会員ではないとは言え、一般的な冒険者よりも遥かに優れているはずだ。

 それなのに、なんでわざわざ会員メンバーだけ?


「んー、その反応だと知らないみたいですね。でも狩りを中心に活動してきたシステリアさんにとっては、護衛依頼というのはあまり馴染みがないですよね。」


「すみません・・・」


「いえいえ、システリアさんが謝るようなことではないですよ。そうですね、まずは護衛依頼について簡単に説明を・・・と言いたいところですが、その前に一つわたしから依頼をお願いしてもいいですか?」


 セレスさんが依頼を?

 どんな依頼なんだろう。


「これをある人物に届けてほしいのです」


 そう言って差し出されたのは、薄汚れた一冊の魔導書(グリモワ)だった。


「それは別にいいですけど、いったい誰に?」


「エントワ学院序列第一位、ヴィエラ・ルシファーのお兄様である、シン・ルシファー様にお渡ししてほしいのですよ」


 ヴィエラちゃんのお兄さん?

 え、それってこの世界の頂点、つまり最強の人物と顔を合わせるということになるのか。

 ん?世界の頂点、最強の人物・・・。


「わかりました。それで、そのシン・ルシファーさんはいったいどこにいらっしゃるのですか?」


「それはもちろん王都ですよ。ここから三日、遅くても四日ほどはかかりますが、道中はきちんと整備されているので、問題ないと思います」


 うん、まあこれは聞かなくても良かったかな?

 なんとなくそんな気はしていたし。

 でも王都か・・・。


 それと、身分証は必ず持って行ってくださいね?小規模な村や町なら兎も角、国のように規模が大きくなれば必要になってきますから」


「わかりました。えっと、セレスさんの依頼もそうですけど、護衛の依頼は?」


「ああ、そうでしたね。では、依頼内容の前に説明を。まず、護衛依頼というのは信頼と、確かな実力が求められるものです」


 まあ、そりゃあそうだ。

 依頼する方はわざわざお金を出して守ってもらうというのに、護衛が弱ければ話にならない。

 それに、お金だけ貰って護衛を放棄することだってあり得る。


「その点、星将会は実績もさることながら、その信頼も厚いです。そこで、全ギルドは護衛の達成を確実なものにするべく、こうして星将会のメンバーのみとしているわけなんですよ」


 なるほど、流石は転生者といったところか。


「ん〜よく考えられていますね。それで、護衛依頼がどういうものなのかはわかりましたけど、実際に護衛をするとなるとどうすれば?」


「それは臨機応変に、とでしか言えませんね。一流の冒険者なら、どんな状況にも対応してみせる。それが信頼にも繋がってきますからね」


 う〜ん、まあそう言われれば反論できないのが苦しい。

 俺はここ数日でようやっと二ヶ月を経過したばかりなのだ。

 一流と言われても正直手に余るのが現状だ。

 臨機応変に、か・・・。


「ん?でも星将会のメンバーなら、魔物はもちろんですけど、盗賊が現れても敵なしなんじゃあ?」


「確かにそうかもしれませんが、よく考えてください。この世界には未だ蔓延っている災厄と、新たに出現した凶星もいるんですよ?」


「凶星?」


 何それ?

 初めて聞いた単語だけど・・・。


「え?知らないんですか?星将会、そして世界を破滅に追いやる可能性が高い存在、凶星。星の輝きを奪うという意味でつけられた名前だそうです。実際にその力は強大で、被害のほどはお話しましたよね?」

 

「は、はい・・・」


 半数以上がすでに犠牲になっているから、その凄まじさは理解できる。

 もしも凶星と対峙した時は、いくら星将会といえど全力で挑まならければいけないのだろう。


「それを踏まえて、護衛を引き受けるかどうか判断しないといけないんですよ。とは言っても、どうせ引き受けるんですよね?」


 セレスさんはそうして悪戯っぽく笑う。

 その目はまるで心を読まれているようで、酷く居心地が悪い。

 普段は健気で明るいのに、たまに見せるダークセレスはどうにかならないのだろうか?


「ええっと、まあ、そうですけど」


「ふふっ、すみません。いじめるつもりはなかったんですよ?システリアさんがあんまりにも可愛いからいけないんです」


「あはは、そんなにからかわないでくださいよ」






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