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第十五夜

最近、アニメやゲームやらがやたらと楽しいんですよね。

だからいろいろと時間を作れなかったりしているのですが。

そのせいで内容が薄くなってしまったり、誤字や脱字が多くなったりするかもしれないということです。

反省はするつもりですが、それでもやめられないと思います、はい。

なるべく少しでも書くようにはしますので、それでどうにかしたいと思います。

 

「ス、スゲエ・・・」


「魔物は?ねえっ、魔物はどうなったの!?」


 男が一瞬で葬り去ったシステリアの実力に呆気にとられていると、横から女がやたらと心配そうに魔物の安否を尋ねてきた。

 それも必死の形相で。


「ちょ、ちょっとは待てよ!今確認するから!」


 そう言うと、男は望遠鏡を使って魔物の様子を確認する。


「四十、五十そこらの魔物はまだ息がある。でも残りは死骸すら残っていない・・・って」


 男が一部の魔物だが、その生存を確認したということを告げるや否や、女は目を血走らせながら魔物の群れ跡へと走っていく。


「おいっ、抜け駆けすんなよ!ってコラ!」


 慌てて男も女を追う。

 それはもちろんお金のためだ。

 仕留めた魔物は全てその人のもの、魔石もそうだが、その魔物の全てが財産となる。

 牙や爪などは主に狩猟用の道具に、皮や骨は日用品に利用される。

 それを加工し利用することもあれば、その全てを売却して、より多くのお金へと変換することも可能だ。

 このように何を取ってもお得である魔物は、ギルドで依頼をこなすことで生計を立てている者なら誰もが飛びつく。

 しかも今回は一部だけと言わず、その全てが自分の所有物になるのだから、仕方がないと言えば仕方ないのかもしれない。


「でも、あんまり気を抜き過ぎるのは良くないと思うんですけど・・・」


 なんせ、次は魔物よりもっと厄介な相手だろうから。


「まあまあ、いいじゃねえかよ。それよりもシステリア。お前こんなに強かったのかよ?正直信じられねえって言うか、ありえねえと言うか・・・」


 そう言うギンガさんこそ、ちゃっかり魔物を狩り尽くしているじゃないですか。

 何よりも先に行動したあの女の人よりも早く。

 ほら、どこからともなく悔しがっている男女の声が聞こえるじゃないですか。


「全くだ。まさかその不良品を扱えるとは、大したものだ、システリア」


 いやいや、そう言うローザさんこそ、俺がいざ構えだした途端には、身を隠しながらも魔物の群れへと近づいて、かなりの数仕留めていましたよね?

 今は草陰に隠しているようですけど、後からそれを出して自分のものだと公言するつもりですよね?


「ギンガさんもローザさんも、そんなに言うほどではありませんよ。それに、これは不良品などではなかったじゃないですか。実際にこうやって結果が出ているんですから」


「んー、まあ・・・な?」


「シ、システリアだからこそ、というところはある、と思うぞ?」


 と、そんなことを言う二人は、どこか歯切れ悪くもあり、そして呆れているようにも見えた。


「は、はあ・・・?」


「あの〜?お取り込み中のところ悪いんだけどねえ?ちょ〜っと、いい?」


「っ!?」


 なっ、こいつ、いったいどこから!?

 俺は突拍子もなく目の前に現れた()()から、驚きのあまりつい固まってしまった。


「何をボサッとしている!」


「!!」


 つい動きを止めてしまった俺に代わって、ローザさんがその剣を少女に向かって振るう。

 側から見れば、聖騎士が無垢な少女を殺そうとしているかのように見えるだろう。

 しかし、それはただの少女だった場合の話だ。


「無粋っていうだろうねえ?こういうの」


「剣が、届かない・・・っ!」


「邪魔者はご退場かな?退場かな〜?」


「くっ!」


 ローザさんが何かを警戒してか、受け身の体勢をとる。

 そんなローザさんの行動に、ついどんな攻撃が繰り出されるのかと前屈みになってしまう。

 しかし、そんな俺の期待とは裏腹に、少女はローザさんを手で軽く払うような仕草をしただけだった。

 だが、決してそれだけではないというのは、ローザさんの顔を見ればすぐにわかった。

 少女が手で払う、その際に発生した弱々しい微風がローザさんの頰をなでる。

 その瞬間、微風が暴風へと変化した。


「バイ〜」


 少女の気が抜けるような声と共に、ローザさんが盛大に地面を跳ねながら吹き飛ばされる。

 すると、ローザさんを抱き止めるようにしてギンガさんが颯爽と現れる。


「くはっ・・・」


「おいっ、ローザ!ちっ、てめえ・・・!!」


 ギンガさんが殺気を込めた目で少女を睨む。

 しかし、そんな身も凍るような殺気を一身に受けているというのに、少女は笑った。


「アハハハハハッ!そんなに怒らない怒らな〜い。死んでないからセーフセ〜フ」


 確かに、少女が言うようにローザさんは無事だ。

 行動不能にするその限界を把握していたのか、無駄な怪我はなく、必要最低限の傷だけを負わせている。


「でもでも、今はキミたちには構っていられないの」


 少女は徐にそう言うと、なぜか俺の方へと向き直る。


「キミ!キミだよ?キミ」


 やっぱり俺か・・・。

 薄々予想してはいたけど、つくづく俺は引きつけ体質なんだとこの瞬間自覚した。


「私が、何か?」


「殺し合い、する?しよう?ねえ、そうしよう〜?」


「いや、いきなりそんなこと言われても・・・」


「わたし、()()()


「え?」


「わたし、サツイ」


「サツイ?それが、あなたの名前?」


「キミは?キミの名前、名前は?」


「私は・・・システリア」


「システリア、システリア?システリアっ!」

 

 な、なんなんだろう・・・この子は。

 なぜかわからないけど、どこか不思議と懐かしい感じがする・・・。

 ていうか、サツイって怖過ぎない?

 そんな名前をつけた親の顔が見てみたい。


「じゃあ、殺すね?」


「ほえ?」


 次の瞬間、サツイと俺の距離はゼロになった。


「!?」


 その直後、視界に映し出される鋭い何か。

 俺はあえて後ろに倒れこむことでそれを回避する。


「ちえ〜。でもでも、予想通り、予想!通り?」


「そ、それは・・・いったい?」


 俺はサツイの腕を指差しながらそう尋ねる

 つい先程までのか細い少女の腕はどこへやら、今は殺戮だけを追い求める禍々しい竜の形骸を象っていた。


「これ?これかな?これはねえ〜、アスタロト!」


「アスタロト?」


「そう、そう!わたしは、大悪魔の全ての力?を使えるの!」


 全ての、大悪魔の力を?

 そんなの、出鱈目過ぎないか?

 大悪魔、というのは神々を起源とした対となる存在のことだ。

 実を言うと、この大悪魔はアトリエの創作物である。

 何を思ってそんなことをしたのかは不明だが、恐らくは自分が楽しむためだろう。

 ともあれ、神々と同等の力を保有するのは間違いないことで、その力を全て持っていると言うこの少女は、世界を用意に滅ぼせる力を所持していることになる。

 もっとも、それが事実ならば、の話だが。


「それで、サツイちゃんはそれを私に使うって言うんだよね?」


「そうだねえ〜?うーん、そうだよ?」


「できることなら、せめて殺し合いをすることになった理由を教えてほしいんだけど・・・」


「教えな〜い!教えてほしい?なら足掻いてね?」


 すると、サツイは徐にその腕を振るう。

 まるで生きているかのように唸りながら、竜はその牙を俺に突き立てる。


「これで!」


 とっさに俺は手にしていた大弓で殴りつける。


「スゴイスゴ〜イ!スゴイね?でもでも、いつまで持つかな?」


 畜生、意外と硬い・・・。

 強度では折り紙つきのこの大弓で弾いても、全く欠ける様子もない。

 あの腕をどうにかできればいいのだが、このままでは完全にジリ貧だ。

 手っ取り早い方法は武器に頼らない、体術主体のスタイルへと変えること。

 しかし、それだとクーネの言うように女性らしい戦い方ではなくなってしまう。

 そしてここで最も重要になることがある。

 それはサツイの如何なる攻撃でも被弾しないということだ。

 理由は単純、今のサツイの力ではいとも簡単にこの体はバラバラにされるからだ。

 もちろんのことだが、俺の体はそのくらいで音を上げることはない。

 では何か、それは俺の体の秘密が周知されてしまうということだ。

 この体は驚異的な不死性を持つ。

 故に、面倒なことになるのは確実。

 そうなってしまってはクーネ同様、その行動が制限される可能性が高くなるからだ。

 それを回避するためにもどうにか無傷、もしくはバレない程度の重傷で済ませたい。

 しかし・・・。


「どうしたの?守ってばかりじゃ!勝てないよ?」


 サツイの攻撃は止まることを知らず、徐々にだが、その動きに鋭さが増してきている。

 まだ余裕を持って対処はできているが、それもいつまで続くか・・・。


「仕方ない・・・」


「仕方ない?」


 場所が場所だけにどんな影響が出るかわかったものじゃないが、やるしかない。

 俺は攻撃を回避しつつ、大弓に矢をつがえる。


「こんな距離で!打つの?大丈夫かな〜?それ!」


「大丈夫っ、だと思う。けど、今はこれしか!」


 俺はそう言って覚悟を決めると、地を力強く蹴りつけ、空高く跳躍する。


「ピョーンって飛んで?それから?どうするの?」


「こうする!」


 俺は空中で体勢を変えると、歯を食いしばりながらもその弦を引く。

 座標はこの真下、サツイの頭上だ。

 そして、俺はどうか余計な被害が出ないように天に祈ると共に、その矢を放った。

 空気を震わせるほどの衝撃と爆音。

 そんな砲弾同等の矢はサツイの元へ一直線。

 そして矢は見事にサツイに着弾。

 その直後に、俺が最も忌避していた衝撃波が周囲を襲う。

 木々は少なくない数が薙ぎ倒され、小石は銃弾と化す。

 そしてそんな破壊の出来事というのは、瞬きをするほんの一瞬の話。

 俺は矢を放った直後に一度瞬きをした。

 次に目を開けた時には、穴ぼこの地面と無残な森の姿が広がっていた。

 俺はこんな惨状を作り上げてしまったことに申し訳ないと思いつつも、俺はギルドメンバーの安否を確かめるため、落下中であるが目を凝らす。

 すると、皆咄嗟に地面に伏せたのか、俯けになっており、見える範囲では怪我人や死亡者はいないようだった。

 とは言え・・・。


「見えないところで怪我をしていたら、と思うとゾッとする・・・。急いで全員の無事を確かめに行きたいけど、今は・・・」


 そうして俺は警戒を解くことなく地へと足をつけると、万が一ということを考え、未だに晴れない土煙を睨みつける。

 というのも、例えばそう、人を易々と貫くような凶器が飛んできたりするかもしれないし・・・。


 パシッ。


「ん?何これ?」


 そうしてほぼ反射的に掴んだそれは、明らかに目を潰すかのように真っ直ぐと、ピンポイントで吸い込まれるように飛んできた。

 そして、その物体はというと・・・。


「骨?ということは・・・」


「そう!まだ、まだまだ生きてるの!」


 えー、マジかー。

 もう本格的に手詰まりなんですけどー。


「ねえ、サツイちゃん。サツイちょんは随分と強いけど、なんでこんなことを?」


 ということで、急遽対話による交渉を試みることにした。

 多分、というか確実に話を聞いてくれないような気がするけど、こればかりはやってみるしかない。

 もしそれがダメなら・・・いや、今はそれは考えないでおこう。


「スゴイ〜?当然!だって!サツイはママの娘だもの!」


「ん、んん?ママ?それって誰のこと?」


「システリア!」


「はい?」


 いや、待て、ここは冷静にいこう。

 クーネの時のように若干のデジャブを感じたりしているが、今はそんなこと気にしてはいられない。

 重要なのは俺がサツイのマ・・・母親かどうかということだ。

 しかし、これはどうなのだろうか?

 俺の今の姿を見て母親だと思ってしまう。

 それはつまり、アトリエがサツイの母親だということになるのだろうか?

 仮にそうだったとしても、俺はアトリエという器に精神だけが宿った状態なのだから、本人とは言い難い。

 兎も角、まずは詳しいことを聞かないことには話にならない。


「ええっと、サツイちゃん?私がママって、どういうこと?」


「どういうこと?どういうことって?ママはママ、そういうこと?」


「うーん、そういうことじゃなくてね?どこを見て、私がママだと思ったのか、それを教えてくれないかな〜って」


「ちょっと意味がわからない?わからないけど、答える!う〜んとね、少し何かが混じっている?ような気がする?でもでも、前のママと一緒!何も変わらな〜い!それだけ」


 それだけって言われてもなあ・・・。

 もう何が何やらって感じで頭はショート寸前なんだけど。


「う、うん。なるほど。だいたいわかった。それじゃあ、サツイちゃんに一つお願いしてもいい?」


「なあに?なにかな?なんだろう?」


「今日のところは一旦殺し合いはやめて、お話をしない?」


「うん、いいよ?」

 

「え、いいの!?良かった・・・。それじゃあどこで」


「ママのお家に行きたい!行ってみたい!そこでお話する。したい」


 マジかー。

 もうこの際だからいいや。

 兎に角、この不毛な争いを終わらせられればそれでいい。

 もうヤケクソだ、ホント。







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