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虫歯と歯医者(1)


「くそ、歯がゆいぜ!」俺は嘆く。「虫歯の治療さえちゃんとしていれば」「甘いな」相手の男は言う。「虫歯だけに」俺は絶望して顔を覆った。「思わず、切歯扼腕しちまうぜ」相手は哄笑する。「虫歯を歯牙にもかけないからだ」相手は麻酔針を取り出した。「感謝しろよ。唇ほろびて歯寒しだ!」#140字小説




価値観(2)


僕は学年末テストで1位を獲った。念願の1位だったけど、獲ってしまえば案外冷めた感情になる。ただ事実が事実として認識されるだけだ。「やったー!学年末テスト192位になってる!」そう欣喜雀躍する友人を見て、僕は心の底から「おめでとう」と言った。物の価値なんて人によって違うのだ。#140字小説




恋愛初心者(3)


普段なら絶対に読まないような少女漫画を購読してみる。恋愛経験に乏しい僕は疑似体験をしておかないと思ったような作品が書けない。試行錯誤してみるが、なかなか上手くいかない。「気持ちだけで十分だよ~」なんて彼女は言うだろうけど、僕は素敵な恋愛小説を彼女に見せたかったのだ。#140字小説




頭の良し悪しは運次第(4)


頭がいい人って、運が良かっただけなんだよね。

先進国に生まれた運の良さ、学校教育が受けられる運の良さ、生きていける運の良さ、全部外的要因なんだ。

それを私達は当たり前のように感じてるけど、当たり前なんかじゃない。

だから親に感謝しよう。ありがとう、私は恵まれていますって。

#140字小説




万里鵬翼(5)


野生保護団体に助けてもらった私は、外敵のいない安全な檻の中で丁寧に飼育されていた。だけど私は外に出てみたいんだ。すっかり頼りなくなった羽だけど、自由に羽ばたいてみたい。鳥籠は狭くて、飛び立つとすぐに天井にぶつかるけど、外の世界は広くて自由だった。飛び方を知るために外に出たいのだ。

#140字小説




一将功成りて万骨枯る(6)


トランプタワーの頂上に置いてあるカードが偉いと思う人はいないけど、組織の頂上にいる人間は偉いと勘違いされる。だけど、下で支えてくれる人がいなかったらこんなに高い景色は誰にも見れないんだ。下のカードを一枚抜くだけでタワーが倒れるのと同じで、下で支えてくれる人が大事なんだ。#140字小説




知らない私は優等生(7)


休めと言われても休み方を知らない。遊べと言われても遊び方を知らない。私はそんな杓子定規の、よく言えば優等生だし、悪く言えば要領の悪い人間だった。そんなときに君に出会ったんだ。君は、遊ぶとか休むとか、そんな当たり前の答えを当たり前に知っていた。君に出会えて本当に良かった。#140字小説




No music,No life!(8)


歌の収録があるからと、友人の予定を断ると、「活動休止中も仕事してるなんて、お前にとっての歌は、人生の一部なんだな」と笑われた。いや、本当はそうじゃないんだ。私にとっての歌は私を苦しめる材料でしかない。この声も、この容姿も、この歌唱力も、全部、本当はコンプレックスなんだ。#140字小説




プロとアマの境界線(9)


図書館の帰り道に公園に寄ると、ベンチにおじいさんが座っていた。彼はバイオリンを弾いていて、その音色は私を酔わせるのに十分だった。「お上手ですね」私は声をかけた。「プロの方ですか?」「いいえ」そのおじいさんは答えた。「趣味です」私にはプロとアマの境界線がわからなくなった。#140字小説




親の純粋な願い(10)


私の思想は鎌倉時代の武士と同じで、御恩と奉公を重視している。だから幼少期の私は周囲の環境に感謝し、出来る限りの恩返しをしてきたつもりだ。だけど親になって気付いたことがある。親が子に求めているのは、恩返しじゃなくて、ただ幸せに生きて欲しいっていう純粋な願いだけなんだって。#140字小説

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