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wor stand→R  作者: 雅事 絵空
7/9

6話

「何も無かったよ。助かった。」



「そりゃ良かった。でもこの家狙われていないのは何でだろうね?」



ズガァン!!!!


壊れる天井。


舞い散る残骸。


「ちくしょぉ!!言ったそばからかよ!!!!」



────────────────────


真横を通った災厄が、天井を、壁を、床を削り取っていった。


その根源を確かめようと振り向く。


そこに居たのは



「俺の右腕を………っ……俺の右腕を切り飛ばしたやつ!!!!」


特徴はないが、見覚えがあるその顔は。


確かに、先程自分の腕を切り飛ばした張本人だった。


ということは、こいつが住宅街をボロボロにした犯人か。


などと考えていると



「てめぇか………」




ぼそっと。



真後ろで。



少し聞いだけでもわかるほど


憎悪に


憎しみに


怒りに


恨みに燃えた。



親友の声が


ひくく、重く、響いた。



次の瞬間。


「翼に傷をつけたのはてめぇかぁぁあ!!!!!!」


先ほどとは裏腹の


耳を貫くような怒涛の叫びが肌を焦がす。



「さっきから気になってたんだよ。翼の右袖がなくて、その代わり真っ赤で。何があったんだよって聞こうとしたけどもう必要ねぇ。」


そう言い終わると還也は右手をグッドの形にして、相手に突き出し


そのまま180度回転させつつ言う。


「てめぇを殺す。そんだけだ。」



還也が相手を目掛け、走る。


激情に飲み込まれ、叫びながら。


還也が相手にたどり着くまでは一瞬だった。


その一瞬の中で


相手が右腕を振り上げながら、唇を少し、動かしていた。


それが何を言っていたのか、考える間もなく


ザン!!


切り裂く音とともに



ずちゅ。



水っぽい塊が


切り離されたような音と


紅い絶望を撒き散らしながら


還也の左腕が


宙を舞う。



どちゃ…


そして


それが、地面に落ちた音が


静かに響く。




その瞬間


還也の叫びが止み。


走っていた勢いのまま


相手を通り過ぎつつ


倒れ込んだ。




全てが、走馬灯のように


断片的に


スローモーションで


目の前に流れていった。



還也の絶叫が、響き渡る。


「っ……あぁぁぁぁああああああああ!!!!」


左肩を抱えながら、還也が叫ぶ



叫ぶ



叫び続ける。



その音が思考を停止させる。


助けに行こう。


そう思った。


だが、自分の体がいうことを聞かない。


目の前の極彩色と


圧倒的な恐怖感。



本能が


思考が


脳みそが


逃げろと


離れろと


叫んでいる。


シナプスが焼ききれるような感覚が走る。


思考力が亡くなってゆく。



その脳でただ『逃げてはいけない』と、『助けなければならない』と、命令し続ける。


意識を保ち、逃げ出さないように、頭を使い続ける。


助けろ。


助けるんだ。


逃げるな。


逃げるな。


逃げるんじゃない。





前へ



踏み出せ!!!!



「うおぉぉぉおおおああぁぁぁあああ!!!!」


足が


動く


走る。


走る。


相手を殺すためだけに。


ただ走る。



立ち向かう。



ノイズがかかったような意識の中


相手がこちらに向かって、右腕を振り上げる姿が視界をよぎる。



右へ受身を取りながらその斬撃を避ける。


ズァン!!!!


自分の左横を色のない斬撃が通り過ぎて行く。


よし


まだ考えられる。


動ける。


戦える!!



その確信と


この距離であの斬撃を1回避けられるか。避けられないか。は、この勝負に勝てるか勝てないかが決まると言ってもいいほど大きい最初の壁だ。


それを突破したことにより


少しばかりの安心と、希望が生まれる。



この勝負、勝てるかもしれない。と


相手の懐に飛び込む。



この距離なら拳が届く。


拳を、鉄に変える。


もう、怖いという感情はなくなっていた。


「あぁぁぁぁああああああああ!!!!」


振りかぶる。


その時、相手が左腕を軽く振う姿が、視界の済に入った。


だがこの状態で避けることは出来ない、そのまま相手の顔を拳で捉える。



バキぃッ!!


確かな手応え


そして


ザン!!


斬撃の音と共に


下半身の感覚が


消えた。

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