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wor stand→R  作者: 雅事 絵空
4/9

3話

その馴染み深く、聞きなれた声の元へ視線を運ぶと、そこには柔らかく微笑む還也の姿があった。


そして、この現実に対しての、素直な疑問を問いかける。


「還也、なんでここに?」


還也はすこし、安心したような口ぶりで


「お前と、同じ理由だよ。」



と言った。


その言葉の意味を、すこし、考えてみる。





「あぁ、なるほどね。」


なら、安心したような口ぶりも納得できる。


こいつがここに来た理由は


「還也も願いがかなったってことか。」


そして、俺と同じように親友に話したくなったというわけだ。


「そういう事だ、お前も同じで少し安心したよ。」


どんな事でも、同類がいると安心するものだ。


だが、そうとわかれば一つ気になることが出てくる。


「還也は、どうやって願いがかなった?」


「単純に、欲しいなと思った後に地面に倒れて、気づいたら異能が手に入ってたんだよ。」


あぁ、それは。


「俺も同じだ。」


還也は、だよな、と一言いい、そこから少し考えたあと


「なら俺たちだけじゃない可能性が高くねぇか?」


と、言ってきた。


確かに、普通に考えて俺たちに共通点はない。兄弟でもなければ恋人なんて論外だ。


もし、人の願いを叶えられるような神なんて奴がいたとして、そいつには俺達の関係なんてどうでもいい事だろう。


更にいえば、俺達の仲は他の親友グループと比べて大差ない。はずだ。わざわざ俺たちだけを選ぶ理由が見当たらない。


ならば、仮定として、全人類、又は大多数の人類が同時に願ったから、何らかの奇跡が起き、全人類に能力が手に入った。


そう考えるのが妥当ではないだろうか。


「確かにな、なら様子見に住宅g」


ドッ……ガァン………


住宅街へ行ってみよう。と、言おうとしたさなか、住宅街の方から瓦礫が崩れるような音が響いて来た。


音がした方を振り向くと、砂煙が上がっているのが確認できた。


「これは、結構やばいのでは………」


そう還也に聞くと


「翼、お前羽生えてるし、今日話した願いのままだと飛べたよな!!だったら俺を担いであそこまで飛べ!!!!」


そうか、あいつが住んでいるのはあの住宅街か。


「わかった、うまく飛べるかわからないけど、最善は尽くす。捕まれ!!!!」


還也がしっかりと手を掴んだのを確認したあと


ゆっくり、ゆっくり羽に命令を飛ばす。


羽ばたけ。


羽ばたけ。


羽撃け!!!!



バサッ



という乾いた音とともに、自分周りに暴風が吹き荒れる。


「つっ……」


その勢いで少し目を閉じた。



自分を襲う浮遊感で目を開ける。


「うあぁ!!」


自分の下に、森がある。


浮いている。


だが


「やばい!!!!」


すぐに、落下が始まる。


はばたく。


はばたく。


全力で。


はばたく。


あぁ……あぁ!!


完全な非常と、圧倒的な高度により、背中に、脳に、ゾクゾクする恐怖が駆け巡り、心臓を掴まれたような嫌悪感が精神を壊してゆく。


落ちることだけは避けなければ。


死にたくない。


それしか考えられず、ただ、我武者羅に羽をはためかせることしか出来ない。


前に、進まない。


その事実が余計に、プレッシャーとなり、焦りを呼ぶ。



手を、強く握りしめられた。




「すまん、お願いだ………翼……………頑張ってくれ!!!!」







その声が聞こえた瞬間、焦りが消え、興奮が消え、恐怖が消える。


「あぁ、わかった。」


もう、大丈夫だ。


俺は、親友を守らなければいけない。


いや、守りたいんだ。


だからこんな事でもたもたしてられない。


ゆっくりと羽ばたく。


前だけを見る。


羽の角度を調節する。


前へ、前へ、前へ進む。


ただよう砂煙の元へ。

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