夜の訪問
森に近い隣町の宿にはすでに兄さんが待っていた
「お兄様、早かったのですね?」
ヴライアンはミーシェの後ろにいる父さんをチラッとみたが
「まぁね、僕が心を込めてお願いしたらさっさと許可してくれたよ」
ヴライアンは「はい許可書」とミーシェに渡すと
「ミーシェも父上も宿はとってあるから中でも話しませんか?」
「そうするか……っと言いたいところだが、城へ戻り警備の見直しもしなければならないからな。ヴライアン、可愛い天使のことを頼んだぞ」
「勿論です、蟻一匹とて通しませんよ」
兄さんの言葉に父さんは頷き
「ミーシェ、辛くなったら直ぐに戻ってきても良いからな?魔力が切れそうだったら直ぐに知らせるんだぞ?あの馬鹿にリンクと移動魔法を使わせるからな」
それはいくらなんでも陛下が可哀想な気が………うん?でも普段のことを考えたらそれぐらいやらしても良いのかも?
「はい、お父様。もしもの時は直ぐに知らせますわ」
「うんうん。じゃ二人ともあとは頼んだぞ、早速戻って奴らにミーシェを使わせた報いを考えなくてはな」
ミーシェとヴライアンはあの皇子一家の行く末が心配になった
父さんを見送り宿に入ると見た目とは裏腹に行き届いた清掃にシンプルで優しい内装になっていた
「お兄様、移動は明日の早朝ですか?それとも学園終了後ですか?」
「そうだね、明日の早朝に移動するか」
「分かりましたわ。それにしても明日抜ける森は少しばかりキツいですわね」
「大丈夫だよ、この森を進むのに馬を用意しておいたからね」
確かにそれだと短時間で行けるかもしれない
「流石です!では、明日に備えてお風呂に入って寝ましょう?」
「………そうだね」
元気のない兄さんが心配だったが、兄さんは部屋を出ると右隣りの部屋へ入っていった
それから夜更けに何となくミーシェは目を覚ましカーディガンを羽織って窓に近づき
「あら、こんな夜更けにレディの部屋を訪れるなんて常識はずれではなくて?」
「お前なら気づいて起きると思ってな」
窓枠に彼は腰かけると懐から小さな鞄を取り出すとその中から大きな衣装ケースを取り出した
「ほらよ!お前にやるよ……って言っても親父と兄貴からだけどな」
ミーシェは衣装ケースよりもその鞄が気になり
「相変わらず便利な鞄ね。それを作った技術スタッフをこちらに連れてきてくれないかしら?」
アスクルは苦笑いを浮かべ
「それは兄貴か親父に言え、俺の一存では送れねぇからな」
「それもそうね」
ミーシェは浮遊魔法で自分とティーセットとお茶請けを浮かしながら白の上下を着ている男性に勧めながら優雅に紅茶を飲んで
「それで?貴方がこの荷物を届けに来ただけでは無いですわね?」
彼は両手を軽くあげ
「ご名答、その中に俺が所属している……あーと影の守護者で今、着ている服装だそれを来て俺について来てほしい」
なに?いまの間は、絶対誤魔化したでしょう!
「今すぐですの?」
彼は頬を掻きながら
「兄貴がと言うよりも俺の配下の者と親父が『いつ・どこで、ミーシェルミツキ・モントヴェルト嬢に出会った!?』って言って煩くてな。挙げ句のはてに『アルヒアン王国に行って婚約を申し込むぞ!』なんて言い出してな」
ミーシェは苦笑いを浮かべながら
「私には、婚約者が居ることをお忘れなのでしょうか?」
「あ~多分忘れてるな。俺もいまの今まで忘れてたからな」
あの国は大丈夫なのかな、うっかりして騙されたりしない?
「申し訳ございませんが、明日も学校へ通わなければならないのでお引き取りください」
「………はあ!?お前学園に通っているのか?」
あれ、おかしなこと行った?
「えぇ、私とアミール様─アミール・ケーニッヒ・アルヒアンピールの アルヒアン王国第1王子も学園に通っていますわ」
「王子の方はそうだろうけど……ミーシェ嬢はなぁ~」
「私がなんですか?早く仰って下さいな」
「分かった分かった。言うからその言葉そろそろ止めねぇ?」
あっ!そう言えば夜に来る人って取り繕わなければいけない人が多かったから言葉を直していなかったわ~
「ごめんね、夜に呼び出すのは陛下だからつい癖で話していたわ」
「お前も大変なんだな」
「それはお互いついている役職のせいね」
「まぁ其にしてもお前は、俺らの国の言葉やマナー・魔法の扱いとか全てにおいて完璧だったから学園は飛び卒してると思ったんだ」
「確かに卒業できる学力は超えているし、学園長からもお墨付きを貰っているけど彼が卒業するまで共に通うことにしたのよ」
「護衛のためか?それとも学園生活を満喫するためか?」
「そうね、任務であり貴族同士の繋がりを作るためでもあるわ」
アスクルは少し考えるそぶりをして
「……なぁ、お前まさかここから学園の陣まで繋いでいるのか?」
あら?何で分かったのかな?
ミーシェは挑発するように微笑むと
「どうしてそう思うのかしら?」
「……本の少しだけリンクしている別の魔法が感じられたからな」
「ご名答、登校するために繋いでるわ」
「もしもの時にどうするんだ!?」
「あら、心配してくれるの?でもご安心よ」
アスクルはこれ以上聞いても無駄だと判断し
「まぁいい、合流した夜にそれを来てくれればいい」
「了解よ」
アスクルはミーシェに背を向けるとそのまま飛び降り、駆けていった。それを見届けてから彼ほど小さな鞄ではないが、ポシェットに衣装ケースを入れ鍵を閉めるとベッドに入り再び夢の世界へ入っていった




