影守り
ミーシェは何かに拘束されるような感覚で、霞みがかかった頭がようやく動き出した。
……ふぅ、睡眠魔法強くかけすぎだよ。身体強化していたから少しの間で済んだものの、他の人なら2・3日は起きれなかったはずだと思う。
完全に睡眠魔法が解けたわけではないのでミーシェは、耳を澄ませ相手の言葉ひとつも聞き漏らさないように聞くことにした。
「なぁ、この後こいつどうなるんだ?」
「しらん。確認が終われば、殺すなり・薬を飲ますなり・奴隷にするなり お前の好きにすればいい。」
……えっ!?殺すのは、わかる。奴隷にするのも、まぁ分かるけど……薬ってなんの!?前世であった薬物ってやつなの?この時代にあった?
「本当にいいのか。俺がこいつを貰っても?」
………薬については、スルーなの!?
「処分するのが面倒だから好きにすればいいだろう。」
「ラッキー。ってか、何で薬が出てくんだよ!!」
今、気づいたの!?遅すぎない?
「……そろそろあの方が来られるぞ。」
「答えろよ!」
そうよ、答えなさいよ!!
男が苛立った低い声で
「煩い。黙れ。」
ピリピリした沈黙が支配し始めたとき扉が開く音がした
「良くやった。お前たちは下がれ。」
その男の命令で先程までいた、二人の気配が消えた。
そして、洗練された足運びで男が近づいて来るのが分かった。
「……まさか、令嬢であるミーシェルミツキ嬢が来るとわな。あの家は、武よりも参謀の方だと思ったのだが違ったのか?まぁいい。その事は起きてから聞けばいい。」
聞き覚えのない声ね。でも 洗練された足音ってことは、貴族……しかも上の方の立場の人かな。
「起きる前に痣の確認をしないとな。」
痣って何の事なの?リリーもマヤも私の体に痣があるなって言ってなかったよね。
男は足や腕・背中を調べ首筋まで見た
「……痣がない?いや、報告では確かに手の甲にあったと言っていたな。一定の状態で異なるのか。」
男はぶつぶつと
「気温や光を出現していた時間帯と同じにすれば良いのかもしれないな。1から当て嵌めていくか?いやそんな時間はないな。」
頭の中で危険信号をならしてる気がするね。この場合、逃げたほうが正しい気がする。
ミーシェは、直感を信じ魔法が完璧に解けていないけど回避行動をとろうとしたが……
「なっ!」
ミーシェは、透明なものに手足を押さえつけられた。
男性は目を細目
「ほう、やっぱり起きていたか。流石、アルヒアン王国の国母第1候補だな。やつの睡眠魔法をうまくかわしていたか。」
「いつの間に拘束魔法を!?」
男は、面白そうに
「……ほう。水魔法のチェーンではなく、貴殿は何故 拘束魔法だと思うのだ?」
………えっ?あっしまった!
普通透明な魔法と言ったら、水魔法のチェーンだと思うのが一般常識。それを、拘束魔法と判断する者は使ったことがある者だと言うしるし。この場合ミーシェは、拷問 または 武 のどちらかに確実に優れている。と言ったようなものだ。
ミーシェが動揺しているうちに隔離空間を発動され、その中に放り込まれていた。
しまった!クラかクミトがいるときならまだしも、敵陣地に捕らわれているのに。気を引き締めなければ。
本当は、あまり魔法を使いたくなったけど仕方ないよね。
ミーシェは、相手に気づかれないよう極少量の光魔法で解毒魔法をかけたが
なっ なんで!魔法が使えない!?
発動させる度に消えていった。
表情に出ていたのか
「無駄だ。この拘束魔法はちょっと特殊でな、拘束者は魔法が使えなくなるんだよ。」
ミーシェは、棒読みで
「…ご丁寧にご説明アリガトウゴザイマス。」
◆◆◆◆◆
徐々に隔離空間内の気温や光を痣が発現した真夏に合わした。彼女の顔はリンゴのように赤くなり汗が出始めた。
これでも痣がでないのか?これで、気温や太陽の明るさ・風 までも合わしたと言うのに条件にあってないと言うのか!?
男は調査書を再び読み進めていると1つの文で読むのが止まった。
『王子を助けるために魔法を発動した。その後気絶。その時に痣を発見した。』
そう言う事か!それなら拘束魔法を解き、代わりに隔離空間に触れる魔法を無効化にすればいいか。
男は拘束魔法を消すと近くの椅子に座り様子をうかがった。
彼女は直ぐに冷却魔法を使い気温を下げ、隔離空間から出ようと様々な魔法を放ち始めた。
手の甲に注目しているとついに左手に青紫の薔薇が浮かび上がってきた。
「……あった。これで──」
突如背後から
「その子を返してもらうよ。それとイザリア候生きていたのですね。」
………こ この声は!
イザリア候と呼ばれた男は、不穏な言葉を聞かなかったことにして 隔離空間を幻影魔法で隠したがすでに遅し。
「っ!皇太弟様。このような所にお一人でどうなさいましたか。」
皇太弟は氷りよりも冷たい目で
「兄上がお招きした御客人に無礼を働きましたね。」
イザリアは、床に片膝をつき
「彼女は間違いなく21姫様の血を色濃く継いでおられます。彼女と婚姻されれば、正当な帝国の血筋に戻ります。そうすれば、古参どもも手を出してこなくなります。」
「それで、あの子に手を出したと?」
「痣を確認するために──」
「黙れ。よくも、兄上の顔に泥を塗ったな。お前が要らぬ事をしたお陰で、アルヒアン王国と戦争になりかけた。」
そんな早くに情報が漏れるわけが!
「……」
「冥土の土産にもう1つ教えてやる。私だけが知っている事だ。」
イザリア候は、唾を飲み込み続きを待った
「あの子。ミーシェルミツキ・モントヴェルト嬢は、唯一の光魔法保持者で武術や魔法に秀でている アルヒアン王国の影守りだ。」
「……はっ?影守り」
いったいどう言うことだ?まさか!!いや、そんなはずない。感触もあったし、熱もあった。それでもあり得るのか?
アルヒアン王国の影守りは、武術・魔法・密偵 までしている。また、誰が・何人所属しているのかさえも分からない。そして、自国の王でも信用していないと言う。
「あらまぁ。もうばらしてしまったのですか?」
ついさっきまで、隔離空間から脱出しようともがいていたはずの彼女の声が真横から聞こえた。それはまるで、悪戯のネタばらしされた子どものように残念そうで かつ 楽しそうな声だった。
「驚かないのですか?ミーシェ嬢。」
「うふふ。貴方が私の秘密を知ったことも、アクア皇太子様の実の弟君であられることも気づいていましたわ。」
彼女はゆっくりと皇太弟の方へ歩き出すと、純白のワンピース状から真っ赤な 血飛沫が付着したようなドレスに変わっていった。
この状況で逆に冷静になった男は
……この方々は悪魔と魔女なのか?それとも魔王と魔王妃 なのかも知れない。
と場違いなことを考えていた。
「参ったよ。流石 王国の影守りだ。守りの為に着けた僕達の影さえも振り切り、魔を制裁して行くだなんて予想外だよ。」
「あら!“ 守りの為 ”てなはなく、” 試し”または“ 牽制 “の為ではなくって。」
なっ!!彼女だけでなく、皇太弟様までもが影をやっておられるのか!?しかも彼女を物理的に狙ったと。………この帝国潰れはしないだろうか?
自身の安全よりも帝国の将来を気にするイザリア候であった。
「まぁ、そんなことはどうでも良いわ。」
彼女は、イザリア候を扇子で指しそのあと天井にも向けて
「彼と、そこにいる二人は貰っていきますが構いませんね。」
そう言うと彼女の前に死角ができイザリア候の前に3つの人が下りてきた。
「…はぁ~。捕まってしまったみたいなので、仕方ありませんね。彼らは、貴女様に差し上げましょう。しかし、イザリア候はこちらで処分させて貰います。」
他国でこき使われたり、殺されるなら自国で地に還った方が貴族として全うできる。
そうイザリア候は心に決めたが……
◇◇◇◇◇
「彼は殺らしませんよ。私の駒になって貰い、そちら と こちら の橋となって貰いますからね。」
せっかくの帝国への弱味を消されてたまるものですか。
「………。分かりました。その代わり、爵位を返上させ僕が預かる。これでよろしいですか。」
「えぇ。クラ、彼らを先に件の所へ放り込んできなさい。そして、命令違反を起こしたクミト。彼女を部屋に運び寝なさい。明日の朝私の部屋に来るように。」
「諾。」「……はっ。了解です」
ミーシェは森を抜けながら
これで、1つ仕事終わった~。でも、なにか忘れている気が……まぁいいよね?
この後アミールからの質問とお説教攻めにあい、寝ることができなかった。




