信頼
部屋に戻るなり、マヤに手伝って貰いながらコルセットや裾の長い服装から身動きが取りやすいワンピースに着替えた。そのワンピースの下には、短めの乗馬用のズボンをはいた。髪をポニーテールにして、短剣を懐に隠し宮殿の門へと向かった。
すでに門の前には黒の馬を引き連れた、白のティーシャツに黒のズボンのアクアジェンニ。そして、ブラウンの馬を引き連れた 白のシャツと灰色のズボンを身に付けたアミール がいた。
二人とも絵に成るけど……やっぱそこは、白馬で白の軍服で黒馬なら黒の騎士服 が似合うと思うけどな。
ミーシェは、令嬢らしく競歩で彼らのもとに向かった。
「アミール殿下。お待たせいたしましたわ。アクア様もお待たせいたしました。」
「大丈夫だよ。俺もさっき来たところだからね。」
アミールは、口は笑っているが目が怒っているように見えた。
「女性にしては、着替えが速かったな。」
「えぇ。殿方を長く待たせるわけにはいけませんので。」
「にしても、その格好 何処で手にいれた?公爵令嬢ならそんな服持っていないだろう普通。」
「ふふふ。モントヴェルト家に与えられた領地は、森に有るも同然ですからこの様な服を何着か持っていますの。」
って言うのは半分嘘で、一人で暮らしたときに買っておいたって言うのが本当のなんだけどね。
アミールが声を少し荒げ
「ミツキ!お前の馬はそこに居る白馬だ。」
何を怒っているのかしら?昨夜から様子が変ですわね。
「分かりましたわ。」
アミールとアクアの側に居た男性から手綱を受け取り少し濡れた鼻を触ると頬に擦りついてきた。
この子が今日の相方ね。可愛い目をしているわ。
小声で
「今日はよろしくね。」
と言ってから午に乗ろうとすると
「お前馬に乗れるのか!?」
と驚愕の声が聞こえた。
「モントヴェルト家にとって乗馬は、教養よ1つだからな。」
その問いに答えたのはミーシェではなく、アミールだった。アクアは右手を顔に当て
「どこまで規格外なんだよ!」
と呟いた。
だって仕方なくない。森の近くに家があるんだよ?馬車では往復に時間が掛かりすぎるし、家の回りは森だから馬に乗れなければ意味無いしね。
そんなことはおくびにも出さず、洗礼された動作で鞍に跨がり
「では、町に参りましょう?」
「そうだな。」
「ああ。」
アクアとアミールが返事と共に跨がるとアクアが
「それじゃあ、行くか!」
と言って先導し始めた。その横にアミールとミーシェが並び後を追った。
◇◇◇◇◇
暫くお互いに無言で進んでいると二つの道に分かれていた。下りではなく緩やかな坂を上がり、目の前には木々が生い茂っていた。
ミーシェは、疑問を感じ始めていた
おかしい。さっきの道を下れば町に着くはずよ。それなのに森がある方に向かうなんてどう言うこと?
「あの、アクア様。どちらに向かわれているのですか?」
彼は読み取れない笑みを浮かべ
「町は明日移行に向かうことにして、この時間なら丁度良いものが見れる。」
「そうなのですね!それは、楽しみですわ。」
私がいたから町に案内は、延期にした?それとも何か都合の悪いことが起きたのかしら?
木々の間を抜け、ついに森に入った。
その後終始無言で、もりを抜けると……そこには、湖畔が存在した。
アクアは、木と馬に紐で括り休ませた。アミールとミーシェも同じように馬を休ませ、木陰に座った。
「もう直ぐで日がくれる。その瞬間の湖が一番美しい。それをアミールやミーシェにどうしても見せたくてな。」
彼の横顔を見ると何故かとても辛そうだった。
あぁ。この表情は彼に似ているわ。例えどんなに辛くても上に立っ者として、けして誰にも弱さや辛さ・悲しみを見せない孤独な存在。 どうして、そこまで追い詰めていくのかしら?
ミーシェは無意識にアクアとアミールの手を握り静かな湖畔にミーシェの声だけが響いた。それは、まるでそこだけが置き去りにされたかのように静かだった。
「貴方達は、とても似ているわ。自分の感情を隠すことで、自分を守り臣下や民そして自分の両親さえ告げない。そうすることで、皆を守っている。全て自分一人で背負ってしまう。」
ミーシェは、夕日が山に隠れていくのを見ながら
「ねぇ。そんなに貴方達の回りにいる人や、両親さえも信じられないの?」
沈黙の中でポツリと
「……俺は、一度臣下に裏切られた。俺が信頼していた臣下がお茶会を開いた。その時、いつもなら毒味をする者をつけていたが奴の茶会だから大丈夫だと油断した。そこで、毒を盛られ…………あいつはこう言ったんだ!『これで思い道理に事が運ぶ。こんなバカ相手に膝を着くなんてどんなに屈辱だったか!』
それで俺は物置小屋に放置された。だから二度と誰も信じない。」
こんな話ストーリーには無かったわね。やっぱ似ているけど違う世界かな。
それに、このままだとアクアは独裁者になってしまいそう。どうやって止めるか……
「そう。そんなことがあったのね。じゃあ、私の事も信じられない?」
「……お前は……別だ。」
「ありがとう。信じてくれて」
「礼を言うのは、俺の方だ。」
再び沈黙が訪れると
「……別に俺は一人で背負ってなんかない。臣下にも手伝って貰ってる。」
「では、聞くけど。何故近衛を一人もつけていないの?必ず寝るときは近衛を下がらし、剣を抱いているの?」
「…………。そ、それは。」
「怖いのじゃないの?いつ、誰が裏切るか分からないから。寝ている間に暗殺されていたら って思うからではないの。」
「ち 違う!俺は!!」
頑なね。自分の心にまで嘘をついて、そこまで認めたくないのかしら?
「1つ昔話をするわ。これはとある令嬢のお話」
ミーシェはどこか遠くを見ながら語りだした
「彼女の家には、大勢の侍女や従者それに家族一人につき一人の執事がついているとても裕福な家庭。幸せな家庭がある日悲しみの渦に巻き込まれた。それは、彼女が丁度3歳になった時に起きたの。家族と従者・侍女・執事にお祝いされ、幸せの一時にその悲しみが起きたの。」
一息ついてから
「突然裏口の方から何かが割れる音が聞こえたのよ。侍女と従者の半分が様子を見に行ったの。そのおかしさに誰も当時は気づいていなかったわ。暫く待っても戻って来ない従者・侍女を見に長男の執事と夫人の執事が様子見に行った。3歳の令嬢つき執事が
『お嬢様のお部屋が一番安全だと思います。皆様そちらに参りましょう。』
と言ったわ。それに従い皆3階にある令嬢の部屋へ向かったのよ。
その先に裏切りが有るとは知らずにね。
彼女の部屋に全員が入り彼女の執事かわ鍵を閉めると武装した侍女・従者がいた。彼女の執事も燕尾服の下に武装していた。約半分残った従者・侍女と父親の執事によって、彼女達一家は無事に脱出に成功したわ。」
ミーシェは星がちらほら見え始めた空を見上げながら
「それから、王城に近い別荘を新たに購入したり悲劇があった家は潰し花を添えられているわ。本当に信用出来るかを細かく調べ、影まで当主自ら育てた。その令嬢は、疑り深く影を使って調べているらしいわ。」
ミーシェはスッと立ち上り
「誰もが1度や2度裏切られているわ。それをどうやって次に生かし、誰を信じるか調べたら良いのよ。 」
茫然とする二人に笑顔で
「さぁ。帰りましょうこれ以上遅れるとご迷惑がかかりますわよ。」
「…あ、 ああ。」
「そうだな。」
何となく吹っ切れた二人を後ろから追いかけながら王宮に戻った。
彼らを見ている存在がいることに気づいていなかった。




