乗馬!
今日から剣の先生と乗馬の先生が来てくれるようになった。午前中は乗馬の練習、午後からは剣の練習がある。その他にも戦略を教えてくれる先生や政治を教えてくれる先生等様々な人を雇った。こうなった理由は、今日の早朝まで遡る。
早朝と言っても6時過ぎで、私は何時ものように着替え勉強の予習をしていた。
何故公爵令嬢なら侍女に任せば良いと思うだろうけど、前世を思い出してから『自分の事は自分で。着替えを手伝ってもらうなんて!』という羞恥心で食い下がるマヤをどうにか説得し舞踏会以外は自分で着替えると言うことにした。
話は戻るけど着替えが終わり予習をしていたらお父様に呼び出されマヤを連れてお父様の書斎にむかった。
中に入ると机の上には紙の束が1㍍ほど積み上がっていた。その束を見た瞬間顔がひきつるかと思った。
「お父様、お待たせいたしました。」
お父様は紙の束を処理していきながら
「早朝から呼び出して悪かったな。」
と言った。
「奥の部屋で適当に座っておいて。これが終わったら直ぐに行く。」
いつもより硬い表情のお父様を気にしつつ「はい、分かりました。」
言われた通に奥の部屋に移動した。
2・3分してからお父様が部屋に入ってきた。
「ミーシェ、剣や乗馬だけでなく政治も習ってみないか?」
政治ね……。未來の王太子妃は政治のことを知っておくのが常識。だけど私の場合幽閉ルートを回避するための習い事。まぁたくさん知識を持っておいても損はないかしら?
「お父様、それなら政治だけでなく戦略等も覚えた方が良いと思います。」
私の言葉にお父様は一瞬驚いたが顎に手を当てながら小声で
「…まさかな。」
と呟いた。
「?お父様、何かおっしゃいましたか?」
「いいや。そうだな、多く知識があれば役に立つからな。」
「ご用件は以上ですか?」
「あぁ。頑張れよミーシェ。」
私は笑顔で
「はい!お父様。」
と返し自室に戻った。
朝食をとった後、動きやすい服装に着替えマヤをお供に馬小屋へ向かった。
馬小屋の前には、40すぎの女性が立っていた。髪型はセミロングで軽く後で結われている身長は160前半ぐらいで、目がつり上がった厳しめの顔をしている。
この人かな?マヤによれば、お子さんを2人産んでいて現役の頃は騎士として働いていたらしい。馬を操るのがとても上手いから抜擢された……確か、名前が何だったかな?
「貴女がミーシェルミツキ・モントヴェルト様ですね。お初にお目にかかります。私は、『ミオゾティス・ベイリ』と申します。」
いつのまにか目の前にいた女性は、目上の者にする最上級の礼をした。
驚きながらも
「わたくしが、ミーシェルミツキ・モントヴェルトですわ。
マダム ミオゾティス・ベイリ 本日からよろしくお願いします。」
とニッコリ微笑むと
「微力ながらモントヴェルト様のお力になれればと思います。」
お互いに自己紹介が終わると早速馬について教えてもらった。
マダム ミオゾティス 氏によると
『馬の視界は約350度ある。真後ろ以外はほとんど視界に入る。夜行性ではないが、夜目も利き、色もかなり識別できる。視界は広いが視力は良くない。聴覚と嗅覚は敏感で、耳はあらゆる方向に動く。嗅覚は人の匂いを識別し、その人の感情まで読み取る』 らしい。
意外と賢いと言うことが分かった
「この馬は大人しいので触っても大丈夫です。」
そう言われたのが私が小さい頃会いに行っていた白馬の馬だった。
白馬は男の子で私ことミーシェルミツキが5歳の頃にアンダルシアとクォーターホースの間に生まれた子どもで、両親に内緒で毛並みの手入れをしたりしていた。
5年ぶりの再会。半年もたたない間に両親に見つかりそれっきり会えていなかった。
ゆっくりと『スティーブン』に近づき首筋を撫でた。スティーブンは私にすり寄ってきた。それを見てマダム ミオゾティス 氏が
「この子は、モントヴェルト嬢の事を気に入っている様ですね。」
私はその言葉に頷きながら
「だって、この子いえ スティーブン は私が幼い頃にお世話をした子ですもの。」
とマダム ミオゾティス 氏に言ってからスティーブンに話しかけた。
「スティーブン、今まで来れなくてごめんなさい。貴方は、私の事を覚えてくれてたの?」
と聞くとスティーブンは首を縦に振った
「そうなのね。ありがとう、スティーブン。私、とても嬉しいわ。」
泣きそうになりながら言うと再び私にすり寄ってきた。
それを見聞きしていたマダム ミオゾティス 氏が
「鞍を着けて乗ってみましょう。」
と言い出した。私はスティーブンに
「私を乗せて駆け回ってくれる?」
と聞くと首を縦に振りブルンと鳴いた。
「ありがとう。」
と言ってマダム ミオゾティス 氏に教えてもらいながら鞍を着けて草原まで行くことにした。
流石に初めから一人で乗るのは危険なため私の後ろにマダム ミオゾティス 氏が乗り馬の誘導の仕方について教えてもらいながら草原に向かった。草原に着いたら休む暇もなく邸に向かって今度は手助け無しで戻った。
途中で危ういところも有ったけど無事に戻ってこれた。スティーブンを小屋に戻しご飯とブラッシングをした。気づけばお昼になった為後は、世話係りの人に任した。
マダム ミオゾティス 氏は、お父様に報告すると
「次回は、二人で遠乗りに行きましょう。」
と言って帰っていった。
長くなりそうなので乗馬と剣の稽古と分けました。