魔石
エクスドが、魔方陣を杖で描くと複雑な模様が浮かび上がってきた。その真ん中に水晶を置き 長い呪文をすらすらと唱えた。
「モントヴェルト嬢。」
「何かしら?」
「貴女様が危惧した通りでしたよ。」
「やはり、そうでしたのね。」
エクスドとミーシェが話していると
「エクスド。そろそろ解け終わるだろう?」
「解け終りますが、光魔法を私は使えないため1・2週間はこの姿のままかと。」
「お前でも解けない物が有ったんだな。」
「私は、万能ではありませんから。出来ないことが多いですよ。」
「当たって悪い。」
「いえ、お気になさらず。」
ミーシェは、リリーから紅茶のお代わりを頼むと
「お嬢様。申し訳ございません。無くなってしまったので、厨房にもらいに行ってきます。」
「気をつけてね。」
「はい。行ってまいります!」
ガッツポーズをして外に出たリリー。
「クミト。リリーを頼んだわよ。」
「諾」
「ミツキ、今のやり取りは何だ?」
「リリーは、可愛いでしょう。何事も真面目で私を明るくしてくれるわ。」
「そこではない。その後だ!」
私の声が話中に聞こえたのかな?クミトやクラの事は、教えられないから誤魔化さないとね。
「いいえ 何も言ってませんわ。ただ、心のなかで彼女たちの心配をしていたのですわ。」
「………そうか。」
腑に落ちないとでも言いたげなアミールに微笑みを浮かべたまま
「リリーが戻ってきたらお話いたしますわ。」
と頬笑んだ。どこからか微かに殺気をミーシェは感じた。
………何!?この殺気 極僅かなのに射殺さんとしている感じがするわ。
ミーシェが身を震わすと
「ミツキ?どうした。顔色が悪いぞ!疲れが溜まっているんだろう。この部屋の寝室で少し休んでおけ!」
いやいや!何故こう言うときに察しが悪くなるのよ!
「いいえ。大丈夫ですわ。少し嫌なことを思い出しただけですから。」
「ご本人がそう仰っているのですよ。アミール殿下。ここは、意思を尊重させてあげるべきでは?」
「……そうだな ジアン。ミツキ、辛くなったら直ぐに言えよ!」
予想外の助け船に困惑しながら
「えぇ。分かりましたわ。その時は甘えさせてもらいます。」
ソファに座り直しリリーにしては少し遅い気もした。
リリーが紅茶を貰いに行ってから20分も経っているわね。何か有ったのかな?クミトもいるからどうにかなるだろうけど、少し心配ね。
ミーシェは、ソファから立上がり
「アミール殿下、少し急用が有りますので先に下がらせてもらいます。エクスドに水晶を預けます。チャーリーを頼みますね。」
外に出ようとすると右手を掴まれ
「一人で行かせる訳がないだろう。俺がついていく。」
ミーシェは振り返りいつもの笑みではなく、真剣な表情で
「いけませんわアミール殿下。これは、私が成さねばならないことですわ。今は、ほっておいて下さい。」
「せめてジアンを連れていけ!」
「いいえ。彼を連れていけば貴方様の剣が居なくなりますわ。私なら大丈夫ですわ。」
それでも手を放さないアミールにミーシェはため息を一つついてから
「では、こうしましょ。エクスド、貴方の魔石を私に下さい。そして、私は貴方に私の魔石をお渡しします。」
「魔石とは?」
ジアンの質問にエクスドが
「魔石と言っていますが、本当は魔力石と言うものです。魔力石は、魔力持ちがただの石に 魔力=神秘の力 を注ぎ込む事で完成します。」
ミーシェが引き継ぎ
「魔石は、石に注ぐ場合も有りますがそれでは使い勝手が悪いのです。雛で例えると卵の殻を必死に中から割っている感じですね。それをすると時間がかかり、自分の魔力も消費します。ですので、純粋な魔石を作ろうとする人が多いのです。」
エクスドに視線を送った。
「純粋な魔石を作ろうとすると、それなりの魔力量が必要です。どの様な形・大きさを思い浮かべながら形成します。」
エクスドが、直径3センチの白い魔石を手のひらにのせた。ミーシェも丸い直径3センチの透明な魔石を作り出した。
「この色の違いは、込められた魔法の種類ですわ。私の魔石は、あの水晶と同じ働きもしますが主に連絡手段用ですわ。」
「私が込めたのは、防御系魔法。モントヴェルト嬢は攻撃魔法の方が得意とお聞きしましたので。」
「ありがとう!エクスド。これで安心ね。」
「どう言うことか意味が分からない。」
アミールの言葉にミーシェが
「お互いに交換した魔法石があります。それは、込められた魔力を使いきるか・創作者によほどの事が無い限り罅が入ることも砕ける事もありません。
ですので、お互いを知るのに一番手っ取り早方法なんです。」
と言うなりエクスドの魔石と交換してさっさと廊下に出た。
あとは、エクスドが止めてくれるでしょう。
ミーシェは一度与えられた部屋に戻り、エマール帝国の侍女服に着替え廊下に出た。
さてと厨房に向かいましょう。大まかな場所は掴んでいるからそこに居なければ、何かあったってことね。
暫く歩き厨房につくと中から声が聞こえてきた
あら人がいるのなら直ぐに聞けるわね。
『隣国の侍女って躾がなってないわね。それに単純。』
『ここは、国王様専用の厨房です。森の所にあるのがお客様専用の厨房よ。』
『って言ったら何も疑わずに行くなんてね。あの森は、魔物の棲みかなのにね~。今頃死んだかしらね。』
『まぁ侍女だし、国際問題にはならないわね。』
『それより、隣国の王子様とてもかっこ良かったわ!』
『その方の隣に寄り添っていた方が時期王太子妃なんですって!あの方がアクアジェンニ様のお側に居た方が合うと思うのよ!そう思わない?』
『そう思うわ。絵になるお二人だもの。それなら、あの王子は邪魔ね。』
『すでに動いているらしいわ』
ミーシェは音と気配を消しリリーがいる裏の森へ向かった。
ミーシェが帝国の侍女の話を聞いているとき、クラはミーシェを見てハラハラしていた。一方同じとき、エクスドが持っていたミーシェの魔石が透明に少し赤色が混じり始めた。
『エクスド!これは、どう言うことだ!?』
『純粋な魔石なため術者の感情にも左右されるのですよ。』
『赤ってことは、珍しくミーシェが怒ってるってことか?』
『そう言う事になりますね。それもかなり怒っている様ですね。』
『まさか、一滴のこの赤が出るだけでそうとう怒っているってことなんだな!今すぐに俺が!』
『行けませんよ。アミールが行けば余計に火に油を注ぎ込む可能性が高いから行かせませんよ。』
『離せ!ジアン』
『嫌ですよ。俺まで、巻き添えを喰らいたくないのでおとなしくしてください。』
『幼馴染みだろう!』
『それとこれは、別ですよ。』
と言うやり取りがあった。




