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彼が再び我が家に住み着いてから1週間が過ぎようとしている。
私は兼ねてから気になっている事を、訪ねて見る事にした。
「ねぇねぇ」
「何」
私の問いかけに、少しぶっきらぼうだけど言葉を返してくれる。ささいな会話が成立するぐらいには私達の関係は成長した。
「君の名前って、何?」
そう。
拾った当初は口も聞いてくれなかったので聞き逃していた彼の呼び名。今では"君"で定着してしまっているけれど、それでは他人行儀な気がする。
一つ屋根の下。共同とも呼べなくもない生活をしているのだから、もっと和気藹々としていたいものだ。
そのためにも名前を教えて欲しいと思っているけれど、そのせいでまた昔のようになられても困るので嫌というなら素直に諦めるつもりだ。さて、どうでしょう。
「ハク」
長い無言の間があって、やっと口にしたのがその二音だった。
ハク。
それが平仮名なのか漢字なのか、それは些細な事で気にするまでもない。
問題は、それをそのまま私が呼んでいいのかという件についてだ。
ハクと呼び捨てにしたら、プライドが高そうなこやつは怒るのではなかろうか……。
なにか妙案は出てこないものかなぁ。