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家庭的なごちそうを用意して、ケーキを冷蔵庫に託して、シロの帰りを待つ。心臓がばくばくとうるさいのは、プレゼントが気がかりで仕方がないからだろう。
深呼吸、深呼吸。
気分が落ち着いてくると今度は音のない虚無感に襲われて、それをごまかすように私はテレビの電源をつけた。
「はやく帰ってこないかな」
ぽそりと呟いた言葉に返してくれる人はいなくって、こぼれ出た言葉は反響することもなくそのまま部屋の隅へと消えていく。
ため息のこぼれそうな口をぐっと結んで口角を上げて、表面だけでも楽しそうな風を取り繕う。何気なくつけたテレビの画面では、幸せそうにカップルがインタビューを受けていた。
付き合って何年だとか、馴れ初めだとか。私なら絶対に口にできないなとか思いつつ、するとかしないとかの前に、その材料すらないのかと自嘲する。
恋人だとか結婚だとか。
憧れた時期がないといったら嘘になる。けれどそれは最近じゃなくて、ずっと昔の事。独特の胸の高鳴りや、鼓動の強さなんてとうの昔に置いてきてしまった。それなのに、これが恋なんだろうなっていうのは、感覚的には分かってしまうのが少し辛い。
忘れたと思っていたのに。
もう分からないと感じていたのに。
まるで私がまだ望んでいたかのように思い出せてしまうのに、腹が立つ。
こういうのはきっと、嫌いになろうとすればするほど、好きで好きで仕方なくなるのだろう。とんだ天の邪鬼だ。
シロを拾うまではそんなことはなかったのに。




