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"犬"を拾いました  作者: しおん
思いを伝える日
39/42

 


 ぐるぐると頭の中を取り巻く疑問に悩みつつもケーキをロッカーに預け、プレゼントに丁度良いものはないかとお店を覗き込む。店内はごった返していて奥まで見ることはかなわないけれど、出入り口付近に看板商品が飾られているから奥まで見る必要もない。


 愛らしいスノードームに寒い冬を越すためのブランケット、もこもこした部屋靴。色とりどりのマフラーに花畑のような手袋の山。やっぱり、マフラーか手袋が渡しやすいのだろうか。


 シロは頭が白いから、赤いマフラーでも渡せば紅白でおめでたい感じになる。鼻にニンジンでもつければ立派な雪だるまの完成だ。雪に降られながら外で立ち尽くすシロの姿を頭のなかで想像し、一人でクスリと笑ってしまった。変な人だと思われてはないだろうか。


 生地の薄いもの、毛糸で編まれたもの、もこもこした素材のもの。マフラーって、こんなに種類があったとは思わなかった。


 これが自分のものならとりあえず安物でいいやとなるけれど、これはプレゼント。それも、はじめてのクリスマスプレゼントだ。サンタ役も兼ねているのだからそれなりに夢を感じるものを選ばなくては。


 うーん。


 薄手の物は寒そうだけど首にかけてひらひらさせていたらオシャレそうだし、すこし柄が入っている物もこれはこれでシンプルな着こなしに合いそうだ。太い毛糸で編まれたマフラーはふわっふわの肌触りが癖になるし、もこもこしているものはあの犬には少し可愛らしいけど、他のどれよりも暖かそうだった。


 よく考えてみれば、どんなものでもさらりと着こなしそうなあの犬なら、こんなに沢山の選択肢の中から似合うものが一つな訳ないのだから、あれもこれも良いと迷ってしまって当然なのだ。だからといって良いと思ったマフラーを複数渡すのは、なにか違うとも思う。


 一番いいものをとは思っても、一番いいものって結局なんだろうか。考えれば考えるほど訳がわからなくなる。


 マフラーだけを見すぎたせいで、少し視野が狭くなってしまったかもしれない。一つの考え方に固執してしまったて、他にある可能性を無意識のうちに消してしまうのはよくない。

 とりあえず、はじめのプレゼントを考えるところまで戻ってみることにした。




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