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"犬"を拾いました  作者: しおん
思いを伝える日
38/42

 



 目当てのケーキを手にいれて、私はすぐに帰宅するつもりだった。シロが鍵を持っているか気になっていたし、もし街中で遭遇してしまったらどう対処すればいいかわからないからだ。それに今日はクリスマス。カップルだらけの街中に女性が一人でケーキを片手に歩いていたら、寂しい人だと思われるだろう。そんなカップルのバカにしたような視線に晒されるのは、いくつになっても慣れない。


 ふと、思ってしまったんだ。

 シロになにかプレゼントを渡したらどうだろうかと。でかい図体をしていても所詮は高校生、もしかしたらサンタさんなんて夢見がちに信じているかもしれない。


 そう思ったらいてもたってもいられなかった。ケーキを持っているのも忘れて、近くのショッピングモールへ足を向ける。広い施設だし、きっと冷蔵機能つきのコインロッカーぐらい設置されているはず。


 不安に揺れていた心はどこにいったのか、あの犬に渡すプレゼントのことで頭は一杯だった。何がほしいだろうか、何が好みだろうか。考えれば考えるほど、シロのことを何も知らないんだって実感する。あんなに長く一緒にいたのに、好きなブランド、素材感、あまつさえ好きな色すらわからない。


 シロは自分のことを進んで話さないし、私も気にして聞くこともなかった。こんなことになるならもっと聞いておくべきだったな......。なんて、少し前にも似たようなことを思った気がする。


 いつだって後悔してるのに、なにも学習していないんだな、私。


 ファンシーだったり、派手だったりするものはきっとアレには似合わないから、できるだけシンプルでセンスがいいものを選ぼう。


 お財布は......良さげなものを持っていた。

 腕時計は......良いものは高校生にはまだ早い気がする。

 ネックレスは......シルバー系が似合いそうだけど、どれがいいのか私にはわからない。


 というか男の子って何が欲しいんだろうか。



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