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ぐつぐつ、コトコトと、鍋の中から香りが広がる。
今日のご飯はシチューです。
ごろごろと大きめに切った野菜が白の中に彩りをもたせていて、シンプルであるはずなのに少し豪華に見えるところが私のお気に入り。
ほくほくのじゃがいもと、少しシャキッとした玉ねぎ。どろっとした舌ざわりのホワイトソースも出来合いの物を使わずに、一から作っている。
そんな心がこもった一食なのに、彼はなにも言わずに胃の中へ流し込むだけ。いただきますの一言ぐらいは欲しいものだ。
食材に感謝しなさい。
そして食べ終わったら私がくつろぐはずのソファを占領して、そのまま横になり寝てしまうのでしょう?テレビをつけたままで。
一週間も共に過ごせば、だいたいの生活習慣はわかるものだ。食べて寝てたら牛になるぞ、牛に。
そんな文句も胸中でおさめて、食事の片付けを終えた頃に彼にタオルケットを掛ける。完全に眠りに落ちてからでないと、暴れ出す危険性があるのだ。猛獣の如く。
はてさてそんなこんなで私も床に就く。家事に仕事にお世話にと、疲れは絶えない。
これなら死んだように眠れそうだ。