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今日の私は最近で、一番俊敏だったのではなかろうか。
部屋着から洋服へ着替えて、最低限のものをカバンに詰め込む。
履き慣れたスニーカーに足を突っ込んで、あとはシロの居そうな所を目指して歩き出すだけだった。
探す。といっても、あてはない。
家の場所も、彼の名前も、何もかも。全くもって分からないのだから仕方がない。
もしかしたら、海外へ行ってしまっているかもしれない。
でもすこしでも可能性があるのなら、私はそれにかけていたい。諦めずに探していたいんだ。
うちの近くの公園。
駅前の広場。
大通りに面したお店の中。
人のいそうな場所はくまなく探した。でも、そこにシロはいなかった。やっぱりここら辺にはもう……。
そんな事ばかり頭をよぎる。
殴って出て行ったんだ。
もうこんな所には来る筈がない。
きっとどこかであの日のように喧嘩しているに違いない。…けん、か。
そうだ、そうだった。
あの日、彼は、あの場所で、美しく踊っていた。
あの繁華街の裏路地で。
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