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はてさて、美容院での一件があり私は怒っています。プンプンです。
だから、というわけでもないけれど一言も喋らずに家路についていた。だってほら、外で叱ると人様の目があるでしょう?変な噂がご近所で立ったら嫌だもの。
ガチャン。
玄関の扉が閉じたのを音で確認して私は口を開く。
「ねえ、シロ。さっきの態度はなに?」
思ったより低い声だったと思う。自分でもびっくりした、こんなに怒ってたんだって。
そしてシロの正面に立って再度尋ねた。
「さっきのは"何だ"って聞いてるんだけど?」
シロは訳が分からないらしく目を泳がせていた。
無意識でやっていたのならなお悪い。
「何を、怒ってる?」
シロが口にしたのはそれだった。
何を?何をと言いましたかその口は。
「人が話しかけているのに完全に無視してたよね?人の好意は受け取りなさい。話しかけられたら反応しなさい。口数は少ないけど話せないわけじゃないんだから、何かしら口にするのが義務でしょうが」
本気で怒っているわけではない。でも私は、これでシロに殴られようと伝えておかなければならないのだ。いけないことをしたんだと。悪いことをしたんだと。
「私のいうことが気に食わないなら、殴ってくれて構わない。でも、話しかけられたら話すぐらいはしなさい。言いたいことがあるなら聞く。だから話してみなさい、さあ」
人に怒る事なんてもうないとおもっていた。仕事でミスばかりして叱られるだけだと思っていた。
私が幼かった頃は、親はこんな気持ちだったのだろうか?愛故に、心配故に、叱っていたのだろうか。本人に聞くことは恥ずかしいから、一生真相はわからないだろうけど……。
そんなことを考えていたら案の定殴られましたよ。ドカッと頬を。
あの時も見たけどやっぱりいたいな……歯とか折れてなければいいな。
「お前に怒られる筋合いはない」
私を殴ってくれたシロは、そのセリフを残し家から出て行った。
これであの犬ともお別れだろう。もう会う事もない。
「さようなら、私のワンコよ」
殴られた頬を押さえながら私はぽつり、そう呟いた。
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