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私の行きつけの美容院というのは個人経営のあまり目立たない裏通りに存在するお店のことで、ガラス張りになっていたりするところが苦手な私にとって丁度いい所だった。
店長の菅沼さんはこの店唯一の美容師さんでもあり、私の担当美容師だ。
今日はシロの髪の毛を切ってもらいにきたと話すと、快く了承してくれた。
「どのぐらい切りますかね?」
尋ねられてはっとした。
短くすることは考えていたけれど、どの程度の長さにするかなど考えてもいなかった……。
はてさてどうしたものか。
「短く」
そう言ったのはシロだった。
それでは長さが伝わらないというのに……。
うーん、と考え込んでいると菅沼さんはシロの前髪を手に取り、
「このぐらいにしますか?」
それは眉下の、シロを拾った時と同じ長さだった。シロもその長さで良かったらしく、コクリ。と、深く頷いていた。
チョキチョキチョキ。
ハサミの音だけが店内に響き渡る。シロよ、なにか話してくれ。
というのも、切り始めは菅沼さんが何度も話しかけていたのだ。だが、シロはというと全て無視。なんの反応も示しやがりませんでしたよ。全く、どんな躾をされてきたんだか。
これは一から教育し直しですよね?
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