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ガチャリ。
と、玄関が開いてジャリっと砂をこする音がする。帰ってきた。帰って来てしまった。
実はというと、私はあれからすぐに帰路に着いていた。回り道も、寄り道もせずにまっすぐに。
シロが不良というものに属している事なんて、拾った時から知っていたけど、こんな凄まじいものだとは思わなかった。
犬猫のじゃれあいじみた喧嘩と大層違わないなんて、思っていた私は馬鹿だった。
本気で殺そうとしているんじゃないかと疑うほどに、狂気をはらんだ瞳だった。一般人の私でさえ、
目だけで殺されると感じるほどだ。
やる気のない、だらしのない目をしていたシロしか私は知らない。だから怖いんだ。今までのシロが居なくなるんじゃないかって。消えてしまうんじゃないかって。
それを後悔というのなら、私は後悔してもしきれない。
見てしまった事、気付いてしまった事、名付けてしまった事、住まわせてしまった事、拾ってしまった事。
あげようと思えばいくらでもあげられる。それぐらいには、シロと私はきちんと共同生活を送れていたのだ。まるで家族のような生活を。
だというのに、こんな事ぐらいで私達の関係に傷が入ってしまうなんて、情けない。私が弱く事ぐらい、人生を共にしてきたのだから理解している。しているからこそ、悲しいのだ。寂しいのだ。苦しいのだ。
負の感情ばかりが頭を巡ってゆく。
「ただいま」
反抗期の子供みたいに仏頂面でぼそりと口にしたそれは、日常的な挨拶言葉だった。
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