。
予想通りそこはガヤガヤと賑わいを見せていて、これなら騒がしい音楽と共に衰弱しきった心もポイ捨てできると思った。
目が痛くなるような装飾に、心だけでなく体までもが疲労困憊を訴え始める。それでも、今夜はこのまま帰宅してはいけない気がしたんだ。
すれ違う、お酒の匂いを纏ったサラリーマン達。何処かで植え付けられたイメージの様に頭にネクタイはしていなかったけれど、片手にケーキ屋の箱が握られていた。
子供へのお土産だろうか。
私は過ぎ去るその光景を横目に見て、そんな事を思っていた。
繁華街というものは、一本横道へ逸れると別世界を訪れた気持ちになる。
音と光が溢れかえっていた大通りとはちがい、音の無い、光の無い、凍てつくようなひと気の無い道。
カツアゲはこういう道で行われるのだろう。
うちの不良犬もした事があるのだろうか……。
噂をすれば影とは、よく言ったもので。横道に少し足を踏み入れただけだというのに、体と体がぶつかり合い、弾き合う音が聞こえてしまった。殴り合い。喧嘩。
どんな人物がそこにいるのか。夜目の聞かない私には、全く視覚的に認識できないけれど、感覚的な問題で、結論は出ていた。
これは紛れもなく、シロだ。




