知らないのは当人だけ
我が部隊に才能溢れる少女が入ってきた。そんな部下を気にかける隊長の話。
Twitter企画より
登場人物 おっさんと少女
お題は【手をつなごう】
プライベッターに重複投稿しています。
「しゃっくり」が二重投稿になりましたので、差し替えました。
彼は愛想が悪かった。睨んでいるつもりはないのだが、何故かそうとられてしまう。そんな彼の部下になってしまった少女フィーユも、表情というものを持たなかった。男にすればそれはそれで楽なのだが、表情が分からないのも扱いに困った。どんな任務を与えても顔色一つ変えない。彼女は若くして剣の申し子だった。
「お前、どう思ってるんだ?」
「何をですか」
質問の意味が分からないと頭を傾げた。頭上で束ねた白銀の髪がサラサラと揺れる。彼女はわずか十二歳で軍に入った。任務漬けの日々は、彼女を普通の日々から遠ざけている。彼女は軍に入るまで、とある屋敷で用心棒をしていたらしい。本来父と二人で旅をしていたそうだが、野盗との戦いで命を落とした。そこから一人旅になり、屋敷で働いていた。彼女は普通の子どもが知っている愛情を知らぬのだと屋敷の主から聞いていた。だから、くれぐれもよろしく頼むとも言われていた。しかし、彼は三十半ばにして妻も子どももいなかった。軍で生きてきた男には荷が重い。
「俺の隊のことだ」
「はい。連携のとれた部隊だと思っています」
「そうか。なら、お前の世話役ダインのことはどう思う? 歳も三つしか違わないよな」
「よくしていただいています」
「……そうか。お前とよく訓練してるカークはそう思う? 歳も近いし、気が合うんじゃないか?」
「今は腕力で負け続けていますが、いずれ勝ちます」
話が盛り上がらない! 先程あげた男たちは、全てフィーユが好きだ。年頃の女ってものは恋話が好きなんじゃないのか!? 俺が悪いのか!? もっと、女らしく「カークのことどう思う!? 彼ってフィーユのこと、好きみたいよ」とでも言えばよかったのか!? 否、断じて否。俺のキャラではない。
「隊長のことは……」
珍しくフィーユが自分から話しだした。何だ、と目で促す。
「隊長のことは尊敬しています。亡き父のように強く、頼もしいと思っています」
「お、おう。お前はうちの隊で一番若いんだし、もっと俺に頼っていいからな」
フィーユは何故か目を伏せた。な、なんだ!? 俺、余計なこと言ったか!? でも、屋敷のオヤジさんにも頼まれてるし!
「あの、ではお願いしてもいいですか」
今日はつくづく珍しい日だと思う。フィーユがお願いをしたことなんて、今まで一度もない。そんな彼女の願いだ。叶えたい。
「おう。何でも言えよ。城が欲しいとかは無理だけどな」
軽く笑って言うと、彼女は自らの小さな手のひらを差し出した。子どもの手って、俺と比べるとこんなに小さいものなんだな。まじまじと見ていると、彼女は「あの」と居心地悪そうに言った。
「手を繋いでくれませんか?」
「おう。いいぞ」
繋いだ手は小さくて、子どもの体温ってこんなに高いんだなと思った。その隣でフィーユは珍しく笑っていたことを、彼は知らない。
彼は知らない。その様子を見ていたカークが「やっぱりな」と呟いていたことを。そしてダインが「仕方ないさ。彼女を野盗から救ったのは隊長だしな」と慰めていた。
彼女は幼き日に父を失い、隊長に助けられていた。彼女は「結婚するなら、父上より強い人」と言っており、自ずと誰に憧れているのか分かるものだ。二人は手をつないでいる二人を見て、肩を落とした。




