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即興短編集  作者: 花ゆき
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抱きしめてほしいだけ

彼女の様子がおかしくて、心配になった。


書き出し.meにも重複投稿しています。

「愛しているわ。貴方の事を殺してしまいたい位に。逆に、貴方の手で殺されたいとも思ってる。 ……でも本当は、貴方の隣に居たいだけ。何も考えずに、セックスするとかでも無しに、ただただ抱きしめていてほしいだけ」


 彼の上に跨った下着姿の彼女は彼のTシャツをめくり、腹筋をなぞっていた。そしてベルトに手をかけようとしたところで、彼が待ったをかける。


「行動と言葉が一致してないんじゃないっスかね」

「ふふっ、黙ってれば据え膳だったのに」

「突然そう言い出すなんて、何かあると思って」


 彼女はまたがっていた彼から降りて、深く息をつく。向けられた背中が酷く疲れているような気がした。


「あなたが好きよ。でも、自分でも制御できないくらい抱きしめてほしくて、そばにいたくて。いつも私から誘っていたのは不安だからで。……ダメね、こんなこと言うつもりなかったのに」


 小さな背中をした彼女のお腹に腕を回すと、彼女はすんなりと抱きしめられてくれた。手のひらに彼女の肌がなじむ。彼女は時折、迷子のような顔をする。今回もそれの延長線上だろう。彼女の傷が真に癒えるにはまだ時間が必要なようだ。


「じゃあ、今日はこのまま寝るか。こんな日があってもいいだろう」

「ありがとう」


 ベッドの上、二人は横になる。触れた肌からお互いの体温を感じて、安らかな眠りに落ちた。

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