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即興短編集  作者: 花ゆき
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肉食系彼女の舌なめずり

彼と付き合って三ヶ月。そろそろ先に進みたい肉食系彼女と、清らかな彼の話。


即興小説トレーニングにも投稿しています。

 草食系男子という言葉が流行っているけれど、私の彼氏はまさにそれじゃないかと思う。もう社会人だよ? 三ヶ月も付き合ってるよ? そろそろ、大人な関係になってもいいんじゃないかな!?


「おーい、たっつんー! ここだよー!」


 デートの待ち合わせ場所に遅れてくる 大柴 龍典は私の彼氏だ。その名の通り、龍として牙を剥いてくれてもいいと思う。それなのに彼は私を見つけて、一生懸命息を切らして走ってくるわんこなのだ。ああ、可愛い。しかもVネックのTシャツは誘ってるのか。Tシャツから覗く鎖骨をなめ……いや、触りたくなるじゃないか。息を切らしながら走ってくる姿に、内心舌なめずりをする。そんな自分を彼に気づかせないよう、朗らかに声をかける。


「たっつん、そんな走らなくてよかったのに」

「和音が待っててくれてるから、つい」

「汗かいてる」


 こめかみに流れる汗を指で拭うと、彼は一瞬ビクッとして、ありがとうと笑った。触ると獲物は警戒しちゃうみたいだ。慎重に慣らしていかないとね。それなら早速行動だ。


 彼に手を繋ごうとお願いする。すると彼はズボンで手のひらを拭いてから、手を差し出した。私は思った。ピュアすぎるだろうと。いっそもう襲いたい。でもここで我慢だ。我慢すればするほど獲物は美味しくなるというもの。社内で彼を勝ちとった今でも、油断は禁物だ。


「嬉しい」


 私は純粋に楽しそうな表情を浮かべて手を繋ぐ。しかし、それは私が望んだ手の繋ぎ方ではない。手をずらして、彼の指と絡め合わせる。彼の腕がビクッと震える。思わず、フフッと笑ってしまった。


「和音、からかわないで」

「たっつんが可愛いのがいけないんだよ」

「可愛いのは和音だろ」

「ふふ、嬉しい。ねぇ、今晩うちで食べていかない?」


 彼を食すために、もろもろの準備はバッチリだ。


「豚骨! ……豚骨ラーメン食べよう」


 彼は目の前にあるラーメン屋を見ながら言った。あーあ、獲物に警戒されちゃったかな。


「そうだね。まずは昼ご飯食べよ」

「夜は和音の家で食べよう」


 彼からぎゅっと握られた手に、心拍数が跳ね上がる。こんなことをしちゃうから、彼は私にとって特別美味しそうに見えるのだ。


「うん、楽しみにしてるね」


 二人手を繋いで、ラーメン屋に入った。今晩は逃がさないからね。

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