元奴隷野良との出会い
元奴隷である猫の獣人と彼の出会い。
書き出し.meに投稿したものを少し修正しています。
「捨てるなら拾わないで」
白い毛並みをもつ猫の獣人の少女は耳を震わせながら、彼を拒絶した。彼女に振り払われた手には爪傷が出来ていた。遅れて血が滲む。その血を見た少女はすまなそうに耳を伏せ、舌で舐めとる。優しい子なのだろう。猫特有の舌はザリザリとした感覚がした。
「捨てないさ」
「どうしてそんなことが言えるの?」
彼女は分からないとばかりに頭をかしげる。新緑の瞳は今も警戒し続けていた。白い毛並みも逆だっている。
警戒されるのは仕方ないだろう。彼女の服は薄いワンピース一枚。肌も服も髪も薄汚れている。きっと彼女は捨てられたのだ。獣人はその珍しさに飼われることがある。しかし、成長すれば捨てる者もいると言う。
「今まで仲間が拾われていくのを見たわ。どの子も奴隷にされていた。そして飽きたら捨てるの。私だってそう。だから、捨てるなら拾わないで」
「残念ながらお前になってもらうのは奴隷じゃない」
「じゃあ、何」
「嫁だ」
まだよく分からないのか、少女は固まっている。そしてその白い毛並みが染まるほどに顔を赤くした。シッポはブワッと膨らんでいる。
「獣人の私を嫁に?」
「ああ。一目惚れした。その毛並みを愛でたい。今は濁った白だが、風呂に入ればフサフサのツヤツヤにしてやるからな。爪とぎ器も猫じゃらしも魚だって好きなだけ買ってやる」
彼の熱意に彼女はシッポを落ち着かせた。心なしか、ひいているようだ。
「えっと、あなた猫好きなの?」
「愛ですぎて怯えられる程度には」
「この話断らせてもら--」
彼は彼女の首に赤いリボンを飾った。彼女が身動きすると鈴が鳴る。彼女は顔を青くした。獣人にとって婚約の印が、一方的につけられたからだ。
「ちょ! リボン外して!」
「さぁ行こう! 屋敷に行こう! 綺麗にしてやるからな!」
彼女は彼の寵愛に根負けし、彼の飼い猫兼妻になったそうだ。




