表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
即興短編集  作者: 花ゆき
69/117

そんなに意地悪言わないでよ。馬鹿

俺はとある能力で分かったことがある。それは俺達に絶望をもたらす。

※ やや下品です。


重複投稿しています https://kakidashi.me/novels/860

「そんなに意地悪言わないでよ。馬鹿」

「いや、俺は真実を言っている」

「本当なの?」

「あぁ。本当の本当だ」


 彼女はスカートの上の手を握りしめ、モジッと体を揺らした。赤面し、潤んだ瞳が訴えてくる。限界だと。だが、お前だけが限界だと思わないでほしい。俺もとうに限界なんだ。


「この近辺二百メートル内に、俺達が求めている水場はない」

「そんな……」


 彼女は絶望したようにうなだれた。仕方ないだろう。彼女と俺はかってないほどに水場を求め、探していた。そう、先程から小一時間耐えている尿意のために。


「何とかならないの!? その、水場を探す能力でもう一度!」

「すまない。俺も信じられなくて何度も探したんだ。けれど、探せども探せども見つかるのは蛇口なんだ。でも、俺達が求めているのはトイレだろう?」

「どうして、どうしてトイレが近くにないの!? コンビニだってあるじゃない!」


 俺達の真正面にコンビニがあった。車も何台かとまり、人気も多い。普通ならコンビニにはトイレがついている。しかし、天は俺達に味方をしなかった。


「あのコンビニは今現在トイレが壊れている。そのため、トイレの使用が禁止されているんだ」

「どうしてっ!? 私達はただ、普通にトイレに行きたいだけなのに!」

「あぁ。そうだな。トイレを求めて歩き続けて、この有り様だ。絶望するのも無理はない」

「私、漏らすのだけは嫌」

「それは俺もだ。漏らすのは昔に卒業したんだ。復帰などしたくない」


 そこで俺は高速に入っていく車を見て、思い出した。高速道路は長時間トイレに行けない。だからこそ、携帯のトイレがあったはずだ。そう、緊急用組み立て式トイレが! コンビニでそれを買えばいい。俺は決意した。


「コンビニで緊急用組み立て式トイレを買ってくる」

「えっ、それって」

「仕方ない」

「いやぁあああああ! ダメ、恥ずかしい!」

「なら、あの木に隠れてしてくるか?」

「……コンビニついていく」



 二人してコンビニについた。憎らしいのは、修理中と貼札のあるトイレ。


「あぁ、トイレ。あなたはそうしてそんなにつれないの。少しだけでいいの。少しだけ、使わせてくれれば」

「豊島、落ち着け。例えこのトイレが使えなくても、俺達にはこの緊急用組み立て式トイレがある」

「深川くん! そうね、私耐えてみせる」


 彼女はキリッとした表情で俺を見た。よし、気持ちは持ち直したようだ。そこで周囲の視線に気づく。思い出した。ここはコンビニだ。俺達は尿意の上に、羞恥心とも戦わねばならないのか。


「お、お客様。少しよろしいですか?」


 コンビニの店員に呼び出された俺達。周囲の客の、「ああ、こいつらとうとう」という視線が痛い。だが、俺達は勝利した。ああ、あのコンビニ店員は神だ! 従業員用トイレを貸してくれたのだ! ありがとう!


「この御恩は一生忘れません!」

「ありがとうございます!」

「いや、忘れて下さい。あなた達があまりにも……ゴホンゴホン。お客様のお役に立てて、光栄です」


 店員の哀れなものでも見るかのような視線が気になったが、俺達は今いいようのない開放感に満たされている。ああ、トイレって素晴らしい!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ