そんなに意地悪言わないでよ。馬鹿
俺はとある能力で分かったことがある。それは俺達に絶望をもたらす。
※ やや下品です。
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「そんなに意地悪言わないでよ。馬鹿」
「いや、俺は真実を言っている」
「本当なの?」
「あぁ。本当の本当だ」
彼女はスカートの上の手を握りしめ、モジッと体を揺らした。赤面し、潤んだ瞳が訴えてくる。限界だと。だが、お前だけが限界だと思わないでほしい。俺もとうに限界なんだ。
「この近辺二百メートル内に、俺達が求めている水場はない」
「そんな……」
彼女は絶望したようにうなだれた。仕方ないだろう。彼女と俺はかってないほどに水場を求め、探していた。そう、先程から小一時間耐えている尿意のために。
「何とかならないの!? その、水場を探す能力でもう一度!」
「すまない。俺も信じられなくて何度も探したんだ。けれど、探せども探せども見つかるのは蛇口なんだ。でも、俺達が求めているのはトイレだろう?」
「どうして、どうしてトイレが近くにないの!? コンビニだってあるじゃない!」
俺達の真正面にコンビニがあった。車も何台かとまり、人気も多い。普通ならコンビニにはトイレがついている。しかし、天は俺達に味方をしなかった。
「あのコンビニは今現在トイレが壊れている。そのため、トイレの使用が禁止されているんだ」
「どうしてっ!? 私達はただ、普通にトイレに行きたいだけなのに!」
「あぁ。そうだな。トイレを求めて歩き続けて、この有り様だ。絶望するのも無理はない」
「私、漏らすのだけは嫌」
「それは俺もだ。漏らすのは昔に卒業したんだ。復帰などしたくない」
そこで俺は高速に入っていく車を見て、思い出した。高速道路は長時間トイレに行けない。だからこそ、携帯のトイレがあったはずだ。そう、緊急用組み立て式トイレが! コンビニでそれを買えばいい。俺は決意した。
「コンビニで緊急用組み立て式トイレを買ってくる」
「えっ、それって」
「仕方ない」
「いやぁあああああ! ダメ、恥ずかしい!」
「なら、あの木に隠れてしてくるか?」
「……コンビニついていく」
二人してコンビニについた。憎らしいのは、修理中と貼札のあるトイレ。
「あぁ、トイレ。あなたはそうしてそんなにつれないの。少しだけでいいの。少しだけ、使わせてくれれば」
「豊島、落ち着け。例えこのトイレが使えなくても、俺達にはこの緊急用組み立て式トイレがある」
「深川くん! そうね、私耐えてみせる」
彼女はキリッとした表情で俺を見た。よし、気持ちは持ち直したようだ。そこで周囲の視線に気づく。思い出した。ここはコンビニだ。俺達は尿意の上に、羞恥心とも戦わねばならないのか。
「お、お客様。少しよろしいですか?」
コンビニの店員に呼び出された俺達。周囲の客の、「ああ、こいつらとうとう」という視線が痛い。だが、俺達は勝利した。ああ、あのコンビニ店員は神だ! 従業員用トイレを貸してくれたのだ! ありがとう!
「この御恩は一生忘れません!」
「ありがとうございます!」
「いや、忘れて下さい。あなた達があまりにも……ゴホンゴホン。お客様のお役に立てて、光栄です」
店員の哀れなものでも見るかのような視線が気になったが、俺達は今いいようのない開放感に満たされている。ああ、トイレって素晴らしい!




