こんなところにいたんだね
彼の体操着を着ているところが見つかってしまった。ヤバい!
https://kakidashi.me/novels/826 こちらのものを加筆投稿しています。
「こんなところにいたんだね」
ヤバい、見つかった!
「って、あれ? どうして俺の体操服着てるの」
「これは、あの、その……。文化祭の衣装の寸法が測りたくて!」
「あっ、なるほど。でも、お前にはちょっと袖が長いみたいだな。ダボダボだ」
彼が苦笑しながら袖を折り曲げてくれた。折り曲げた数だけ、体格が違うんだと改めてドキドキした。私が文化祭の衣装係だったからごまかせたものの、この場をどうやってやり過ごそうか。好きな彼の体操服が机の上に置かれているのを見て、つい着てしまったのだ。
「でも、他のやつの寸法もこうして測ってるのか? なら妬けるな」
どういうことだろうか。ぎぎっと顔を彼に向けると、彼は教室に差し込む夕焼けの光で顔が赤くなっていた。なぜか、場の空気に身動きできなくなる。
「秋宮のこと探してたんだ。俺は秋宮が好きだよ」
照れたように笑う彼が眩しくて、罪悪感がこみ上げる。私は反射的に頭を下げた。
「ごめんなさい!」
「やっぱりダメだっ――」
「衣装の寸法測るなんて嘘なの! 本当は春野くんの服が着たかっただけなの。それは、春野くんが好きだからで。だから、嘘つけないって思った。ごめんね」
沈黙が辛い。怒られても仕方ないことをしてしまった。
「許すよ。ただし、手を繋いで途中まで一緒に帰ってくれるなら。だから、お付き合いしませんか」
「え!?」
こんなにすんなりと許されていいのだろうか。戸惑いに顔を上げる。すると彼は照れくさそうに目尻を下げて笑っていた。
「めでたく両思いになったことだし」
「でも、体操服!」
「ダボダボの袖が可愛くて、正直キュンときた」
な、な、な、なっ……!? 言葉にできない思いが体内に蓄積していく。かろうじて私が出来たのは、彼に手を差し出すこと。
「じゃあ、一緒に帰ろうか。秋宮」
私はコクリと頷いて、夕暮れに染まった通学路を手を繋ぎながら帰った。




