表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
即興短編集  作者: 花ゆき
28/117

優しい嘘

3つの恋のお題:食べてしまいたい/どうしたら振り向いてくれる?/嘘つき、とそのくちびるが言った http://shindanmaker.com/125562


僕はいつも恋をしているキャラクターだ。そんないつも通りに疲れてしまったんだ。だから今度は僕に落ちないような、僕に興味のない彼女を口説いている。

 彼女を熱心に口説いておきながら、心は冷めていた。熱くなったら、その恋が終わった時悲惨だろう? 僕はいつも恋をしているキャラクターだ。誰かを口説いているのが、いつも通り。そんないつも通りに疲れてしまったんだ。だから今度は僕に落ちないような、僕に興味のない彼女を口説いていた。


「どうして君はそんなに僕を魅了してやまないんだろう。食べてしまいたいくらいだ」

「そう」

「君はどうしたら振り向いてくれる?」


 彼女は冷めた目をして振り返る。嘘つき、とその唇が言ったのが聞こえた。


「無理にそんなこと言わなくてもいいよ。鬱陶(うっとう)しいし」


 もう、好きだと言わなくていい。安堵する。ほっと一息ついた僕を、彼女は冷めた目で見続けていた。


「ずるい人。あなたは甘言ばかり言って人の心の隙間に入ってくるくせに、あなたに人が踏み込もうとしたら拒むのでしょう? ずっと愛を囁かれる人の身にもなりなさいよ」


 彼女の目が揺らいだ。冷めた目に感情が少し見えることに気づく。彼女は僕の薄っぺらい愛の言葉に何も反応しなかった。けれど、ひっそりと恋を積もらせていたのだろう。彼女が覗かせたのは、恋する瞳だった。


「あなたなんて大嫌いよ」


 無表情だった彼女が泣いた。熱い涙が頬を伝う度に、彼女の涙を拭いたいと思った。僕が傷つけたのだ。彼女の涙だけが、僕の胸を揺さぶった。


「何一つ本当のことなんて言わないもの」

「今から言うことだけは本当だよ。君の涙を拭ってあげたい」

「優しい嘘ね」

「今はそれでいいよ」


 彼女の涙に触れながら、彼女の心に触れていきたいと思った。まだ臆病だから、嘘の中に本音を隠しながらでもいいだろうか。彼女はそんな本音も、きっと嘘だと言ってしまうだろうけれど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ