優しい嘘
3つの恋のお題:食べてしまいたい/どうしたら振り向いてくれる?/嘘つき、とそのくちびるが言った http://shindanmaker.com/125562
僕はいつも恋をしているキャラクターだ。そんないつも通りに疲れてしまったんだ。だから今度は僕に落ちないような、僕に興味のない彼女を口説いている。
彼女を熱心に口説いておきながら、心は冷めていた。熱くなったら、その恋が終わった時悲惨だろう? 僕はいつも恋をしているキャラクターだ。誰かを口説いているのが、いつも通り。そんないつも通りに疲れてしまったんだ。だから今度は僕に落ちないような、僕に興味のない彼女を口説いていた。
「どうして君はそんなに僕を魅了してやまないんだろう。食べてしまいたいくらいだ」
「そう」
「君はどうしたら振り向いてくれる?」
彼女は冷めた目をして振り返る。嘘つき、とその唇が言ったのが聞こえた。
「無理にそんなこと言わなくてもいいよ。鬱陶しいし」
もう、好きだと言わなくていい。安堵する。ほっと一息ついた僕を、彼女は冷めた目で見続けていた。
「ずるい人。あなたは甘言ばかり言って人の心の隙間に入ってくるくせに、あなたに人が踏み込もうとしたら拒むのでしょう? ずっと愛を囁かれる人の身にもなりなさいよ」
彼女の目が揺らいだ。冷めた目に感情が少し見えることに気づく。彼女は僕の薄っぺらい愛の言葉に何も反応しなかった。けれど、ひっそりと恋を積もらせていたのだろう。彼女が覗かせたのは、恋する瞳だった。
「あなたなんて大嫌いよ」
無表情だった彼女が泣いた。熱い涙が頬を伝う度に、彼女の涙を拭いたいと思った。僕が傷つけたのだ。彼女の涙だけが、僕の胸を揺さぶった。
「何一つ本当のことなんて言わないもの」
「今から言うことだけは本当だよ。君の涙を拭ってあげたい」
「優しい嘘ね」
「今はそれでいいよ」
彼女の涙に触れながら、彼女の心に触れていきたいと思った。まだ臆病だから、嘘の中に本音を隠しながらでもいいだろうか。彼女はそんな本音も、きっと嘘だと言ってしまうだろうけれど。




