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即興短編集  作者: 花ゆき
115/117

お嬢様と奴隷

冒頭奴隷視点。それ以外はお嬢様視点です。

R15。

「ははははは」


 月の光が差し込む薄暗い室内で、奴隷は狂気の滲む乾いた笑みを浮かべる。彼の仕えるべきお嬢様は腕の中で気絶していた。綺麗に結い上げた黒髪がほつれ、首筋には鬱血の跡がある。大切に想っていたお嬢様を自分が穢してしまった。

 仕方ないだろう? 俺とお嬢様は身分が違う。結ばれるはずがない。奴隷に未来はない。だから奪いたかった。

 お嬢様はロマンス小説が好きなだけあって、恋や情事に夢を見ていた。そんなもの、男は簡単に欲望で組み伏せてしまうのに。


 結果、お嬢様は俺に大切なものを奪われた。

 ごめん、お嬢様。

 これでお嬢様の婚約はダメになるだろう。悪いのはくすぶる気持ちを消せなかった俺だ。



****



 私は奴隷に婚約を台無しにされた。貴族の女は処女であることが価値となる。そのため必死に抵抗したが、力で押さえつけられた。

 怖かった。月の光を受けて光る彼の金糸は聖なるもののように見える。しかし、彼は容赦なく純潔を奪っていった。その上彼はことが露見するように情事の痕跡を消さなかった。私は深緑の目を揺らしながら、己が転落していく様を見た。残ったのは瞳に灯る暗い炎。


 奴隷はあれ以来、私を怯えたように見る。

 叱りを受けると思ってるんじゃない? 当たり前じゃない。私は将来を台無しにされたのよ? 許さないわ。

 首をはねられるはずの彼を苦しめるためだけに生かした。



 ふいに思いついた外出に彼を伴う。彼は数歩後ろを申し訳なさそうについてくる。彼は金髪碧眼、まるで天使のような顔立ちをしている。容姿がいいから、奴隷としてうちに買われたのだ。

 その天使のような顔立ちが肉欲に染まるのを私は知っている。基本的に主に絶対服従な彼だからこそ、私は放置していたのだ。まさかあんなことになるとは思わなかった。自分の甘さが嫌になる。忌々しさに睨むと、彼は目を伏せた。


 人気のない公園で彼をベンチに座らせて、私はその膝の上に座る。案外がっしりとした座り心地だ。彼の視線はあちこちとさまよう。彼の手は私に触れたそうに伸ばされ、後わずかという距離でおしとどまった。その煮え切らない手が憎らしい。あの夜は乱暴に私を暴いたというのに。


 手袋を外した手で握ると、男はまずいと思ったのか手を離そうとバタバタ抵抗する。それでも私を彼の膝の上から落とさないのだから、ぬるいわね。

 彼は私が好きなのだ。だから嫌われたくないと怯える。怪我をさせないようにと遠慮する。あの時は、いくらやめてと言ってもやめてくれなかったのに。この体は男を知っている。戻れないことが腹立たしい。


 彼の手に爪をたてると、彼は痛みに目を伏せたものの、耐えてみせた。そうやっていじらしい姿を見せたら、私が許すと思っているのかしら。

 貴族の優しい旦那様に愛される未来は消えた。今の私は奴隷の膝の上。

 まただ。私が睨みつけると彼は怯えたように、どこか嬉しそうに私を見る。腹が立つ。あなたを支配するのは私なのよ。


 彼の指を含んで舌で包むように舐めると、彼はゴクリと喉をならした。その先を期待する目だ。私があなたの望みを叶えると思って?

 私は彼の指を離した。粘液が私の口紅をひいた唇から指へ繋がり、切れた。私は彼の膝の上から降りて、貴族特有の笑みで微笑む。


「家に帰りましょう? あら、どうかした?」

「……何でもありません」


 男はぎこちなく歩き始めた。苦しそうに歩く姿を見て、私はせいせいする。女を知った体にはきついだろう。もっと苦しめばいい。

 私はまるで何事もなかったかのように手袋をつけた。




「お嬢様、あなたはひどい人だ」


 数日後、深夜にろうそく一つで部屋に忍び込み、私にまたがる彼の姿で彼女は目覚める。


「挑発ばかりして俺を玩ぶ。俺が反抗しないと思っているんだ。あなたの純潔を奪ったのが誰だか忘れているんじゃないか。そこがあなたのたまらなく可愛いところだ。都合のいいことしか見ない」


 彼の指が唇をなぞる。危険だ。あの日の再来だろうか。逃げようと暴れるものの、力でおさえつけられた。睨みつければ、彼は愉快そうに彼女を見下ろす。


「今頃抵抗とは間抜けなことだ。お嬢様、男は抵抗すればするほど燃える生き物だということを教えてさしあげます」


 首筋に吸いつく彼の行動からこの後のことは読みとれて。どうすればいいと思考を巡らす私の目を見て、彼は碧眼の目を柔らかく細めた。

 知っていた。彼が本当に愛してくれていることを。それを私はからかって遊んだ。いわば、これは自業自得。


 恋愛小説のような恋に憧れておきながら、今私の心にいるのは彼だなんて笑えてしまう。だから彼は私が怒りをぶつけるたびにどこか嬉しそうにしたのだろうか。この数日、彼のことばかり考えていた。そんなの彼の思惑通りじゃないか。なおさら腹が立つ。思い通りになんて、させてやらない。

 明日からまた、私は彼を挑発するだろう。


 巡り巡る。

自室で、笑いながら抱きかかえる奴隷をかきましょう。 #odainano http://shindanmaker.com/68894


ベンチで、抵抗を押し切って指を舐めるお嬢様をかきましょう。 #odainano http://shindanmaker.com/68894

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