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即興短編集  作者: 花ゆき
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マッチョに言い寄られてました。

 俺は一ノ瀬祥太郎。この度、秋からこの魔磨流学園小等部に転入することになった。この学園はエスカレーター式で、進学が楽だと聞いている。父の転勤についてきてよかった。その認識はすぐに改めることとなる。


 校舎で見かける女性は全て筋肉質だった。俺を案内してくれる中等部生徒会長は黒髪が美しく、日焼けもしていて筋肉質……、いや、マッチョだった。セーラー服がぱつんぱつんになるほどの筋肉の持ち主だ。ちなみに小等部生徒会長は武者修行中らしい。


 代わりに中等部生徒会長が役員を紹介してくれた。俺は副会長、会計、書記を見て悟った。筋肉順に役職が振られている。この学園は筋肉カーストなのだ。進学が簡単なのは筋肉が重視されるためだった。俺はついていけるだろうか。男子生徒もマッチョで、もやし体型の俺だけが浮いていた。


「女生徒の方が多いですね」

「ここは元々女子校だったからな」


 元女子校でマッチョ!?

 俺の頭の中はえらいこっちゃえらいこっちゃと踊り狂っていた。


「あなたは紋なしだから、気をつけた方がいい」

「何を言って……」

「早速始まったようだ」


 生徒会長の目の先には、俺の前でわざわざ瓦割りする筋肉質な少女がいた。彼女の気合と共に五枚もの瓦が割れる。彼女は挑むように生徒会長を見た。生徒会長は彼女の割った枚数を見て鼻で笑う。その自信は確かなようで三倍もの瓦を割り、地面にヒビまで入れてしまった。マッチョすげー。


「今のは求婚だ。男子生徒の前で強さを見せ、受け入れられた場合つがいになる。つがいがいる男子生徒は襟に女生徒の紋がついている。紋なしはフリーとして先ほどのように求婚される。しばらくは私が君を守ろう。力づくでつがいにする者も中にはいるからな」


 この学園おっかねー。


「それでだな、一ノ瀬くん。このままではホームルームには間に合わなそうだ。超特急で君を送り届けよう。すまないが、じっとしてくれ」


 生徒会長のたくましい腕が俺をひょいと抱き上げた。

 えっ、持ち上がるものなのか? 俺ってそんな軽い?

 きゃーと悲鳴が聞こえる。一つはお姫様抱っこ羨ましいという可愛らしいもの。もう一つは生徒会長に抱き上げられるなんてと嫉妬の混じったもの。もう一つは新入りの男に手出ししおって、というものだった。どうやらすでに俺は狙われているらしい。


「やはりな。君は愛らしいから。君を送り届けてから、私は中等部に戻ろう」

「別に俺一人で小等部に行けますよ。悪いですし」

「なぁに、私は遅刻したことがないのだ。私に任せてくれ」


 そう爽やかに笑う生徒会長に不覚にもキュンときた。いや、おかしいだろ。何がキュンだ。こんなトキメキはいらないから!



 それから俺は中等部生徒会長に守られながら、小等部を卒業した。体育に力を入れている学園だというのに、俺にはまったく筋肉がつかなかった。正直びっくりだ。背も同級生の方が高い。そんな俺が無事に小学校を卒業できたのは中等部生徒会長のおかげだ。


「たった半年だが、君への求婚は激しかったな」

「はい。何回瓦割り、筋肉美を見せつけられたか。今の俺があるのはどれも生徒会長のおかげです」


 襟にあるのは学年バッチのみだ。俺はつがいを防いだのだ。


「来年君は中等部一年、私は三年になるわけだが、どうだろう。ここで決めておくと後が楽だと思うぞ」


 なるほど。卒業を期に新たな誓いをするわけだ。そうすれば、新たな中等部の生活でも頑張れそうだ。流石生徒会長だ。


「君は他の奴らとは違って儚げだから、まだまだ私が守らなければ。幸い君は私の好みからも外れていないし」


 生徒会長が何か照れたようにボソボソと言っていたが、きっと俺のためを思ってのことだろう。大丈夫、任せてください。俺だって、男を見せますよ!


 こくりと頷けば生徒会長は目を乙女のように輝かせた。あれ、生徒会長女の子……女の子だったね。


「俺は決めました。在籍中、フリーでいることを!」

「なぜだぁぁぁぁあ!」


 生徒会長が崩れ落ちた。



 それから生徒会長は何故か中等部在籍中フリーで居続け、『孤高(笑)の獅子』と名を残した。そして俺も宣言した通りフリーを貫き、『攻略不可』と名を残した。途中何度か生徒会長が無理してフリーになくてもと心配してくれたが、やりとげることができてよかった。


 小等部と中等部でいくら鍛えようとしても筋肉のつかない彼を、女生徒たちはテレビの向こうにいるアイドルのように扱っていた。『攻略不可』とは、皆で愛でるための神聖な誓いでもある。そんな彼が高等部に進む。かの生徒会長から彼を守らなければと、進級する生徒は体に磨きをかけるばかりだった。



 舞台は高等部にうつる。


「待ってろよ、祥太郎くん。『孤高(笑)の獅子』だなんてつけられた雪辱を晴らしてやる!」


 これからもマッチョに言い寄られることを彼は知らない。

3日以内に12RTされたら『マッチョに言い寄られてました。』というタイトルで『オネショタ』の話を書きます。 http://shindanmaker.com/485745

診断がきっかけです。

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