ねえ、言ってみて
短いです。
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「ねえ、言ってみて。俺のことが好き?」
「ねえ、言ってみて。俺のことが好き?」
女の子の言葉を男の子がそのまま繰り返す。
「可愛いけど違う! 『俺のことが好き?』だけ言ってみて」
「俺のことが好き?」
これでいい? と傾げられた頭で彼女は追撃をくらった。
「あざとい、可愛い、つまりあざかわ! 小悪魔! 嫁にしたい!」
「お嫁さんになるのは麻耶ちゃんじゃないかな。いずれはそうしたいな」
後半の言葉はあざかわに悶えている彼女へまったく届かなかった。
そんな彼女によるあざかわ教育を受けた彼は、数年後に気づく。
これって、どんどん恋愛対象から外れてないか?
麻耶ちゃんが喜ぶからあざかわをやってみたが、どうも異性として意識されない。身長も力も彼女より上だというのにどこで間違った。
「麻耶ちゃん、好きだよ」
「その頭の傾げ方最高よ! 目の潤ませ方もばっちり!」
鼻息荒く興奮され、告白も真に受けてもらえない。一番困るのはあざかわが身に染み付いてしまって、息をするようにあざとくなってしまうことだ。おかげでそっちにばかり麻耶ちゃんが反応してしまう。
ああもう! 彼女に好かれたいからってここまでやってきた俺もバカだ! 麻耶ちゃんはあざかわな俺バカだ!
「麻耶、好きだ」
「……反抗期!? 反抗期なの!? お赤飯炊かなきゃ!」
名前呼び捨てした上に告白して振り絞った勇気が反抗期扱い。俺、泣いていいかな……。
彼女のうっすら染まった頬を彼は知らない。




