指切り
生命の力に満ちた瑞々しい女がいた。はち切れそうな胸は隠しているものの、臍は剥き出しになっており、見る者の視線を惑わせる。ノースリーブの腕からは毛皮に覆われた健康的な腕がのぞき、短パンからは毛皮に覆われたむっちりとした脚がのぞいていた。彼女に劣情を抱いた雄の視線が胸と脚に絡みつく。その視線すら彼女は相手にしない。
縄張りの主である彼女は強くなりすぎた。彼女に挑み、つがいになろうという雄はいつしかいなくなっていた。彼女の群れを作り、豹獣人としての強さをしめしながら、同時に孤独を感じていた。
ある日縄張りを奪おうと挑んでくる少年が現れた。未だ少年の域を抜けきらない顔立ちをしているが、彼女と同じ種族の雄だ。彼女は幼い少年の挑戦をあしらい、手加減していた。それが彼には屈辱なのか、毎回「覚えてろよ!」と去っていく。
彼女からすれば、戦うほど昨日よりも少し成長している彼が誇らしい。いずれは力をつけ、ここよりも大きな土地を縄張りにできるだろう。同族として彼に将来性を感じていた。
「まだあの子、縄張り奪いに来てるのね」
「うん、今日も私が勝っちゃった。安心して」
負けるつもりはないと笑えば、何故か友人はため息をついた。
「あのさ。あの子が勝ったとするじゃない。そしたら私達の群れの長として妻を探すことになるでしょ。それは必然的に強いあんたになると思うのよね」
「えっ、例えばの話でしょう?」
「そう。でも、そう考えてもいいくらいあの子はあんたに拘ってる。この縄張りの主を嫁にするなら、あんたに勝つことが絶対だもの。ここの豊かな土地目当てじゃないかもしれない。そうは思わない?」
私は何も言えなかった。この土地は草原で気候の変化も緩やか。農作物も豊かだ。そのため、この土地を狙う者は数知れない。当然彼もそうだと思い込んでいたが、彼の真意はどこだろうか。そればかりは聞いてみないと分からない。数分ばかり考えて、面倒くさくなった私は直接聞くと決めた。
今日も挑んできた彼を倒す。悔しそうに這いつくばっている彼の顔を覗いた。
「ねぇ、君って私のこと好きなの?」
「な、な、な、何を!」
やっぱり直接聞くのが早い。真っ赤になって当たりのようだ。こんなすぐ顔に出して、若いなと思わず笑ってしまった。それをからかわれたと感じたのか、彼は立ち上がって膝の土埃を払う。キッと睨んでくるが怖くない。
「今に見てろよ、絶対勝つ! だから、お前は俺以外に負けるなよ! 指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます、指きった!」
約束のおまじないが懐かしくて、生まれ里を思い出した。彼の体温が離れて我に帰る。
「あっ、勝手に! でも、君には元の群れがあったでしょう?」
群れを離れるのは成人してからだ。彼が群れを離れるのにはまだ三年ほど早いように見える。
「あんな群れ、知らない。兄弟で殺しあわなきゃ群れの長になれないなら、俺はいらない」
彼は群れを自ら抜けたようだ。強き者が長になるのはどこも同じらしい。決意した瞳から、彼はもうその群れに戻ることはないだろうと察した。
「でも、お前の縄張りはあったかいから居心地がいい。その……好き、なんだ。か、勘違いするなよ! 縄張りのことだからな! いつか必ず勝ってみせる!」
まったく、この子はこういうところが可愛い。強さを積み重ねていく彼にいつか負ける日も近いだろう。
「そう。楽しみだわ」
彼女のまだらな尻尾が彼から見えないところでこっそりと揺れた。
#言葉リストからリクエストされた番号の言葉を使って小説を書く
リクエスト 「昨日」「指切り」「決別」
ショタな豹の獣人で縄張り争いをする話を書きます。 #獣人小説書くったー
http://shindanmaker.com/483657
こちら参考にしています。




