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即興短編集  作者: 花ゆき
106/117

指輪

書き出し.meにも重複投稿しています。

1000字程度。

現代ものです。

「もう、それ以上は何も言わないでほしい」


 トドメとなる言葉が紡がれる前に、彼女の言葉を断ち切った。彼女は目を丸くしてこちらを見て、数秒後には歪んだ笑みを浮かべた。


「どうして。どうしていつも、言わせてくれないの?」



 そんなの決まってる。彼女との関係が終わってしまうからだ。お試しで付き合い始めたものの、いつしかこちらの方が好きになっていた。対して、彼女の目は次第に冷めていった。あんなにキラキラとした目で俺を見ていたのに。

 最近は毎日どこかへ行っているようだ。つなぎとめようと手を尽くしてきたが、もう限界に近い。彼女の指から俺が贈った指輪が消えたのはいつだったか。


「だから、聞いてよ! お願いだから!」


 彼女はとうとう声を荒らげた。怒りで震えているようだ。もう、いい加減逃げるのはやめよう。胃がキリキリする中、彼女を見つめた。沈黙が流れる。俺がやっと聞く気になったのだと伝わったらしく、彼女は口を開いた。



「指輪、なくしちゃったの! ごめんなさい!」


 彼女が言ったのはそれだけ。別れの言葉ですらなかった。



「えっ、それだけ?」

「それだけって何よ。すごく悲しくて、申し訳ないのに。顔だって合わせにくくて。謝ろうって思っても機嫌悪いし、言わせてくれないし。毎日探してるのに見つからないし……」

「……フラれるのかと思った」

「ないない。私から告白したんだよ? 私の方がいっぱい好きに決まってる」


 ほっとすると、急に五感が戻ってきた。自分の手のひらに汗をかいていると気づいた。こんなに、彼女を好きになっているだなんて思わなかったけれど。


「なぁ、新しい指輪買いに行こう」

「ヤダ。初めてもらった指輪がいい」

「仕方ないな。それじゃあ、俺も一緒に探すから」

「ほんと!? あのね、バイトで指輪外したんだけど――」


 導くように彼女から手を繋いだ。手を繋ぐことすら久しぶりだ。彼女は指輪をなくしたことを隠したがったし、俺はいつも手を繋いでいたから、もう十分だと思って繋がなかった。それが今、彼女から伝わる体温で気持ちいい。

 そうだ。数年後には彼女に本物を贈ろう。スッキリした彼女の横顔を見ながら一人胸に誓った。


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