告白の練習
告白の練習をしていたら、好きな彼女に見られてしまった。思わず彼は忘れてくれと口にするが――。
書き出し「お願いだから、今見た事は忘れてもらえないかな」
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「お願いだから、今見た事は忘れてもらえないかな」
忘れてほしい。彼女に告白するための練習を見られてしまった、だなんて。なんてかっこ悪いんだろう。もう僕の気持ちはバレてしまっただろう。告白の練習が告白になってしまうだなんて、誰が予想しただろうか。彼女が口を開いて振られてしまうと思った時には、さっきのように声に出していた。彼女が話す前にこうやって自衛してしまうから、今までも彼女に告白できなかったんだ。僕は臆病者で、卑怯だ。
なかったことになんて、できるはずがない。彼女は僕の気持ちを知ってしまったのだから。それを忘れてと言いながら、意識してほしいと思っていた。
僕が恐る恐る顔を上げると、彼女はまだ僕の前にいた。返事なんてほしくなかった。好きだから、恋を終わらされてしまうことが怖かったのだ。
「あのさ、忘れるなんてできないよ。だって、弥市くん一生懸命だったから」
彼女の忘れられない人になったのだろうか。嬉しいと感じる自分がいた。
「でも、どうして自分から振られるって決めつけちゃうの? 私の気持ちは無視?」
「ごめん……、でも」
そこで、彼女の比較的冷たい手が僕の頬を包んだ。彼女の強い視線にひきつけられた。僕は彼女の芯の強さが好きなんだ。そう再認識した。よくよく見ると、彼女はどこか怒っているようだった。
「許さない。忘れないから。さっき、振り向きざまに告白した方がいいかなって練習してたことも、ただ、好きだって言ってたことも」
「本当に忘れてくれないかな」
彼女の口から言われると、恥ずかしすぎて穴があったら入りたいと思った。彼女はそんな僕の頬をつねる。
「私はね、ただ好きだって言ってくれるだけで嬉しいな」
彼女の頬が夕焼けと同じ色に染まる。彼女の気持ちが分かったような気がする。これが、自惚れでなければいい。
「好きだ」
彼女は目を細めて、輝かしく笑った。そして彼女が背中に手を回して抱きついてきた。
「私も好き」
その声に、ようやく彼女の背へ手を回した。




