模擬戦(武術課と参謀課)
【模擬戦(武術課と参謀課)】
武術課は前線に、参謀課は後方について模擬戦をした。武術課の先輩が維持している敵の前線に、参謀課のリリシアが現れる。
お題:素人の戦争
あぁ、本当に嬉しくてたまらない。私はその喜びの感情、そのままに腰の剣を抜刀する。あれほどまでに憧れていた貴方と、こうして戦えることが何より嬉しい。
「リリシア、お前まで俺を倒しにに来たか」
「先輩、駄目じゃないですか。私だけ仲間はずれにしないでください」
前線を維持できているのはこの先輩の力が大きい。だから、排除しなくてはならない。短刀の身軽さを活かして、彼の懐に飛び込む。そして迷いなく心臓を一突きするはずだった。だが、ガキッという鈍い音に防がれたのだと知る。さすがの反応速度ですね。ますます、素敵です。
「リリシア、お前は専攻が違う。参謀課だろう」
「そうですよ? だから参謀として、先輩を討ちとりに来たんです」
「参謀課は、自陣を大人しく守ってろ。こんな前線まで来られちゃ、迷惑だ」
先輩の疎ましそうな目に私が映っている。思わず、クスクスと笑みがこぼれた。
「私は先輩みたいに、武術のプロじゃありません。むしろ、素人と言えるでしょう」
「素人は心臓を迷いなく一突きしようとしない」
やだ、先輩ったらそんなに顔を歪めないでください。でも、もう遅いですよ。
先輩は変わらず余裕で立っている私に、訝しむような表情を見せた。
「私は、戦略のプロです。ですから、私がここにいる時点でもう詰んでいます」
敵陣、赤の旗が白い旗に変えられる。彼はそれを見て、剣を鞘におさめた。
「お前の勝ちだ」
やっと、追いかけていた背中に追いついた。私は先輩の右腕になりたい。だから、これからも幾通りの戦術を考え、貴方に相応しくなってみせる。