セレス女神様になります?
私が目を開けると白い天井が見える。辺りを見渡しても誰もいないようだ。
体を動かそうとすると激しい痛みが奔る!
私は無理に体を動かすのを止めて考える、魔族はどうなったんだっけ?皆は無事なのか?
そんな事を考えていると誰かが入ってきた。
「セレス様!目を覚ましたのですね。」
安心したのか顔から笑みが洩れる。
「メリッサも無事みたいだね。」
「はい、ミアもナツも無事ですよ。」
その言葉を聞いて私は安心した。
「魔族はどうなったの?」
「魔族の大部分は死に現在は逃げた魔族を掃討しております。」
「そう。」
私は目を閉じて思う、多くの犠牲がでてしまったけど何とか皆を守れたのだと。
私達がしばらく話をしているとナツとミアが来た。
「お姉様~♪」
「いったっ!!!」
ミアに抱きつかれ私は全身に痛みが奔り顔を歪めた。
「ミア、セレス様はまだ安静にしてなくてはいけないんですよ!」
ミアは申し訳なさそうに俯く、耳と尻尾が垂れ下がりシュンとする姿は可愛い。
「メリッサ私は大丈夫だから。」
「ごめんなさいお姉様。」
「大丈夫だよミア、ちょっと痛かっただけだから。」
「それで体は本当に平気なのか?」
ナツ、ちょっとは空気を読んでほしいが心配かけてるのでしかたない。
「平気だと思う、動かそうとすると痛みが奔るけど安静にしてれば大丈夫。」
「そうか。」
「ナツ、魔族には勝ったんだよね?」
「まぁな、かなりの被害がでたが如何にか魔族を追い返す事ができたな。」
どれだけの被害がでたのか聞きたかったが怖くて聞けなかった。
「そういえば外が何か騒がしいね。」
「ああ、今避難してた街の人達が戻って復興作業をしてんだよ。
街の中は被害が少ないが城壁と城門は早急に何とかしないといけねえからな。」
「ねぇ、あれから何日経ってるの?」
「一週間だな。」
「一週間!」
私そんなに寝てたんだ、皆に心配掛けたな。
「ごめんね、心配掛けて。」
「なぁーに言ってんだよ。」「お姉様の心配するのは当然なの。」
「セレス様が無事ならそれで…。」
皆の優しい言葉に涙が溢れる、何とか止めようと思うんだけど次から次へと溢れ出る。
「セレス様…」
メリッサが優しく頭を撫でる、私は恥ずかしさで顔を反らしたかっだが涙でそれどころじゃなかった。
体が治ったら皆に何か恩を返そうと心に決めて眠りに就いた。
「眠ったようですね。」
「外に出るか。」
三人は起こさないように静かに病室を後にした。
「今後どうする?」
「どうするとは?」
「いやあれだよあれ。」
ナツが窓から下を見る。そこにはセレスを女神様と仰ぎ、どうか女神様に一言感謝の言葉をとかお礼をとか言いながら門番の兵士に詰め寄る民衆達だった。
セレスの活躍により魔族を撃退した事はその場に居た兵士はもちろん街道側に居た避難民も見ていたのでこうなるのは必然だった。
特に騎士たちには箝口令が敷かれたが全員の口を塞ぐ事などできる訳もなく噂は尾ヒレが付いて瞬く間にクレタの街に広まった。
幸いな事は聖魔術が使える事がばれていない事である。あくまで民衆は強力な魔術が使える程度にしか認識していない。
「セレスはこういうの嫌がりそうだよな。」
「そうですね、しかしセレス様なら当然の結果です。」
「お姉様は凄いニャ!」
ナツは英雄の末路はさして良い物ではないんじゃないかと思っていた。
セレスには英雄の素質があるのは認めるがあいつはそんな事望まないだろう。
それから数日騎士団は相変わらず魔族の掃討とセレスへの民衆の対応に追われていた。
「しかし疲れるな、こう毎日毎日。」
「ああ、でもしかたねえわな。」
「だな、実際セレス様は強くて綺麗だし。」
「あの時の魔術は凄かったよな、今でも震えがとまんねえよ。」
詰所の騎士達もセレスの話題で持ちきりだった。
「団長、民衆だけでなく貴族の方々からもセレス様への面会を求められていますが…」
「貴族達の考えなどセレス様を使って自らの利益を得ようとする連中だろう。」
「おそらくそうですね、しかし正式に手続きを踏んできている以上無視する訳にも…」
「そうだな、暫くは今だセレス様の体調がよくないと言ってをけ、その後はセレス様ご本人の意見を聞かねばな。」
「はっ!」
新しく副官になった男が団長室を出ていく。
「セレス様には部下の命を助けて貰った恩もある、なるべく御迷惑を掛けたくないがここまで事態が多きくなってしまっては…」
団長は椅子に深く座り直すと考え込んだ。
セレスが目を覚ましてから一週間が過ぎた。
その間に団長さんに今現在の私の立場の事、貴族達が私に面会を求めてる事などを聞かされた。
団長さんは暫くは体を治す事に専念するべきだと当面は騎士団が私への対応を引き受けてくれるとの事。
申し訳ないが団長さんの提案に甘える事にした。
私の体は順調に回復してきてはいるようだが一人で彼方此方出かける事は出来そうもない。
ナツがお見舞いに果物を毎回持って来てくれるので一緒に食べる。
「何だか自体がどんどん大きくなっていくね。」
「だな…でもセレスはセレスなんだから気にしてもしょうがねぇよ。」
「ありがとうナツ。」
私達は照れくさそうに微笑みあった……此処までは良かったのに…
「この変態お尻さわってんじゃねぇ!」
「ぐはっ!」
拳が顎にヒットしてベットから転げ落ちた。
それからさらに一週間ようやく日常生活には問題ないくらい回復したので久々に我が家に帰る事にした。
「ああ~凄い懐かしい感じ!」
「これで何時でもお姉様と一緒ですニャ。」
「そうだねミア!」
ミアの猫耳を優しく撫でる、可愛いなー。
「しばらく放置してましたのでまずは掃除からですね。」
三人で掃除を始めた、私はというとベットに寝かされ大人しくしているようにと・・・・暇です。
夕食はミアとメリッサが作ってくれた。なかなかに美味しい、このままだと追い抜かれるかもしれないなと密かに対抗心に火が付いていた。
その後ハンナさん夫婦やミナヅキさんなどがお見舞いに来てくれた。
怪我の方はまだ戦闘はできそうにない、走る事も微妙な有様でまだまだ完治には時間が掛かるとの事。
暇を持て余した私は第一回『やってみたいお料理選手権』を開催した!
「ルールは簡単今までに作った事のない創作料理を作る事!審判はナツにしてもらいます。」
「なんかすっげぇやな予感がする。」
「さて料理を作るのは私とミアとメリッサね。」
「勝ったら何かあるのかニャ?」
「そうね、勝ったらこの中の誰かに一つ命令できるって事で。」
「それはセレス様にも有効なんですよね!!!」
「う、うん。」
メリッサが凄いやる気だしてる。
「絶対に勝ってお姉様とあんな事やこんな事を・・・ニャニャニャ。」
「二人とも常識の範囲内でお願いね・・・・」
さていざ料理開始な訳だけど、何を作ろうか……
珍しい食材だと、飛龍の目玉にサラマンダーの肉、ケルベロスの睾〇かな。
どれも食べたいとは思えないけどまぁナツが食べるんだしいいか。
まず飛龍の目玉でスープを作る、具材は野菜とサラマンダーの肉を少しと。
しばらく煮込むと良い匂いがするそこに調味料を混ぜて味見は怖いのでナシと。
問題はケルベロスの睾〇、かなり強烈な臭いがするが食べられる物なんだし平気だろうたぶん。
これをサラマンダーの肉と一緒に細かく切って焼く、臭い消しにハーブやら薬草を混ぜてパンに挟んで完成と。
どうやら二人も出来たようなので順番にナツに食べさせる!
「まずはあたしからニャ!」
ミアの料理は魚料理、魚を豪快に鍋にぶち込み用意してあった食材を手当たり次第に入れ鼻がツーンとなるほど香辛料を入れた逸品、見た目はどこぞの魔女の鍋みたいだが。
「こ、これを食うのか?」
「当たり前ニャ、私が作ってやったんだから文句を言わず食べるのニャ!」
ナツが嫌そうに恐る恐る口にする。
食べた瞬間ナツの顔が青ざめてトイレに掛け込んだ。
「さて、次は私ですね」
お次はメリッサさんが料理を並べる。
メリッサさんの料理は飲み物?のようだ。
「これは、滋養強壮に良い食材を入れた至高の逸品です。」
なんか濁り色々浮いていてはっきりいってマズそうだな。
「くっせ!!!」
ナツが鼻を押さえる。
「良薬はクセが多いんです、さぁどうぞ。」
ナツはそのマズそうな物を飲み再びトイレに掛け出した。
「さぁ私で最後だね!」
私は料理を並べる、味見はしてないけど臭いも見た目も悪くはない。
「お!これは悪くなさそうだな。」
ナツもどうやら気にいったらしい。
「ささ、食べてみて。」
「おう、いただきます。」
ナツがスープを飲む。
「うまいなコレ!!!」
ガツガツ食べてナツは完食した。
「これは私の勝ちだね!」
「そのようですね。」
「残念ニャ。」
私が喜んで何を命令するか考えていると…
「これ何で作ったんだ?」
「これはね、スープは飛龍の目玉とサラマンダーの肉でパンの具はサラマンダーの肉とケルベロスの睾〇だよ。」
「!!!!」
ナツはトイレに掛け込むと出て来なくなった。
「勝負はどうなるんでしょう?」
「引き分け…かな?」
それから数日ナツは寝込み、魘される事になる。




