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銀髪の女神様は優柔不断  作者: 小雪
第三章 魔族の進行!
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魔族と戦争します!  3-3

進行する魔族との最後の戦いが幕を開けた。


此方は壊れた城門の前に布陣、重歩兵を前衛に中衛には弓兵と治癒術師を後衛には少なくなったが魔術師を配置した。

冒険者達は数も少なく騎士団との連携は難しいので臨機応変に個々の判断に任された。


近づいてくる魔族を眺める…

草原は黒く塗りつぶされて以前の面影がまるでない。魔族の咆哮に耳がジンジンする。


私は魔族の急激な増加の話を聞いた後、ミナツキさんと調べた聖魔術について考える。

古文書は損傷していたがミナツキさんの協力もあり半分ほど読めるようになった。

その中には過去の魔族との戦争で実際使われた聖魔術『流星(メテオ)』と『浄化(カタルシス)』の詠唱を覚える事ができた。


だが詠唱を覚えただけで実際に使った訳でじゃない、私には聖魔術の適性があるがだからといって古文書に載ってるような魔術を自分が使えるなんて思えない。

しかし皆を鼓舞して戦わせる以上泣き言なんて言ってられない!

私は傍にいた兵士に伝令をお願いした。


「これから強力な魔術を行います、下の騎士たちに身構えるように伝えてください。」

「は、はい!」


走っていく兵士の人を見ながら呼吸を整える。そして魔族の方を向き覚悟を決める!

私は魔術の詠唱を始めた。


「ーー汝を裁きし罪から逃れる術も無しーー愚かな者らに等しく罰をーー神の怒りに断罪されん『流星(メテオ)』」


空が暗雲に包まれ真っ赤に燃え上がった大きな岩が暗雲から顔を出す。

誰もが空を見上げてた、魔術を使った本人でさえ。


「何なんだありゃ・・・」

かろうじてナツは声を出すだが誰もその声に応えない、いや応えられないそんな異様な光景だった。

ゆっくりと落ちる大岩を見つめる、時間にして数十秒位だろうだがその場にいる者には果てしなく長く感じた。


「衝撃に備えろ!!!」

団長の言葉に皆が我に返った、停まっていた時間が動き出したかのように誰もが身構えた。

大岩が魔族の群れに衝突し、すべてを砕き粉砕しながら爆風を撒き散らし広範囲の敵を吹き飛ばし焼き払った、大岩が砕け直撃した場所には大きな穴が開いていた!


身構えた騎士たちにも衝撃が容赦なく襲いかかる。

「うあっ!」「皆踏ん張れ!」

最戦列にいる重歩兵の盾がビリビリと衝撃で震える。


ようやく収まった衝撃に安堵し顔を上げる、そこには大きな穴と吹き飛ばされた魔族と大地が広がっている。誰もがただ茫然とその光景を見る。

セレスも最初こそ自らの魔術を茫然と見ていたがその後の脱力感と倦怠感、そして激しい体の痛みにそれどころではなくなっていた。


「痛いっ!!!」

体の中に熱湯を入れられたかのような激痛に息も満足にできなくなった。

「くっ…うぁ…!!」

近くにいた兵士が駆け寄って話しかけるがセレスには届かない。

その時もうもうと吹き荒れる煙を掻きわけながら黒い巨体が飛んできていた。


茫然としていた兵士が再び我に帰る!

「魔族がまだ生きているぞ!」

その声に皆魔族に意識を切り替える、そこに居たのは全長4メートルはありそうな巨体に頭には羊のような角尻尾は蛇の形をした魔族『バフォメット』が騎士団に襲いかかる。


「敵はヤツ一体だけだ掛かれ!!!」

重騎士と弓兵が攻撃を掛ける、しかし斬りつけた剣は折れ矢は弾かれる。

バフォメットの持つ剣は人間から見れば余りにも大きく、鎧に身を包む重歩兵すらも一振りで何人もの命を奪い去る。

「正面に立つな回りこめ!」

団長も指示をだすが相手が悪すぎた、騎士団の攻撃はバフォメットに掠り傷を付ける事すらできない。

成す術もなく切り刻まれ踏みつぶし殴り潰される。

そこにナツ達が割って入る!


「調子にのるな羊野郎が!」「さっさと倒れるニャ!」「これ以上殺させません!」

三人の攻撃が剣を弾きバフォメットの体に斬りかかる。

しかしバフォメットの体に傷は付かない、攻撃の後を狙われナツが殴り飛ばされる。

「ぐはっ!!!」

鎧と咄嗟に体の前に出した剣で盾の替わりをしたため何とか死を回避できた。しかし内臓は損傷し腕の骨が折れた為これ以上は戦えない。

「ナツ!」「ナツさん!」

ミアとメリッサがナツの前に出てバフォメットの追撃を防ぐ。

二人を一瞥し鬱陶しそうに剣を振るう。

「くっ!」

団長が盾で剣を防ぐ、その隙に顔を狙いミアとメリッサが槍と鞭を振るう。

ミアの槍は掴まれ振り回される、振り回されて飛んできたミアがメリッサに当たりメリッサも一緒に吹き飛ばされた!

後方に居た魔術師が魔術で対抗するがバフォメットには効果がない、むしろ気を引いてしまい襲い掛かられる。間にいた弓兵が攻撃するがバォメットの体には何の意味もない、大剣の人薙ぎで弓兵は斬られ吹き飛んだ。


セレスは城壁からその光景を見る。

「くっ…あうっ…」

体が痛み軋む、無理やり動かそうとするが痛みばかりで体は動いてくれない。

ナツが吹き飛ばされる、ミアもメリッサも!

私は溢れる涙を止める事もせず体を動かそうともがく。

痛みで意識が遠のき、痛みで我に帰る、それでも諦める訳にはいかない諦めれば皆が死ぬ、自分が死ぬのはまだいい、だが仲間の死は耐えられない!

ふと影が掛かる、私が顔を上げるとそこには妖艶な女性が面白い物でも見つけたかのように微笑みながら私を見下ろしていた。


「誰…ですか?」

「今それって重要?」

女性は応えながら顔を近づける、私は痛みで動く事もできずただ女性の動きを目で追う。

「皆を助けたい?」

「たす…けたい!」

女性は何かを口に含むと私に口移しで飲ませた。

「ふぅっ!?」

流し込まれる液体を喉に流し込む…

「ぷはっ…はぁ…」

女性は唇を舌で舐めると私を立ち上がらせる。

「少しはマシになったんじゃない?」

聞かれた私は自分の体を確認する、体が動く相変わらず激痛がするが今はどうでもいい。

「私が下まで連れて行きましょう。」

女性の背中から翼が生えた!

「魔族…」

「ふふふっ。」

女性は楽しそうに私を抱いて城壁から飛び降りた。


「お姉様?」「セレス様?」

ミアとメリッサは吹き飛ばされた時に肋骨などが折れていて満足に動けない。ただ視線だけを飛んできたセレスと女に向ける。

騎士たちも同様に彼女たちに視線を向け降下地点から距離を取った。


「さぁ、あなたの思う通りに行動しなさい。」

女性はそんな事を言いながら私をバフォメットの近くに置き飛び去る。

私はバフォメットを見る、大きいとにかく大きい図体そしてバカみたいに大きい剣、あれで斬られたら即死かななんて考える。

「セレス!!!」

ナツの声に我に返り意識を集中する、痛みで集中が途切れそうになるが気合いだ!

私が魔術を使おうとしたのに気付きバフォメットがこっちに向かって走り出す。

「ヤツに邪魔をさせるな!!!」

団長の声に騎士たちが最後の力を振り絞る。

私は周りの声を遮断して魔術のみに全意識を集中して詠唱を始める。


「ーー闇を払いし聖なる光よーー闇を打ち消しーー聖なる光で闇夜を照らせ『浄化(カタルシス)』」


強烈な光がバフォメットを包み込む、あまりの眩しさに誰もが目を閉じる…

光が収まりバフォメットが居た場所を見るとそこには何もなかった。

私は意識を保つ事ができず倒れそのまま意識を失った。


セレスが気絶した後団長の指示により残った魔族の殲滅が行われた。

セレスの流星により殆どの主だった魔族が死にあっさりと魔族は敗退した。

その光景を見ながら妖艶な女性は微笑んでいた。



ナツ達の怪我は治癒術師によって治してもらい今はセレスの眠る病室で話をしていた。

「セレスは大丈夫なのか?」

「命に別状はないと思います、ただ激しく体の組織が損傷しているようで治るのは時間が掛かるかもしれません。」

「とりあえずは安心していいのかニャ?」

「はい。」

「よかった~。」

「皆生き残れるなんて奇跡です。」

三人はセレスの無事と互いの無事に安堵していた。


「しかしこれからが大変だな…」

団長が口を開く。

「そうですわね、これだけの人の前であんな強力な聖魔術を使ってしまったのですから。」

「ああ、我が国は元より他の三国も黙ってないだろうな。特に戦場に居たあの魔族の女はグリモア王国の者」

「なんだか色々ややこしいが今は休憩しようぜ。」

「そうだなニャ、思い詰めてもしょうがないの。」

四人はこれからの事を考えるが今はとにかく体を休める事にしようと話を終えた。


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