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魔性の勇者  作者: エディ
第二章
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 タクタク平原。

 魔領(魔族の領土内のこと)にあるこの平原は、特に有名なものもなく、田舎にあるただの平原にすぎない。近場に住む者しか知らないだろう名前の平原は、宰相クレスティア率いる八万の帝国軍と、二十五万に及ぶ魔族の大軍が激突したことで、ロード大陸中に名を知られることになる。

 個体の能力で人間を凌駕し、圧倒的な数量をそろえてきた魔族軍は、当初帝国軍に対して強烈な猛攻を仕掛け、帝国軍を飲み込まん勢いで攻撃してきた。数量で帝国軍を圧倒する魔族の陣形は、密集しての突撃だった。帝国軍は密集する敵に対して、投げ槍や弓、魔法による攻撃を繰り返した。密集しているため、魔族が受けた被害は大きかった。槍の一本が四、五体の魔物の体を貫通し、爆撃魔方の一発が十体以上の魔物を吹き飛ばす。帝国軍は敵が接近する前にその多くを撃破し、戦列を乱すことに成功した。

 また、ユウナス将軍率いる右翼騎兵部隊が敵の左翼部隊を突破、そのまま魔族軍の背後に移動することで、魔族軍を前後から挟撃するに至る。数量でも戦闘力でも勝る魔族軍だが、前後からの挟撃にあい混乱し、次々に数を減らしていった。

その後、帝国軍の両翼が魔族軍の両翼を包み込むように広がり、包囲していく。前後左右の全てを包囲された魔族たちは、円陣を組んで防御を固めた。だが、包囲され極度に密集した状態にある魔族たちは、互いの体が触れ合うほど密着していた。そのせいで味方が邪魔になって思うような動きがとれなくなった。そこに長距離からの攻撃が次々に命中し、甚大な被害を出していく。

 この状況の中、帝国軍の包囲を突破しようと果敢に突撃する魔族もいたが、そのすべては帝国軍の遠距離からの攻撃によって駆逐された。たとえ帝国軍に肉薄したところで、その防御は厚く、戦線を突破するには至らなかった。

「戦いのなんたるかを知らない蛮族と変わらないわね」

 魔族の戦い方を目にする宰相クレスティア――この戦争の帝国軍の総指揮官でもある――は、そのように評した。やがて帝国軍の重厚な包囲網を脱出することができなかった魔族軍は、長い抵抗の末に全滅した。

 この戦いで、帝国軍の戦死者数は五三〇七人。対する魔族は、二十五万のうち生き残ることができたのは僅か千にも満たなかった。

 帝国軍の圧倒的な勝利である。

「でも思っていたより、味方の被害が大きいわね」

 圧倒的と呼んでいい勝利を収めながらも、クレスティアには多少の不満だった。これまで帝国は、大陸中の国々と戦ってきたが、味方からこれだけの犠牲を出した戦いは、そう多くない。帝国は常に少数の犠牲の上で、敵を蹂躙してきたのだ。

「魔族は人間と比べると強力です。人と対する戦いと同じようにはいかないでしょう」

 クレスティアの不満に、ユウナス将軍が答える。

「…そうね。犠牲は少なくなかったけど、この戦いで魔族は再起不能の被害を受けたでしょう。あとは領土を平定していくだけ」

 戦争というものには、いくつかの決まり事がある。

 その一つが、勢力の存亡をかけるほどの戦力を投入した戦いで敗北すれば、その勢力は二度と立ち上がることができなくなるというものだ。ごく稀に、このケースの例外が存在するものの、それは本当にごくごく限られたもの。

 魔族の大軍をタクタク平原で完全に破ったことで、魔族に残された勢力は残り少ない。帝国軍と正面から戦えるだけの戦力は、まともに残されていないだろう。

 となれば、この後に続くのは戦いではなく、戦後処理にも等しい、魔族の領土を平定していく作業となる。

 広大な領土とはいえ、戦後処理にまでクレスティアが付き合う必要はもはやない。

「別方面で戦っていた第三軍団のガルヴァーン将軍も、魔族の将軍の一人、霊将ユナトスを討ち取ったとのことです。今後の魔領の平定は、ユウナス将軍にお任せします。私は帝都に戻って、始末すべきことがありますから」

「了解ました、閣下」

 敬礼するユウナス将軍に、しかしクレスティアは心配になる。

「ユウ、魔族は戦力のほとんどを失ったけど、戦いの全てが決着したわけじゃないわ。ちゃんと生き残ってね」

 大きな戦いが終わっても、その後で何が起きるかは分からない。流れ矢ひとつで、大軍を指揮する将軍が、あっけなく死んでしまうことだってあるのだ。

「閣下こそ、次の戦いがあります。お気をつけを」

「ええ、分かっているわ」

 逆に心配してきたユウナスに、クレスティアは嫣然とした笑みを浮かべた。クレスティアには、これから魔族に対するのとは別の戦いが始まる。いや、すでに始まっていた。

 グランディート大帝の死後、帝国の帝位には一歳の子供が即位したが、いまだに言葉すら話せぬ赤子に、国政などできるはずがない。実権を掌握したのは他ならぬクレスティアである。

 多くの大臣、将軍たちは彼女の支持に回っているが、それでも彼女の存在を認めない者たちは大勢いる。不満をくすぶらせるだけで、行動に出るほどの度胸がない者は問題ではない。だが、実際に行動を移す者もいた。

 そんな中、彼女に反対を唱える将軍たちは、謎の怪死を次々に遂げていた。

「不幸なことに、魔族の計略によって勇敢な将軍たちの命が奪われました」

 魔族との戦争中であることから、クレスティアは将軍たちの相次ぐ怪死を、公式の席でそのように発言している。

 だが、それを信じる者はかなり少ない。怪死事件の背後にいるのは、宰相クレスティアであるとの噂が、広がっているのだ。

 クレスティアは、タクタク平原の会戦の後、エスト兵長の部隊を含む少数の直営部隊とともに、半月の移動で帝都へと帰還した。

 ただし、前回魔族の襲撃を受けたグランベルトから遷都し、新たにブールジュを帝都としている。

 以前の帝都であるグランベルトは巨大な城を中心にした大陸有数の大都市だった。しかしアースガルツ帝国によって建設された都市ではなく、帝国が敗北させた国家の首都を、そのまま引き継いだだけにすぎない。

 もともとアースガルツ帝国は大陸の西端にある、名も知れぬ一国家に過ぎなかった。それを先の皇帝グランディートが、大陸全域に急激に拡大させた国家である。領土の拡大とともに、国家の前線が大陸の西部から中央、さらに東部へと移っていった。かつての帝都をそのまま、国家の首都にしていては地理的な問題が多すぎるため、帝国は必要に応じて敗者の都市を取り上げ、そこを帝都にしてきたのである。そのために、遷都の回数は尋常なものではない。

 そして先日の魔族との戦いで帝都グランベルトが戦火を受けたため、新たにブールジュと呼ばれる都市を帝都にしている。ブールジュもまた、帝国が敗北させた国家の副首都だった。グランベルトほどに広大な都市でなく、また防備にも適していない。しかし、対魔族戦の後方基地として適した位置にあった。

 魔族に対する防備ではなく、攻めるために定められたのが帝都ブールジュだ。

 アースガルツ帝国は、大陸全域を支配することを目標に掲げる帝国である。魔族が存在しようとも、それに恐れて逃げ出すのではなく、逆に攻め滅ぼすために行動している国家なのだ。

 ブールジュへ帰還したクレスティアは、タクタク平原の会戦終了時に、ガルヴァーン将軍率いる第三軍団へ帝都への帰還を命じていた。

 お飾りの皇帝を据えて、権力を掌中に手にしていたクレスティアだが、その一方で策謀によって意に沿わぬ将軍たちを殺している。公式上では将軍たちの死は、魔族による暗殺となっているが、巷に流布している噂は、ただの噂ではなく真実なのだ。

 こんなクレスティアのやり口に対して、反対の急先鋒となったのが、グランディート大帝に昔から仕える、老将ヴィリバヌス。長く大帝の信頼厚かった老将は、軍内部に絶大な影響力を有していた。この将軍が、クレスティアに対して反乱を起こしたのである。

地方の平定戦で帝都を留守にしていた老将は、その地に留まりながら帝国全土に檄を飛ばした。

「帝室に対して弓引く逆臣、姦計によって国を奪おうとする姦婦を取り除く」

 老将の発した檄の元、彼の軍には兵士たちが続々と集められていた。


 帝都ブールジュの私室に戻った私は、使用人にお茶を用意させて下がらせた。

 一人になった室内でカップを片手に、窓の外を眺める。

 グランベルトにあった以前の私室に比べれば、小ぶりな部屋だ。だが、窓からは満天の星空と、遠くに山脈の尾根が見えて景観が素晴らしい。眼下に広がる森は深く、夜に見るとどことなく不気味に感じる。とはいえ、昼間なら森の緑が目の保養にとてもいい。

 大帝の死と、その後の陰謀。さらに魔族と開戦したことで忙殺されていた。そのせいで、私がこの部屋で落ちつけたのは、今日が初めてだ。

「別荘見たいね」

 ――趣向としては上々。グランベルトの私室よりもこっちの方が好きだわ。

 先日の戦いの休息と、連日の激務から、僅かばかりの解放感が私の体と心を落ち着かせる。これからやるべきことはさらに多いが、今は少しだけそれらのことを忘れる。

 ゆっくりと窓際の椅子に腰かけて、カップから立ち上るお茶の香りを堪能する。

「…」

 部屋の中に誰かの気配がした。私は内心で構えつつも、表面に慌てる様子を浮かべることなく、ゆっくりと振り向いた。

 すると部屋の中に、血の色の髪と瞳をした女が立っていた。たいそう美しい姿をした女性で、白皙の頬に嫣然とした表情を浮かべる様はとても魅力的だ。

 ――もし私が男であれば、囲ってしまいたい。

 その魅力があれば、あらゆる男を虜にし、国を傾けてしまうことさえ可能だろう。

 つまり、この私、クレスティア・リディナと鏡移しの姿が立っていた。

「魔族か」

 私は疑問でなく、断定して言う。

「さすがは帝国宰相閣下ですわ。私を見ても全く動じないとは、たいしたものです」

 魔族が私に似せた顔に微笑を浮かべる。とても美しい顔だ。

「きれいな子ね」

「おほめにあずかり光栄」

「でも、中身は薄っぺら」

「…」

 私の侮辱に、魔族の顔がほんの一瞬ひきつった。

――ダメね、この程度のことを受け止められないようじゃ。

「事実を指摘されて怒ったかしら?」

「・・・閣下は恐ろしいお方ですわ」

 魔族はすぐさま気を取り直し、ひきつった顔に再び穏やかな、そう、見た目だけは実に穏やかな微笑を浮かべる。

「閣下は我々魔族と≪不可侵の密約≫を結んで置きながら、その約束を反故にされたのです。我々の領土に攻め込み、あまつさえ我が同胞を殺戮された。非情で、本当に恐ろしいお方です」

「確かに魔族とは≪相互不可侵の密約≫を五年前に結んだ」

 魔族との不可侵の密約。それは、グランディート大帝さえも知らない、私と魔族の間で結ばれた契約だ。当時、魔族の侵攻によって存亡に立たされていた国がいくつも存在した。それらの国々は同盟することで、魔族に抵抗した。その同盟に、アースガルツ帝国の参加も要請されたのだが、魔族と密約を交わしていた私が反対したことで、アースガルツ帝国は同盟に参加しなかったのだ。

 それが私と魔族の間に結んだ密約。互いの領土を侵犯することなく、戦争を回避することを目的にした契約。

 もっとも、私だけでなくグランディート大帝も、同盟への参加を望んでいなかった。当時のアースガルツ帝国には敵が多く、勢力を拡大中だった魔族へ、戦力を割きたくなかったのだ。

 結果として、アースガルツ帝国が参加しなかったことで対魔族同盟の国々は、魔族に滅ぼされていき壊滅。魔族は大陸東部に勢力を急速に拡張した。一方、アースガルツ帝国も目前の敵を確実に仕留めていくことで、勢力の安定を得ていった。

「でも、≪時期≫が来ればこの密約が破綻することは分かっていたでしょう。私たちはこの大陸の征服を狙う不倶戴天の敵同士。慣れ合ったところで、最後は殺し合うしかない」

 私は穏やかな微笑を浮かべたまま、目の前の魔族を見据える。一方の魔族は、苦い表情になっていた。

「手厳しいお言葉です。ですが、その≪時期≫とは大帝陛下の死でしょうか?」

「陛下の死は関係ない。単にこの大陸の領土で、わが帝国が征服していないのは、魔族の領土だけ。あとは取るに足りない小国だけですもの。大帝陛下の生死に関係なく、魔領への侵攻は行われていた。陛下の死は、魔領への侵攻の口実を私にくれただけよ」

「…」

 穏やかに話し続ける私に、魔族がしばし絶句してしまった。

「…あなたは、自らの主の死を利用したの?」

「陛下が亡くなられたことで、征服の口実のみならず、私の権力の掌握にまで貢献してくれた。あなたたち魔族の愚行は、私の利益になっただけよ」

 私はそれまで浮かべていた穏やかな笑みを捨てて、魔族に鋭い視線を向けた。その視線に、魔族が明らかにひるんだ。

 ――私の姿を真似ているだけの、ただの人形ね。

 あまりにもできの悪い人形だ。見た目ではなく、中身があまりにも私に似ていない。

 …もっとも、私がここまでとは、さしもの魔族も思っていなかったのでしょう。この魔族は、私をまるで理解できていない。

「魔族にはもうろくな戦力が残されていない。この戦争の勝敗はすでに明らか」

 私は椅子から立ち上がり、自らの姿を真似た魔族の頬に、ツッと指を這わせる。

「魔王の情報を売りなさい。そうすれば、私の愛おしい戦友の犠牲を減らすことができる。それに私の側につけば、あなたが魔王の側で戦い続けるより、いい目を見られるはずよ」

 ギョッと目を見開き、魔族は私の目を見てきた。冷や汗を額に浮かべ、私を驚愕の顔で見る。

「あなた、私の姿をしているけど、本当は男でしょう。…いいこと、女にはね、毒があるの。男とは比べ物にならない強い毒が」

 魔族は一歩、二歩と私の前から後ずさる。そのあとを逃がさないように、私は両手を広げ、逃げようとする魔族の両の頬をつかんだ。

 魔族の頬を掴んだ手から、冷たい感触が伝わってくる。

「愛しい子。私の下にいらっしゃい。決して悪いようにはしないわ。あなたの混乱した心を落ちつかせてあげる」

 魔族はとうとう後ろに逃げることをやめ、私の目を見つめる。私の瞳に支配されてしまったかのように、体を小刻みに震えさせる。

「ナ、ナンダ。お前は…本当に人間か?」

 ――ザッ

 次の瞬間、私の目の前にいた魔族の胴を一本の剣が貫いていた。私の姿を真似ていた魔族が口と目を大きく見開き、全身を痙攣させる。

 突然の事態に、さすがに私も驚いて目を見開いた。

 ――なぜ、刃が?

 気づくと、魔族の背後に巨大な影があった。

 全長二メートルを超える巨体。重厚な鎧をまとった武将。魔族の体を貫いた刃は、その男が手にする刃だった。

「…ガルヴァーン」

 私はその男の名を呟いた。帝国軍第三軍団長ガルヴァーン将軍。殺戮と破壊をほしいままにすることから、≪魔王≫とあだ名される将軍。

 いつ現れたのか、まったく分からなかった。

 私は魔族を捕まえていた両手を下ろし、見開いたままの目で、ガルヴァーンを見る。

「閣下、魔族を籠絡することなど不可能です。手駒にしたつもりでも、所詮裏切られるだけ」

「…そうね」

 ガルヴァーンの有無を言わせぬ声に、私は頷いた。改めて私の姿を真似ている魔族を見る。いまだに全身を痙攣させ、私の姿をしたまま、無様にもがいている。とても見ていられる姿でない。

「さようなら」

 私は魔族に語りかけ、その体に触れた。私の手が触れた瞬間、魔族はその命が尽き果てたのか、全身が黒い煤となり、空気の中へと消え去った。

 魔族が消える姿を前にしても、ガルヴァーンは表情一つ動かさない。

 私はガルヴァーンに向き直って尋ねた。微笑を浮かべることをせず、冷ややかな冷たさだけを顔に浮かべながら。

「いつ帝都に戻ってきたの、予想よりかなり早いけど?」

「たった今。本隊に先発して少数の手勢のみで帰還しました」

 この男は私でも腹の底が読めない。顔の筋肉一つ動かすこともなく、同じ表情のまま私の前に突っ立っている。

 ――とてつもなく危険だが、利用価値も高い。

 私は冷たくしていた表情を解いて、顔に微笑を浮かべ直す。それでも、目にだけは笑いを取り戻すことができない。

「ヴィリバヌス将軍が反旗を翻したことはご存知ですね?」

「無論。彼の将軍は帝国の宿将。その武名は全軍にとどろいております」

「あなたなら、勝てる?」

「勝つのではなく、殺します」

「ならば行きなさい。帝国と私のために、彼とその軍勢を全て葬りなさい」

 私が冷やかに告げると、ガルヴァーンは初めて顔に表情を浮かべた。獰猛で猛々しい、獣の笑いを。

「戦場に、屍の山を築きましょう」


 私は老将ヴィリバヌスが反乱を起すことを知っていた。グランディート大帝にのみ忠誠を尽くし、生涯をささげてきた老将である。まっすぐな性格で、生粋の武人。忠誠をつくす相手のために、持てる全ての力を尽くす男。

 そんな老将が、私の専横を見過ごすことなどできないのだ。

 だから私は、ヴィリバヌスを放置していた。彼の周囲に、私に反対するだけの行動力がある人間たち――私の敵――が集まるのを待っていた。

 そしてヴィリバヌスの周囲に敵が集まった今、これを潰せば私の敵はいなくなる。

 ガルヴァーン将軍に、老将ヴィリバヌス討伐命令を出してから二週間後。老将ヴィリバヌスの首級とされる、赤く丸い血肉の塊が私の元に届いた。それはもはや人間の顔としての用をなさず、生前の形を完全にとどめていなかった。

 私はその血肉の塊から、しばらく視線を外すことができなかった。

 この老将ヴィリバヌスにつき従った三万に及ぶ兵士たちは徹底的に殺しつくされ、さらにその軍が籠城した都市の住人までもが、殺しつくされた。

 昨日までの味方でさえ容赦なく殺しつくす帝国軍第三軍。まさに、≪魔族≫というあだ名そのままの戦いだった。

 この戦いによって、帝国内部の敵が一掃され、私は自らの立場をさらに強固なものにした。もはや、私に抵抗できる力をもつものは、帝国の内部には誰もいない。

 皇帝は飾りに過ぎず、大臣たちは私の派閥で塗り固められている。軍の将軍たちもすでに私の意のまま。一般の民衆にとっては、これは単なる帝国上層部の権力闘争に過ぎなかった。もともと彼らは、帝国に支配された国の人間であるため、帝国へも、皇帝へも、忠誠心など持っていない。自分たちに火の粉が降りかかりさえしなければ、皇帝が変わろうと、なんら関係ないことなのだ。

「魔族との戦いが終われば、皇帝を退位させましょう」

 ――そして、私がその座へ。

 血と陰謀に彩られながら、私は野望の道を進んでいく。


あとがき出張所



 今回のあとがき出張所は、いろいろな問題を山のように含んでいるため、本編と切り離して、『後宮』というタイトルで公開しています。

 事前に警告しておきますが、超々々問題作です。


URL:

http://ncode.syosetu.com/n8436be/

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