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誘拐

作者: ししろー

この小説はサスペンスです。興味の無い方もいらしゃるでしょうが、暇があったら読んでみてください。

六道達也リクドウタツヤ。そういう名前の男がいた。彼は18才の遊びたい盛り。しかし、彼には一つのコンプレックスがあった・・・。


「達也!帰りにカラオケいかねぇ?」

友人の四谷健ヨツヤタケシは言った。

「あぁ〜。悪い、今日は無理だ。じゃあな!」

達也は健にそう言うとクラス一の俊足で帰っていった。

「相変わらず付き合いわりいなぁ。」

彼はいつもそう呟くが達也に聞こえることはなかった。


「遅い!」六道家に低くよく通る声が響いた。

「しょうがないだろ。学校からここまで十分はかかるんだから。」

達也は鬼の形相で道場の上座に座る父親を見た。六道充リクドウミツル正慎館館長。小さな道場だが独自の武術を扱っていて、火曜と木曜は小学生に習字を教えている。

「言訳無用!そこに直れ!」

達也は正座したまま背筋を真っすぐ伸ばすと、父親に言った。

「今日はなんでしょうか?」

充は低い声を一層低くして言う。「うむ、近頃この辺りで子供の誘拐が流行っておってな。お前行って捕まえてこい。」

まただ、と思った。

充は達也が十五の時から、何か近くで事件があると『修業』と称して犯人を捕まえさせる。そういうことばかりしていると、恨みを買いさらにそれは『修業』として達也に降り掛かるのだ。おかげで小学生には、ヒーローの兄ちゃんなどと呼ばれ、おば様方にも好感度は高い。にしても、今回は誘拐か。一人はきついなぁ。囮は危ないしな。どうやって手を出そうか。と、考えていると、充は

「頼んだぞ。」

とだけ言って道場をでた。


「とりあえず情報だな。」

家を出て小学生の通学路を通りながら一軒一軒情報を集める。

狙われているのは小学生2・3年生の男の子、中には息子をさらわれたというおばさんから貴重な情報も得られた。

誘拐された子供の一人は慎といった。

特異なケースだ。金の要求はないし、さらわれたのは男の子ばかり四人。

しかも四人は似ている感じを持った子だった。それらの事をメモして、家に帰る。達也は自室のベッドに寝転がり、情報を整理した。似たような雰囲気をもつ子供。犯人の趣向か?金の要求の無いことから愉快犯か(ゾッとする)?犯行現場は、全くわからなかった。さて、どうしたことか。道場で少し汗を流そうか。変な想像をして気持ちが悪かった。


道場では小学生たちが習字を習っている。

「そうか、今日は火曜か・・・。」

一人が達也に気付き、大きな声で

「ヒーローの兄ちゃんだ!」

と叫ぶと、子供たちは一斉に駆け寄ってきた。

「兄ちゃんユーカイ犯つかまえてね!」

「慎くんがいなくなったの!」

「俺兄ちゃんを手伝いたい!」

など、いつにもましてヒーロー扱いだ。そのうち充に追い出されてしまったが、一人の子が付いてきた。

「おい、先生に怒られるぞ。道場に戻りな?」

達也がそう言うと、仁志ヒトシ、その子は泣きそうな顔で、

「僕、見たんだ慎君が僕に招待状を見せてくれたんだ。『誰にも言っちゃダメだぜお前だから見せるんだぞ』って言ってた。その日の夕方慎君が居なくなったんだ・・・。」

達也は驚いた、そうか、犯行現場は、子供たちを誘拐したところではなく、子供たちを誘い出したところだったのか。

「慎君見つけてね。絶対だよ。」仁志は涙を浮かべて言って、道場へ帰っていった。招待状か・・・。確かに好奇心の強い子供たちならついつい行ってしまうだろう。とにかく招待状ってやつをもらった小学生を探してみるか。


「はぁ・・・。」

高校の授業を終え、外に出る。小学校の授業はもちろん終わっている。路上には小学生など一人もいない。集団下校で残らず帰宅したようだった。仕方なく家路に着く。

「学校さぼらないといけないのか・・・。」犯人もこうも厳重に警戒されれば手出しできないだろう。しかしそうなると尻尾をつかむのはかなり困難だ。そんな事を考えているうちに家に着いてしまった。


「さて、どうしよう。」

ベッドに横たわり情報を整理する。

・・・?達也は何か違和感を感じた。

『同じ雰囲気をもつ子供』この情報。おかしくないか?何でそんなことに気付いたのだろう。活発・好奇心旺盛。そんな事に普通目を止めるだろうか?そんな子供たくさんいるだろう。もっと接点はないのか?達也は小学校に行って誘拐された子供の共通点を探した。・・・一人の人物が浮き彫りになってきた。『中田茂人ナカタシゲヒトちょうど一年前、交通事故で死んだ子供だ・・・。性格は社交的、活発で多くの友人がいた。一人息子で、友達を家に誘いよく遊んでいた。』その子の元担任であった先生から得た情報はそれだけではなかった。誘拐された子供の内二人は中田茂人と仲が良かった。そして調べあげた結果。もう一人の子は彼の近所に住んでいた・・・。慎という子との接点は見つからなかったがそれだけでも達也には犯人のメドはついていた。


「中田さん!いらしゃいますか〜?」

達也はインターホンをならし昨日訪れた中田史子ナカタフミコの家に再度来ていた。

「はぁ〜い。なんでしょう。あら達也くん、また情報収集?」史子は玄関をでて達也に挨拶した。

「えぇ。ちょっと気になる事があって・・・。話、いいですか?」

達也は笑顔で言って付け加えた。

「あがらしてもらっても・・・?」

史子の顔が一瞬ひきつったのを達也は見逃さなかった。


達也は中田家の応接間に案内された。お茶、茶菓子が出され、史子と向かい合って座った。

「で、何のお話ですか?」

史子は動揺を全く見せず、尋ねた。達也はゆっくりとした口調で言った。「いえ、さらわれた子供たちは、みんな、活発で同じ雰囲気をもつ子供だったんですよね。昨日中田さん言ってましたよね?」

「ええ。いいましたわ。」

史子はかわらぬ調子で答える。

「何でそんな事を知ってらっしゃったんですか?」

達也の言葉が、一瞬の沈黙を呼んだ。

「あの子たちのお母さまはみんな知り合いですので・・・。」

さらに達也は問い詰める。

「なぜですか?」

「私の亡くなった息子と仲が良かったものですから。」

史子は暗い顔で言う。達也は続ける。

「あなたの息子さん、茂人くんは・・・。」

少し息を吸う。

「誰にも代われません。子供たちを返してください。」

その瞬間史子は立ち上がり達也に襲い掛かる。手にはナイフを持っていた。

「だれが返すものか!あの子は私の子だ!!あなた死んでくれる?」

達也は咄嗟にナイフを持つ手を掴み、ねじろうとした。

「なっ!?」

明らかに女性とは思えぬ力でギリギリとナイフを振り落とそうとする。

「あの子は茂人!貴様なんかに返すものか!」

嫌な予感が達也の背を走る。

「あの子?他の三人はどうしたんだ!?」

史子は狂気の表情でつぶやく。

「他の子は不合格。今は真っ暗い土のなかよ!」

さらなる力が達也を襲う。

「なんてことを・・・。」

「茂人は一人で十分!!」

刹那。達也は体をひねり後ろの壁に史子を叩きつけ、ナイフを落とし、足で部屋の隅に滑らした。腹部に一撃。史子は力なく畳に倒れた。


サイレンが聞こえる。パトカーから、竹田一成タケダカズナリ警部補が降りてきた。

「また君か。楽でいいんだが・・・。面子がまるつぶれだよ。」

達也は史子の方を見た。ブツブツと何か言っている。髪は乱れ目は死んでいる。

「竹田さん。俺、こんな気分の悪い事件、初めてです。」

竹田は苦笑して、

「これが君のお父さんの言う、『修業』なんだろう。二階に少年が閉じ込められていたよ。慎という子だ。他の子は自供を元に捜査する。今日は帰りなさい。」

竹田はパトカーに戻り、中田家をあとにした。達也はぼんやり空を見上げ、家路についた。

最後まで読んでくださった方。ありがとうございました(ΠΔΠ)。気が向いたら、六道達也を主人公に何か書くかもしれません。これが私の一作目です。読みづらい点など大目に見てもらえたら幸いです(σ∀σ)。ではまた!

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