ずるい、ズルいと言う妹のおかげで、家族が一つになりました。
ずるい、ズルイで幸せになる話もいいかと。
「お姉様はずるいわ。ズルい。ズルイ。」
また始まってしまいました。この発作が始まるとなかなか収まらないのです。貴族なら五歳児でもこんな癇癪など起こさないのに。わが妹は十五歳よ。
何度、「ずるい」の発作で私のお気に入りを取られたことか。
「お姉様はずるいわ。ずるい。ズルイ。」
「何がずるいの。」
最初はドレス。次が髪飾りなどの宝飾品。この頃になると。お父様も「またか」と相手にしなくなり、お義母様に対処を丸投げしだしました。お義母様が言い聞かせても納得しません。
この妹はお母様の連れ子です。ただ、お義母様に言わせると、
「この子はれっきとした公爵様のお子様です。」
ハッキリ言いきられると、お父様は覚えがあるようで反論もできず。お母様は既に鬼籍の為、なし崩し的に公爵家に居ついてしまったのです。だから、妹・お義母様と言っても籍には入っていません。
表向きは、二人とも私の侍女扱い。仕事なんてしていないけどね。でも、このお義母様、センスがすっごく良いのよ。野暮ったいドレスもリボンなどで、流行りのドレスに変身よ。籍が入ってないことに不満もないみたいで、
「私に公爵夫人は務まりません。娘も貴族は無理です。」
己をご存じの人でした。でも、妹は……。
「このままだと、商家でも無理そうですよ。」
お義母様は、お父様に事情を理解してもらい、生活費を月々いただけたら良かったらしいのです。それなのに、ずるずると今に至ってしまったようです。その間に、妹のずるいの発作が始まったのです。不思議と学院に通うことは、ズルイとは言わないんです。
「私は、お勉強なんて無理。ズルイとは思わないわ。むしろ可哀そうなお姉様。」
私には、妹のことが理解できません。
ある日、お義母様に相談されました。妹をどうにかしたいそうです。私は、常々思っていたことを話します。
「いいアイデアだわ。」
「頑張りましょう。」
いつものように、発作が始まりました。
「貴方は、いつも私がずるいと言うけど、あなたの方がずるいわ。」
「お姉様のほうがずるいわ、お部屋だって、広いし景色もいいわ。それにみんなに大事にされているわ。」
「わかったわ。取り替えてあげる。その代わり、お義母様を貰うわよ。」
「え、どういうこと。」
「だって、あなたには実のお母様がいるでしょ。私にはいないのよ。あなただけ、ずるいわ。そうでしょ。」
「お姉様だっているでしょ。」
「いたけど、今はいないわ。あなただけずるいわ。私にお義母様を頂戴。」
「わかったわ。あげるわよ。その代わり、お姉様の物はみんなもらうわ。」
その日から、妹は私の代わりになりました。流石に学院に通うことはできないので、次期公爵家当主としての教育や外国語の勉強、さらにマナーやダンスです。勉強嫌いな妹は、机に座っているのも苦痛のようです。
私はお義母様と買い物や観劇に忙しく楽しんでいました。妹は、ついてくる気満々でしたが、
「私のお義母様よ。邪魔しないで。」
言われた言葉を言い返しました。
実の母とは、幼い頃の思い出しかありません。
私は、疑似親子を満喫していました。観劇の合間に、髪飾りを直していただいたり、感激して涙しているとそっとハンカチを差し出された時は、これがお母様なのかと思いました。
家に帰っても、感激は続いていました。そんな私を、お義母様が優しく肩を抱いてくださいました。それを見てしまった妹は、真っ青になり、部屋に閉じこまってしまいました。
三日も持ちませんでした。
「ごめんなさい。お母様を返して。もう、お姉様の物は欲しいと言いません。」
父も、一連のお義母様の態度にほだされたのか、第二夫人としました。公爵です。正妻もいませんし、夫人の一人や二人容認されています。ただ、相続人は、私一人ですけどね。
あれ以来、妹はずるいと言わなくなりましたが、本当に欲しいもをジーと見るようになりました。そんなときは貸してあげます。必ず、返してくれるようになりましたからね。
「ありがとう。お姉様。」
ちゃんとお礼も言えるようになりました。
お義母様も奥様と呼ばれ、妹もお嬢様と使用人にかしずかれ、二人してはにかんでいます。
時々、母子三人でお茶をいただいたり、そこにお父様が参加したりしています。前より、家族で過ごすことが多くなりました。
ずるい、ズルイも使いようによっては良いことになるのですね。
読んでいただいて、ありがとうございます。




