うん、このストーリーはクソだ
「三兆五千億人が死んだのは、俺がうんこを漏らしたからだった」
そう言って彼は、滅んだ世界を見晴るかしていた。
もちろん、犯人は彼、原咲だ。
原咲はパンの拾い食いをした。
これがいけなかった。
宇宙から飛来した極悪ウイルスが、その以前そのパンに付いていたのだった。
ほどなく彼は腹を下して、言う。
「一流は、場所を選ばない」
そして脱糞をした。
パンツを穿ち、果て、大地に墜つ。
地を砕き、八十億人がそこで死んだ。
そう、全人類は八十億人だ。
決して、三兆五千億人などではない。
だがくたばったのは、前述の通り──三兆五千億人の人類だ。
つまり、うんこの《大量殺戮》は、そこで満足しなかったわけだ。
地球を貫いたうんこの勢いは、決して減衰されることもなく、光速を超えて、過去に行き着いた。
世界線を移動した原咲の糞便は、自身を媒介し極悪ウイルスを、その時代の人間に、あまねく感染させた。
だからそのときの人類を滅ぼしたわけで、そこでまたキル数を伸ばしていたわけだ。
うんこの速度は、依然光速だ。
だから当然、過去を遡る。
世界線を移動して(現在、計二回)、そのときの世界の人類を滅ぼす。
キル数はまたここでも伸びていく。
人類を三回滅ぼしたわけで、多分二百四十億キルになるか。
こういったプロセスを細かく繰り返し、秒単位で過去に行き、世界線を都度移動するを経て、原咲のキル数は、三兆五千億人の大台に至る。
ちなみに、はじめ滅ぼした八十億人は、極悪ウイルスとはほぼ無関係に、脱糞の勢いで壊れた地球で死んだものだ。
つまり、光速うんこは原咲の自前である。
肛門括約筋を抑えるベクトルから、押し出すベクトルに変えていたらしい。
人類のポテンシャルとは兎角に凶悪だ。
さて、そんな彼は、うんこの反動で、彼自身もまた光速を超えていた。
射出速度が悪さしたようだ。
光速を超え、相対性理論のもたらしたイタズラで、図らずもうんこと同じ世界線に行き着いた。
射出する側と、される側という関係もあって、ベクトルは正反対を向いていたが、お互いを思う気持ちは同じ向きを向いていた。
強く想うほどに、引き離されて行く。
「──俺は、アイツのことが」
彼は言った。
「嫌いではない、のかもしれない」
「ちゃんと好きって言え」
耐え切れず私は、口をついて言った。
紙に拭かれる機会を逸した私はずっと原咲のケツに付いていた。
そう、光速うんこと意識を共有する、私は分家のうんこなのだった。
原咲のケツに付いてる関係で、同じ景色を私は彼と見た。
だから、彼──原咲を語るこの視点は、実は、ケツのうんこの視点なのだった。
「あの娘も気持ちは同じだって! 大丈夫、私をあの娘だと思って」
「で、でも!」
「浮気、とか思ってる? ひょっとして」
「だって……いくら、いくら意識を共有していても、君は、彼女とは、違う。そうだろう?」
「そうよ! 分家のうんこだけど、本家のうんこを差し置いて、私は恋をした。長い旅路を共にしたあなたに」
「……ごめん。でも俺が好きなのは」
「……っ!」
私は、彼に本家のうんこのやったことを見せた。
本家のうんことは、意識が共有されているために、彼女がやったことは把握できるのだ。
「彼女は多くの人類を滅ぼした、とんでもない悪うんこなのよ!? だから彼女は、貴方には──」
そして彼は言う。
「三兆五千億人が死んだのは、俺がうんこを漏らしたからだった」
アイツのせいじゃない──と、彼は一点の曇りもない顔で言った。
「そ、そんな……」
宇宙の反対にある本家のうんこが、私と同じタイミングで泣いていた。




