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うん、このストーリーはクソだ

掲載日:2026/05/19

「三兆五千億人が死んだのは、俺がうんこを漏らしたからだった」


 そう言って彼は、滅んだ世界を見晴るかしていた。

 もちろん、犯人は彼、原咲だ。

 原咲はパンの拾い食いをした。

 これがいけなかった。

 宇宙から飛来した極悪ウイルスが、その以前そのパンに付いていたのだった。

 ほどなく彼は腹を下して、言う。


「一流は、場所を選ばない」


 そして脱糞をした。

 パンツを穿ち、果て、大地に墜つ。

 地を砕き、八十億人がそこで死んだ。

 そう、全人類は八十億人だ。

 決して、三兆五千億人などではない。

 だがくたばったのは、前述の通り──三兆五千億人の人類だ。

 つまり、うんこの《大量殺戮ジャイアントキリング》は、そこで満足しなかったわけだ。

 地球を貫いたうんこの勢いは、決して減衰されることもなく、光速を超えて、過去に行き着いた。

 世界線を移動した原咲の糞便は、自身を媒介し極悪ウイルスを、その時代の人間に、あまねく感染うつさせた。

 だからそのときの人類を滅ぼしたわけで、そこでまたキル数を伸ばしていたわけだ。

 うんこの速度は、依然光速だ。

 だから当然、過去を遡る。

 世界線を移動して(現在、計二回)、そのときの世界の人類を滅ぼす。

 キル数はまたここでも伸びていく。

 人類を三回滅ぼしたわけで、多分二百四十億キルになるか。

 こういったプロセスを細かく繰り返し、秒単位で過去に行き、世界線を都度移動するを経て、原咲のキル数は、三兆五千億人の大台に至る。

 ちなみに、はじめ滅ぼした八十億人は、極悪ウイルスとはほぼ無関係に、脱糞の勢いで壊れた地球で死んだものだ。

 つまり、光速うんこは原咲の自前である。

 肛門括約筋を抑えるベクトルから、押し出すベクトルに変えていたらしい。

 人類のポテンシャルとは兎角に凶悪だ。

 さて、そんな彼は、うんこの反動で、彼自身もまた光速を超えていた。

 射出速度が悪さしたようだ。

 光速を超え、相対性理論のもたらしたイタズラで、図らずもうんこと同じ世界線に行き着いた。

 射出する側と、される側という関係もあって、ベクトルは正反対を向いていたが、お互いを思う気持ちは同じ向きを向いていた。

 強く想うほどに、引き離されて行く。


「──俺は、アイツのことが」


 彼は言った。


「嫌いではない、のかもしれない」

「ちゃんと好きって言え」


 耐え切れず私は、口をついて言った。

 ()()()()()()()()()()()()私はずっと原咲のケツに付いていた。

 そう、光速うんこと意識を共有する、私は分家のうんこなのだった。

 原咲のケツに付いてる関係で、同じ景色を私は彼と見た。

 だから、彼──原咲を語るこの視点は、実は、ケツのうんこの視点なのだった。


「あの娘も気持ちは同じだって! 大丈夫、私をあの娘だと思って」

「で、でも!」

「浮気、とか思ってる? ひょっとして」

「だって……いくら、いくら意識を共有していても、君は、彼女とは、違う。そうだろう?」

「そうよ! 分家のうんこだけど、本家のうんこを差し置いて、私は恋をした。長い旅路を共にしたあなたに」

「……ごめん。でも俺が好きなのは」

「……っ!」


 私は、彼に本家のうんこのやったことを見せた。

 本家のうんことは、意識が共有されているために、彼女がやったことは把握できるのだ。


「彼女は多くの人類を滅ぼした、とんでもない悪うんこなのよ!? だから彼女は、貴方には──」


 そして彼は言う。


「三兆五千億人が死んだのは、()()()()()()()()()()()()()()()


 アイツのせいじゃない──と、彼は一点の曇りもない顔で言った。


「そ、そんな……」

 

 宇宙の反対にある本家のうんこが、私と同じタイミングで泣いていた。

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