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それでも化物にならなかった  作者: ひろろん
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10話

 

 隊長は全員を集めると、手にしていた名簿を高く掲げた。


「食料が減っている。つまり――生き残りがいる」


 低い声で言い切り、名簿の一頁を指で叩く。


「俺の勘では、この女が怪しい。埋葬されていた男と同じ部屋にいた人物だ。偶然にしては出来すぎている」


 一同に緊張が走る。


「これより部隊を二つに分ける。回収部隊と、始末部隊だ。回収部隊は死体と試料を持ち帰れ。始末部隊は生き残りを追い、確実に処理する」


 隊長は一拍置き、視線を鋭くする。


「始末部隊が二日戻らなければ、全滅と判断する。決して追うな。これは命令だ」


 その時、副隊長の(ひいらぎ)が一歩前に出た。


「隊長は回収に回ってください。あなたは必要な人物です。この任務、私が引き受けます」


 真剣な眼差しに、隊長は短く息を吐いた。


「……止めても無駄だな。了解だ、柊副隊長」


 そして即座に命令を飛ばす。


柏木(かしわぎ)名倉(なぐら)。お前たちは柊と共に行け」


 三人は同時に頷いた。


「直ちに出発します」


 そう言い残し、三人は洞窟を後にする。


 残された隊長は振り返り、声を張った。


「死体を魔法陣の部屋へ運べ。土と石の試料も忘れるな。作業完了後、結界札を貼って撤退する」


 部隊は即座に動き出した。


 ――――――――――


 森へ出た柊副隊長たちは、足音を殺しながら進んでいた。


「止まってください」


 名倉が小声で言う。


「微かですが……燃えた匂いがします。この森では不自然です」


 柊は即座に判断した。


「柏木、確認を」


「了解。――紙憑依」


 柏木が紙で作られた鳥を放つと、それは命を得たかのように空へ舞い上がる。同時に柏木はその場に崩れ落ちた。


 しばらくして紙の鳥が戻り、地面に落ちる。それと同時に柏木が目を開いた。


「焚き火の跡がある。かなり時間は経ってるが……誰かがいたのは確実だ」


「案内して」


 焚き火跡の周辺を調べていた名倉が、再び声を上げる。


「血の匂い……あの大木の根元です」


 掘られた穴と血痕を確認し、柊は静かに告げた。


「やはり生存者がいる。ここからは殲滅行動に移る」


 ――――――――――


 その頃、紅とアノは森の奥を進んでいた。


「ねぇアノ……人里まで、あとどれくらい?」


「分かりません……でも、橋が見えればもうすぐです」


 やがて、崖に掛けられた木の橋が視界に入る。


「……あれね」


 安堵した瞬間、アノが紅を突き飛ばした。


 次の瞬間、背後の木が砕け散る。


「伏せて!」


 現れた三人の影。


「気付かれたか……」


「狐だった奴が人の姿で生きてるとはね」


「回収対象はそっちの小さい女。赤髪は処分だ」


 柊副隊長が前に出る。


「抵抗すれば半殺しだ。選びなさい」


 紅は一歩前に出た。


「……どのみち、私は殺されるのね」


「当然だ」


 その瞬間、アノが動いた。


 砂を蹴り上げ、叫ぶ。


「紅!橋を渡って!」


 だが雷の槍がアノの脚を貫く。


「――っ!」


 転倒したアノを紅は抱き上げる。


「約束したでしょう!一緒に生きるって!」


 次の雷が紅の身体を貫いた。


 紅は崩れ落ち、意識を失う。


「……終わりね」


 柏木が刀を抜き、振り下ろそうとしたのであった。

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